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第4章 21 皇女の結末
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「皇女…」
アリオスは床に座り込んでいるヴァイオレットを見下ろした。
「ア、アリオス様…。今の言葉…う、嘘ですよね?」
「…」
しかし、アリオスは顔を背けてヴァイオレットの質問に答えない。
「アリオス様…っ!」
するとそこへアイザックが顔を出して来た。
「ああ…ヴァイオレット。やはり来たんだね。そうか…今の話聞いてしまったのか」
「お、お兄様…」
アイザックはヴァイオレットに手を差し伸べた。
「大丈夫かい?立てるかな?」
「あ、ありがとうございます。お兄様‥‥」
アイザックに手を引かれ、ヴァイオレットは立ち上がった。そしてアリオスを見た。
「アリオス様…」
「…」
しかし、アリオスは視線すら合わせない。するとアイザックは言った。
「やれやれ…アリオスは本当に冷たい男だね。女性が…しかも仮にもこの国の皇女が床に座り込んでいるのに、手を貸して立たせてあげることすらしてあげないのだから」
そして大袈裟に肩をすくめる。
「…」
アリオスは黙っていたが、ため息をつくとアイザックを見た。
「取りあえず…もう二度とスカーレットには近付かないと約束して下さい。もしまた今後同じような事があれば…皇帝陛下に直に話をさせて頂きます」
そして背を向けて歩き出そうとしたとき…。
「お待ち下さい!アリオス様!」
ヴァイオレットが涙目でアリオスを引き留めた。
「皇女…貴女も同様です。今後一切…私とスカーレットに近付かないで頂きたい」
それは本当に冷たい声だった。
「あ、アリオス様…?」
ヴァイオレットの目に涙がたまる。
「失礼します」
アリオスは一度だけ振り向き、頭を下げると再び背を向けて歩き出す。
「待って!アリオス様っ!」
ヴァイオレットは必死で叫ぶが、アリオスは振り返ることなく立ち去ってしまった。
「あ…アリオス様‥‥」
「可愛そうに…ヴァイオレット」
アリオスが立ち去ると、それまで黙っていたアイザックが泣いているヴァイオレットの頭を撫でた。
「お、お兄様…」
ヴァイオレットは涙に濡れた瞳で兄を見る。
「よし、少し話でもしようか?おいで」
アイザックは自分の執務室へヴァイオレットの手を引いて招き入れ、ソファに座らせると言った。
「どうだい?分ったかな?アリオスの気持ちが」
「う…うう…ア、アリオス様…」
ヴァイオレットは、ハンカチを握りしめながら涙を流している。
「ヴァイオレット。アリオスは頑固な男だ。もうこれ以上お前がアリオスを思っても…無駄だよ。こんな言い方をしては傷つけてしまうかもしれないが、もう彼の事は忘れた方がいい」
「で、でも…」
「大丈夫、心配する事は無い。アリオス以外にもお前を大切にしてくれる男性はいくらでもいるさ」
「お兄様…」
するとアイザックは何を思ったか、立ち上がり書斎机に向かった。そして引き出しを開けると大きな封筒を持ってきた。
「ヴァイオレット、アリオスとの仲は駄目だったけど…お前に素晴らしい縁談の話が来ているんだ」
アイザックはニコニコしながらソファに座ると、封筒から書類を取り出した。
「え?」
ヴァイオレットは耳を疑った。
「いや~…それにしてもお前を妻に迎えたいと言う男性が現れて良かったよ」
「ま、待って下さい!お兄様!」
しかし、アイザックはヴァイオレットの言葉に耳を傾けずに書類を読み上げた。
「彼の名前はエルメス・オベリオ。この国の辺境に住む伯爵で、国境警備を担っている方なんだ。妻を早くに亡くして長い事独り身だったのだが、もう一度妻を娶りたいと縁談の要望が出ていたのだよ。そこでヴァイオレットの話をしたら非常に喜んでくれたんだ。そんなに若い皇女様を妻に出来るのですかと言ってね」
「え…?お、お兄様…?」
ヴァイオレットには兄が何を言っているのか理解出来なかった。
「彼はね、ヴァイオレットの男性遍歴を耳にしても少しも動ずることが無かったんだ。むしろ、そんなに性に奔放なら自分の事も満足させて貰えるでしょうねと喜んでくれた」
「そ、そんな…」
ヴァイオレットの身体は震えていた。
「大変だったんだよ?お前の嫁ぎ先を探すのは…。この国の皇女は自分の身分も考えず、誰彼構わず男をベッドに引き込む女性だと諸外国にまで噂が広がって…私と父がどれだけお前の縁談を探すのに苦労してきたと思う?」
「そ、それは…!」
「頼みの綱のアリオスはやはり無理だった…。ヴァイオレット、もうお前は彼に嫁ぐしかないのだよ?彼は敵国の侵入を防ぐ為の大事な砦を守ってくれている重要人物なのだ。」
アイザックは泣きながら震えているヴァイオレットをじっと見つめると言った。
「大丈夫、彼はもうすでに60歳になるがまだまだ元気な武人だ。ヴァイオレット、嫁いだら沢山子供を産んでくれよ?その子供たちが今度はこの国の砦となってくれるのだから」
そして笑みを浮かべる。
