不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと

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16.恩返し失敗…

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講義が終わったロナ姫は帰ろうとする側妃達に声を掛けてみる。

「皆様、手配の相談などよろしいのですか?」

五人は顔を見合わせ気まずそうにしている。
それを講義の内容が悪かったと受け取ったロナ姫はしゅんとしながら謝罪の言葉を口にする

「分かりずらかったですか?
それは大変申し訳ありませんでした。もっと分かり易く冊子を作り直し再度恩返しをいたしますね」

「そんなことはないですわロナ様。とても独創的な講義で楽しかったですわ」一妃マイ。

「ええ本当に。なんていうか身体が熱くなる情熱的なお話でした」二妃パタナ。

「「凄く面白かったですよ、ロナ先生」」三妃サミ、四妃サラ。

「とても勉強になりましたし、後宮に入って一番の思い出になりましたわ」五妃ホラミ。

みんな次々に優しい言葉を掛けてくれる。
じーんと感動するロナ姫。

すると一妃マイが言いづらそうに話し出す。

「ロナ様、以前お話した心太後宮という言葉を覚えていますか?あの比喩は今も有効なのですよ」

「……有効でございますか?」
こてんと首を傾げその意味を考えるがロナ姫。

「後宮のことを考え素敵な講義をしてくれたロナ様には本当に申し訳ないのですが、私を含めた一妃から五妃まで来週には全員後宮を出る予定ですの。
私は宰相の息子に下賜されます」

「私は平民に戻りまた踊り子とやっていくつもりですの」

「「私達は隣の領地の幼馴染の兄弟に嫁ぎますわ」」

「私は隣国への留学が認められたので、勉学に励むつもりです」

口々に自分の今後の身の振り方を告げてくる側妃達。

 な、なんと…。
 恩返し失敗ですわ。
 講師が鶴でなく山猿だったのがいけなかったんでしょうか……。

よろよろとしながら他称山猿のロナ姫はその場に崩れ落ちる。
そして『鶴、鶴に…なりたい』と呟く。
そんなロナ姫に寄り添い優しく背中を撫でるアンナがきっぱりと言い切る。
『姫様、鶴は無理です。分不相応です。
山猿で我慢してください』

侍女の呼吸弐ノ型『念押し』


…そもそも鶴や猿が問題なのではない。
側妃達が後宮から去るから恩返しが成立しないのではないだろうか…。


落ち込むロナ姫を見て、側妃達は慌てて慰める。

「で、でもこの素晴らしい講義内容は、宰相の息子との結婚に役立たせてもらいますから。
えーっと、『まあ大きわ!』どうですか?
ちゃんと言えてましたか?」

一妃マイのセリフを聞き、沈んでいたロナ姫の表情が『ぱぁ~』と明るくなる。

 あっ、私の努力が役に立ってる!
 マイ様がセリフを喜んで使ってくれています♪
 嬉しいですわ~。
 
天使のような満面の笑みを浮かべるロナ姫を見たらもうみんな一妃に続くしかなかった。
本音を言えばみんな言いたくなかった、だが可愛い六妃を悲しませたまま捨て置けなかった。

(((いつ言うの、今でしょう!)))

…きっと今ではない。

次々に袋綴じを片手に持った側妃達の口から過激なセリフが出てくる、出てくる。

そしてにこにこしてそれを聞き、『みんなお上手ですわ♪』と言いながらロナ姫とついでにアンナが拍手喝采している。



だが彼女らは知らない。

その漏れ聞こえてくる過激な発言を扉の前で聞き、入るに入れなくなっている皇帝ハヤンの存在を。

 こ、こいつら、みんな痴女なのか。
 俺の後宮って……。
 …大丈夫か………?


…六妃が来るまでは大丈夫だったんだよ。

初めて自分の後宮に足を踏み入れた皇帝ハヤンは、また違う意味で後宮の闇を見てしまった。

…闇?全くもってそんな深いものではないだろう。



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