母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
4 / 199

第1章 1 悲しみに濡れる夜

しおりを挟む
 時刻は午後8時―

シャンデリアの明かりを落とし、テーブルとベッドサイドに置かれたアルコーランプのみが灯された部屋は・・薄暗かった。

あれほど酷く、叩きつけるように降っていた雨と風はいつの間にかやみ・・部屋の中は静寂で満ちている。

カチコチカチコチ・・・・

時計が規則的に時を刻む音に、ベッドの上で身じろぐ気配がした。

「う・・・。」

ベッドの上でスカーレットの呻き声が聞こえる。

「スカーレットお嬢様っ?!」

ブリジットは慌ててスカーレットのベッドへ駆けつけると、そこにはぼんやりと薄目を開けたスカーレットが横たわっていた。

「お目覚めですかっ?!スカーレット様っ!」

ブリジットはベッドのそばに膝まづくと、スカーレットの左手をしっかり握りしめた。

「あ・・ブリジット・・わ、私は・・・。」

するとブリジットとスカーレットの部屋に待機していたヴィクトールがスカーレットのベッド脇迄やってくると沈痛な面持ちで口を開いた。

「スカーレット様は・・・旦那様の急逝の電報をご覧になって・・意識を・・・。」

最後の方は言葉にならなかった。

「あ・・・。」

スカーレットの口から小さく言葉が漏れた。

「そ・・・そう・・・だった・・わ・・。わ、私は・・・お父様がお亡くなりになった知らせを読んで・・・気を・・・。」

すると途端にスカーレットの目にみるみる涙が浮かび・・頬を伝って涙が次から次へと溢れて枕を濡らす。

「スカーレット様・・・!」

思わずブリジットが声を掛けると、スカーレットは何故か背を向けてしまった。

「スカーレット様・・?」

声を震わせるブリジットの言葉にスカーレットは背中を向けたまま答えた。

「ご・・ごめんなさ・・・い・・ブリジット・・ヴィクトール・・・少し・・ほんの少しでいいから・・1人にしておいてもらえる・・?」

「「!」」

スカーレットの言葉にブリジットとヴィクトールは一瞬息を飲み・・静かに返事をした。

「は、はい・・・。」

「分かりました・・。」

ブリジットとヴィクトールは口語に言うと・・・そっと部屋を出た。

パタン・・・

静かにドアが閉まると、スカーレットはそのままの向きで両手で顔を抑えると、嗚咽し始めた。

「う・・うう・・・お、お父様・・本当に・・・本当にお亡くなりになってしまったの・・?あ、あんな電報1枚で・・お父様の死が知らされるなんて・・ウッウッ・・。」

スカーレットは声を殺して泣いているつもりだったが、その鳴き声はドアを閉じ、廊下に待機していたブリジットとヴィクトールの耳にまで届いていた。

「スカーレット様・・・・。」

ブリジットは眉をひそめて閉ざされたドアをじっと見つめていた。ヴィクトールも少しの間、口を閉ざしていたが・・やがて言った。

「ブリジット様・・旦那様が単身赴任先の『エデル』の国で知り合った男爵家の母娘が一緒に帰国される話はご存じですよね?」

「ええ・・確か、お名前は・・・?」

「母親の名前がアグネス・マゼンダ。そして娘の名がエーリカ・マゼンダです。男爵家と名乗っていたそうですが・・・。調べたところ・・マゼンダという名の爵位を持つ貴族は存在しなかったのです・・。」

「な・・何ですってっ?!」

「私は・・旦那様がいきなり何の前触れもなく・・・スカーレット様に相談もされずに再婚を決めたお話を不審に思っておりました。それに・・あの手紙・・どう見ても旦那様の筆跡に見えなかったので・・・独自に2人の母娘の事を調べておりました。その矢先に・・旦那様の急逝の知らせが・・。そこで私は旦那様が滞在していたベルンヘルの警察署に試しに電話を入れてみたのです。もしかして、何か事故か事件に巻き込まれてお亡くなりになってしまったのではないかと・・。」

「そ、それで・・どうなったのです?」

ブリジットは声を震わせて尋ねた―。

しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】うちの大公妃は肥満専攻です!

ariya
恋愛
ルドヴィカは一度目の人生を虚しく終える時に神に願った。  神様、私を憐れむならどうか次の生は大事な方を守れるだけの知識と力を与えてください。 そして彼女は二度目の人生を現代日本で過ごす。 内科医として充実な人生を送っていたが、不慮の事故によりあえなく命を落とす。 そして目覚めた時は一度目の生の起点となった婚約破棄の場であった。 ------------------------------------ ※突然イメージ画像が挿絵で出ることがあります。 ※ストーリー内に出しているのはなんちゃって医学です。軽く調べて、脚色を加えているので現実と異なります。調べたい方、気になる方は該当学会HPなどで調べることをおすすめします。 ※※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

私が生きていたことは秘密にしてください

月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。 見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。 「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」

処理中です...