ヴァイオレットは悟った。
この結婚からはもう逃れられないのだと―。
アリオスは床に座り込んでいるヴァイオレットを見下ろした。
「ア、アリオス様…。今の言葉…う、嘘ですよね?」
「…」
しかし、アリオスは顔を背けてヴァイオレットの質問に答えない。
「アリオス様…っ!」
するとそこへアイザックが顔を出して来た。
「ああ…ヴァイオレット。やはり来たんだね。そうか…今の話聞いてしまったのか」
「お、お兄様…」
アイザックはヴァイオレットに手を差し伸べた。
「大丈夫かい?立てるかな?」
「あ、ありがとうございます。お兄様‥‥」
アイザックに手を引かれ、ヴァイオレットは立ち上がった。そしてアリオスを見た。
「アリオス様…」
「…」
しかし、アリオスは視線すら合わせない。するとアイザックは言った。
「やれやれ…アリオスは本当に冷たい男だね。女性が…しかも仮にもこの国の皇女が床に座り込んでいるのに、手を貸して立たせてあげることすらしてあげないのだから」
そして大袈裟に肩をすくめる。
「…」
アリオスは黙っていたが、ため息をつくとアイザックを見た。
「取りあえず…もう二度とスカーレットには近付かないと約束して下さい。もしまた今後同じような事があれば…皇帝陛下に直に話をさせて頂きます」
そして背を向けて歩き出そうとしたとき…。
「お待ち下さい!アリオス様!」
ヴァイオレットが涙目でアリオスを引き留めた。
「皇女…貴女も同様です。今後一切…私とスカーレットに近付かないで頂きたい」
それは本当に冷たい声だった。
「あ、アリオス様…?」
ヴァイオレットの目に涙がたまる。
「失礼します」
アリオスは一度だけ振り向き、頭を下げると再び背を向けて歩き出す。
「待って!アリオス様っ!」
ヴァイオレットは必死で叫ぶが、アリオスは振り返ることなく立ち去ってしまった。
「あ…アリオス様‥‥」
「可愛そうに…ヴァイオレット」
アリオスが立ち去ると、それまで黙っていたアイザックが泣いているヴァイオレットの頭を撫でた。
「お、お兄様…」
ヴァイオレットは涙に濡れた瞳で兄を見る。
「よし、少し話でもしようか?おいで」
アイザックは自分の執務室へヴァイオレットの手を引いて招き入れ、ソファに座らせると言った。
「どうだい?分ったかな?アリオスの気持ちが」
「う…うう…ア、アリオス様…」
ヴァイオレットは、ハンカチを握りしめながら涙を流している。
「ヴァイオレット。アリオスは頑固な男だ。もうこれ以上お前がアリオスを思っても…無駄だよ。こんな言い方をしては傷つけてしまうかもしれないが、もう彼の事は忘れた方がいい」
「で、でも…」
「大丈夫、心配する事は無い。アリオス以外にもお前を大切にしてくれる男性はいくらでもいるさ」
「お兄様…」
するとアイザックは何を思ったか、立ち上がり書斎机に向かった。そして引き出しを開けると大きな封筒を持ってきた。
「ヴァイオレット、アリオスとの仲は駄目だったけど…お前に素晴らしい縁談の話が来ているんだ」
アイザックはニコニコしながらソファに座ると、封筒から書類を取り出した。
「え?」
ヴァイオレットは耳を疑った。
「いや~…それにしてもお前を妻に迎えたいと言う男性が現れて良かったよ」
「ま、待って下さい!お兄様!」
しかし、アイザックはヴァイオレットの言葉に耳を傾けずに書類を読み上げた。
「彼の名前はエルメス・オベリオ。この国の辺境に住む伯爵で、国境警備を担っている方なんだ。妻を早くに亡くして長い事独り身だったのだが、もう一度妻を娶りたいと縁談の要望が出ていたのだよ。そこでヴァイオレットの話をしたら非常に喜んでくれたんだ。そんなに若い皇女様を妻に出来るのですかと言ってね」
「え…?お、お兄様…?」
ヴァイオレットには兄が何を言っているのか理解出来なかった。
「彼はね、ヴァイオレットの男性遍歴を耳にしても少しも動ずることが無かったんだ。むしろ、そんなに性に奔放なら自分の事も満足させて貰えるでしょうねと喜んでくれた」
「そ、そんな…」
ヴァイオレットの身体は震えていた。
「大変だったんだよ?お前の嫁ぎ先を探すのは…。この国の皇女は自分の身分も考えず、誰彼構わず男をベッドに引き込む女性だと諸外国にまで噂が広がって…私と父がどれだけお前の縁談を探すのに苦労してきたと思う?」
「そ、それは…!」
「頼みの綱のアリオスはやはり無理だった…。ヴァイオレット、もうお前は彼に嫁ぐしかないのだよ?彼は敵国の侵入を防ぐ為の大事な砦を守ってくれている重要人物なのだ。」
アイザックは泣きながら震えているヴァイオレットをじっと見つめると言った。
「大丈夫、彼はもうすでに60歳になるがまだまだ元気な武人だ。ヴァイオレット、嫁いだら沢山子供を産んでくれよ?その子供たちが今度はこの国の砦となってくれるのだから」
そして笑みを浮かべる。
ヴァイオレットは悟った。
この結婚からはもう逃れられないのだと―。
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