50 / 95
第49話 ぶちまけられる本音
しおりを挟む
馬車が到着したのは、アボット家の近所だった。
「驚いたな……まさか、こんなすぐ近くに魔女の店があったなんて」
その店はアボット家の邸宅に隣接する市営公園内で営業している小さな喫茶店だった。
「公園があるのは知っていたけど、まさか喫茶店があるなんて思いませんでしたよ。でも何故エドはここに魔女の店があることを知らなかったのですか? 名簿を持っていましたよね?」
2人で喫茶店の中を窓から覗き見しながら、コソコソと話す。
「確かに名簿は持っているけど、そんなに目を通していたわけじゃないんだ。ただ、大学の近くに魔女の店があるって噂に聞いていたから調べてみたんだよ」
「なるほど……そういうわけでしたか……あ! 見て下さい! 店の奥のカウンターに女性がいますよ?」
「あの頭にターバンを巻いた女性のことだよな? 確かに魔女と言われれば、魔女っぽくも見える……」
「あれ? 何処かへ行くみたいですね」
見ていると魔女らしき女性がカウンターを出ていく姿が見えた。
「本当だ……休憩にでも入るつもりだろうか……見たところ客の姿もないし、閑散としているしな……」
「でも、こんな店ではお客も寄りつきにくいんじゃないですか? だって店内も薄暗くて雰囲気悪いですよ?」
「確かにステラの言うとおりだ。俺もそう思っていたんだ」
その時――
「悪かったわね、雰囲気の悪い店で」
私達の真後ろで声が聞こえた。
「「え!?」」
その声に驚いて2人一緒に振り向くと、腕組みしながら仁王立ちに立つ魔女?
の姿。
「ええ!? い、いつの間に!?」
「この俺が……まさか後ろを取られるとは!」
すると……。
「あんたたち……営業妨害するつもりかしら?」
そして魔女は不敵に笑った。
****
今、私とエドはカウンター席に座って紅茶を飲んでいた。
正面にはバンダナを巻き、胸元が大きく開いた紫色のドレスを着た女性が立っている。
年齢は……30代前後だろうか?
「なかなか美味しい紅茶ですね。店内は薄暗くて、手入れも行き届いていませんし。気が滅入ってきそうな雰囲気ですけど……まぁ、あまり来ることもないので妥協しましょう」
「うん、ステラの言う通りだ。店は汚いが紅茶の香りがいい。だが、少々値が高いんじゃないか? お金は持っているが、たかがこの程度のお茶に支払う金額じゃないと思うな。だから客が来ないんじゃないか?」
私とエドの話を女性は苦虫を噛み潰したかのような顔つきで聞いている。
「いくら何でも、そこまで文句を言ってくるとは思わなかったわよ」
「でも言われても仕方ないじゃありませんか。だいたい、何です? その胸元の大きく空いたドレスは? 喫茶店で働くイメージじゃないですよ。まるで場末の酒場のイメージですよ」
「ああ、俺もそう思う。ここは公園内に設置された喫茶店だ。子供連れの家族だって立ち寄ることがあるだろう。そんな不健全なドレスを着ていると、ますます客足が遠のくぞ」
私もそうだが、エドも随分言いたいことを言っている……おかしい、何かが変だ。
普段の私なら絶対にこんなこと口にしないのに……心の声を勝手に口にしてしまっている。
「それで、2人でこそ泥のように私の店の前で何を嗅ぎ回っていたのかしら?」
「こそ泥とは失礼だな。これでも身分は隠しているが、俺は王子だ」
「へ~……あんた、王子様だったんだ」
魔女の目が怪しく? 光る。
うわぁあ~……身分を隠しておきながら、王子って言っちゃったよ……。
そこですかさず私はエドを注意することにした。
「ちょっとエド! 何身分を明かしちゃってるんですか! 馬鹿なんですか?」
キャ~!!
王子のエドに向かって……馬鹿呼ばわりしてしまった!!
「馬鹿? 俺が馬鹿だって? 言っておくがステラより頭が良い自覚はあるぞ? むしろ馬鹿という言葉はステラに似合っていると思うな」
「ハァ? 何ですか! それ! 私はこの世界の人間じゃないから、勉強がわからないんですよ!」
マズイ! つ、ついに……自分の秘密を暴露してしまった!
どうして? 勝手に思ったことを言葉にしてしまうのだろう?
