母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
32 / 199

第1章 29 推薦状

しおりを挟む
 スカーレットと弁護士はテーブルの向かい合わせに座った。ブリジットは他のメイド達を下がらせるとスカーレットの隣に座り、弁護士に尋ねた。

「それで・・どのような内容のお話なのですか?まさか・・またしてもスカーレットお嬢様を追い詰めるようなお話ではないでしょうね?」

すると弁護士は大げさな程の素振りで言う。

「いいえ・・・とんでもありません。これは・・私なりにスカーレット様のお力になれる用に精一杯考え抜いた提案であります。」

「私の力になれる提案・・?」

スカーレットは首を傾げる。

「はい、さようでございます。実は・・・ここから汽車で3時間程に西に向かうと『ミュゼ』と呼ばれる大都市があります。この都市には多くの貴族が住んでおり、以前私が顧問弁護士をしておりました名門侯爵貴族・・・チェスター一族の方々が住んでおります。こちらにはまだ幼いお子様がおりまして・・住み込みの家庭教師を探しておられます。」

「住み込みの・・家庭教師ですか?」

ブリジットは弁護士を見た。

「はい。何しろ名門貴族ですので家庭教師の身元はしっかりされている方を希望されております。ですので・・・私は是非ともスカーレット様を推薦させて頂きたいと思っております。・・・いかがでしょうか?」

「家庭教師・・・。」

スカーレットは呟いた。

「はい、一般教養として語学、歴史、算術・・そしてピアノが出来る家庭教師を探しておられるのですが・・スカーレット様はピアノは引く事が出来ますか?」

するとブリジットが答えた。

「当然ではありませんか。スカーレットお嬢様は3歳からずっとピアノを習ってこられたお方ですよ?」

「ええ・・教養程度のピアノでしたら・・・教える事は出来ますが・・・。」


「作用でございますか?では早速本日中にチェスター家に電報を打って連絡させて頂きます。もう・・あまりお時間はありませんからね・・・。」

弁護士の言葉に再びスカーレットの顔が曇る。

「そうですよ!あ・・あまりに横暴ですっ!まだ・・・リヒャルト様は亡くなられたかどうかも分らないと言うのに・・葬儀など・・。」

そこまで言いかけて、ブリジットはスカーレットが項垂れていることに気付き、慌てて言った。

「も、申し訳ございません、スカーレット様。つい・・・。」

「いいのよ・・ブリジット。実際お父様が行方不明なのは・・・本当の事だから・・。」

「スカーレット様・・・。」

ブリジットはそっとスカーレットの肩に触れると弁護士に言った。

「それにしても葬儀の後、喪が明ける前に・・早々に出て行けと言うのはあまりに酷すぎます。何とかならないのですか?!」

「申し訳ございません・・・。私もそれはあまりに横暴だと申し上げたのですが・・・文句があるなら別の弁護士を雇うと言われました。」

「それでは・・・何を訴えても、もう無理・・・と言う事なのですね・・?」

スカーレットは声を震わせた。

「はい・・・。なので、せめて私の出来る事は・・スカーレット様の推薦状、およびこちらで働かれていた方々の推薦状を作成する事が限界です・・。」

弁護士は沈痛な面持ちで言う。

「・・・それでも推薦状を書いて頂けるのは・・とても感謝しております。ありがとうございます・・。」

スカーレットは弁護士に深々と頭を下げた。

「いえ、私の方こそ力が足りず・・申し訳ございません。それでは早速書類の作成に取り掛かりますので失礼致します。」

弁護士は立ち上がり、頭を下げると部屋を後にした。


パタン・・・

ドアが閉じられ、部屋にスカーレットとブリジットのみが取り残された。

「スカーレットお嬢様・・無事にチェスター家の家庭教師になれるとよいですね。」

「ええ・・・神様にお祈りするわ。ブリジット・・・後わずかしか一緒にいられないけれど・・それまで私の傍にいてね・・?」

「もちろんです。スカーレット様・・。」

そして2人は手を取り合った―。



しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】うちの大公妃は肥満専攻です!

ariya
恋愛
ルドヴィカは一度目の人生を虚しく終える時に神に願った。  神様、私を憐れむならどうか次の生は大事な方を守れるだけの知識と力を与えてください。 そして彼女は二度目の人生を現代日本で過ごす。 内科医として充実な人生を送っていたが、不慮の事故によりあえなく命を落とす。 そして目覚めた時は一度目の生の起点となった婚約破棄の場であった。 ------------------------------------ ※突然イメージ画像が挿絵で出ることがあります。 ※ストーリー内に出しているのはなんちゃって医学です。軽く調べて、脚色を加えているので現実と異なります。調べたい方、気になる方は該当学会HPなどで調べることをおすすめします。 ※※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

私が生きていたことは秘密にしてください

月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。 見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。 「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」

処理中です...