不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと

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9.さらば、まったり生活②

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「あ~ん、アンナなんだかお尻がムズムズして我慢ならないわ。う~、この違和感をどうにかしたい…」

「姫様、それはズバリ寄生虫ですね。
私ではどうする事も出来ませんので然るべき薬師に助けを求めてくださいませ」

「なっ!ち、違うわよ。ムズムズするって言うのは比喩で今の気持ちを表現しただけだから!
実際にはお尻はムズムズしていませんし、お尻から細い糸みたいな虫はでていませんからね!」

あらぬ誤解を必死に否定するロナ姫だが、アンナは『本当ですか…』と目を細め疑いの眼差しを向けてくる。
ならこれでどうだっ!と、ロナ姫がパンツを降ろしお尻を見せて無実を証明しようとする。

慌ててロナ姫の手を押さえお尻ペロリンを阻止する優秀侍女アンナ。

「姫様、寄生虫説は放棄しますから。パンツを穿いてください」

「へへへ、分かってくれて良かったわ。でもアンナ遅いわよ。なかなか信じてくれないから少し乙女のお尻が見えてしまったじゃないよ」

「お尻を見せている時点で乙女ではありません。
猿です、それもただの猿ではなくお馬鹿な山猿です!」

アンナの手厳しい言葉もなんのその、ロナ姫は無言のまま『猿反省ポーズ』で許しを乞う…てみる。

「…………」
(反省だけなら猿でも出来る)

冷たいアンナの視線に気づくロナ姫。

 あっ、これは不味い。
 本当に激おこだ…。
 
猿の反省ポーズを捨て、すぐさま本気の90度腰曲げ謝罪に変更する。

「ご、ごめんなさい」

「まあ、よろしいでしょう」

カッーン、勝者侍女アンナに決定!



アホなコントが終わり、気を取り直して話を進める。

「それで姫様はなんでムズムズしているんですか?」

「なんかこの三食昼寝付き生活が性に合わないみたいなの。以前の様にバリバリ働きたいなーと思っているんだけど無理かな…」

普通後宮の側妃の仕事は皇帝を癒すことなので、侍女に交じって働くなど認められていない、きっとアンナにも叱られるのでは思い恐る恐る相談する。

だがアンナの反応は予想外だった。

「出来ますよ」

「へっ…。で、出来るの?本当っ?」

「ええ大丈夫です、お任せください。
どんな手を使っても姫様にピッタリの仕事を手配してみせましょう」

「流石アンナだわ。キャッホー、まったり生活とおさらば出来る~♪」


そしてロナ姫は期待に胸を膨らませ待つこと二日目の朝。
朝食を食べ終えた後、アンナが『仕事の手配が整いました』とロナ姫に告げてきた。

そしてアンナは手配した仕事の説明と後宮からこっそり抜け出る通路を淡々と教え始める。

「えっ…?アンナどんな手を使ったのかしら…?」
(これ不味くない?隠し通路って普段使いするものではないし、そもそもなぜにアンナがそのことを知っている?)

「ふっ、姫様知る勇気はおありですか?」

にやりと笑うアンナ。

その顔を見てロナ姫は母国でこっそり裏で皆が呼んでいたアンナのあだ名を思い出した。

その名も『裏番長』。

なぜそんなあだ名がと思い聞いて回ったが、みんな顔を青ざめ『聞かないでください』と言って教えてくれなかったのだ。

それを思い出したロナ姫はブンブンと首を横に振り『勇気なし、まったくなし!』と示している。

 あー、絶対に聞いちゃいけないやつだ、これは。
 『触らぬアンナに祟りなし』
 うん、これでいこう!

お馬鹿なロナ姫であるが危険察知能力は山猿並みに高かった…。

…見ざる、言わざる、聞かざる。…そしてロナ姫は山猿。


その日の昼から王宮の裏手にある王族御用達の家畜小屋の世話係としてロナ姫はちゃきちゃきと働き始めたのである。
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