ま、まさか……紅茶の中に……何か淹れられた……? 思わず冷や汗が流れてくる。
「へ~。この世界の人間じゃないですって?」
すると……魔女が興味深げに身を乗り出してきた――
「驚いたな……まさか、こんなすぐ近くに魔女の店があったなんて」
その店はアボット家の邸宅に隣接する市営公園内で営業している小さな喫茶店だった。
「公園があるのは知っていたけど、まさか喫茶店があるなんて思いませんでしたよ。でも何故エドはここに魔女の店があることを知らなかったのですか? 名簿を持っていましたよね?」
2人で喫茶店の中を窓から覗き見しながら、コソコソと話す。
「確かに名簿は持っているけど、そんなに目を通していたわけじゃないんだ。ただ、大学の近くに魔女の店があるって噂に聞いていたから調べてみたんだよ」
「なるほど……そういうわけでしたか……あ! 見て下さい! 店の奥のカウンターに女性がいますよ?」
「あの頭にターバンを巻いた女性のことだよな? 確かに魔女と言われれば、魔女っぽくも見える……」
「あれ? 何処かへ行くみたいですね」
見ていると魔女らしき女性がカウンターを出ていく姿が見えた。
「本当だ……休憩にでも入るつもりだろうか……見たところ客の姿もないし、閑散としているしな……」
「でも、こんな店ではお客も寄りつきにくいんじゃないですか? だって店内も薄暗くて雰囲気悪いですよ?」
「確かにステラの言うとおりだ。俺もそう思っていたんだ」
その時――
「悪かったわね、雰囲気の悪い店で」
私達の真後ろで声が聞こえた。
「「え!?」」
その声に驚いて2人一緒に振り向くと、腕組みしながら仁王立ちに立つ魔女?
の姿。
「ええ!? い、いつの間に!?」
「この俺が……まさか後ろを取られるとは!」
すると……。
「あんたたち……営業妨害するつもりかしら?」
そして魔女は不敵に笑った。
****
今、私とエドはカウンター席に座って紅茶を飲んでいた。
正面にはバンダナを巻き、胸元が大きく開いた紫色のドレスを着た女性が立っている。
年齢は……30代前後だろうか?
「なかなか美味しい紅茶ですね。店内は薄暗くて、手入れも行き届いていませんし。気が滅入ってきそうな雰囲気ですけど……まぁ、あまり来ることもないので妥協しましょう」
「うん、ステラの言う通りだ。店は汚いが紅茶の香りがいい。だが、少々値が高いんじゃないか? お金は持っているが、たかがこの程度のお茶に支払う金額じゃないと思うな。だから客が来ないんじゃないか?」
私とエドの話を女性は苦虫を噛み潰したかのような顔つきで聞いている。
「いくら何でも、そこまで文句を言ってくるとは思わなかったわよ」
「でも言われても仕方ないじゃありませんか。だいたい、何です? その胸元の大きく空いたドレスは? 喫茶店で働くイメージじゃないですよ。まるで場末の酒場のイメージですよ」
「ああ、俺もそう思う。ここは公園内に設置された喫茶店だ。子供連れの家族だって立ち寄ることがあるだろう。そんな不健全なドレスを着ていると、ますます客足が遠のくぞ」
私もそうだが、エドも随分言いたいことを言っている……おかしい、何かが変だ。
普段の私なら絶対にこんなこと口にしないのに……心の声を勝手に口にしてしまっている。
「それで、2人でこそ泥のように私の店の前で何を嗅ぎ回っていたのかしら?」
「こそ泥とは失礼だな。これでも身分は隠しているが、俺は王子だ」
「へ~……あんた、王子様だったんだ」
魔女の目が怪しく? 光る。
うわぁあ~……身分を隠しておきながら、王子って言っちゃったよ……。
そこですかさず私はエドを注意することにした。
「ちょっとエド! 何身分を明かしちゃってるんですか! 馬鹿なんですか?」
キャ~!!
王子のエドに向かって……馬鹿呼ばわりしてしまった!!
「馬鹿? 俺が馬鹿だって? 言っておくがステラより頭が良い自覚はあるぞ? むしろ馬鹿という言葉はステラに似合っていると思うな」
「ハァ? 何ですか! それ! 私はこの世界の人間じゃないから、勉強がわからないんですよ!」
マズイ! つ、ついに……自分の秘密を暴露してしまった!
どうして? 勝手に思ったことを言葉にしてしまうのだろう?
ま、まさか……紅茶の中に……何か淹れられた……? 思わず冷や汗が流れてくる。
「へ~。この世界の人間じゃないですって?」
すると……魔女が興味深げに身を乗り出してきた――
252
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる