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第5章 12 対面
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「どうもお待たせいたしましたわ。私が当主のアグネス・シュバルツと申します」
「娘のエーリカです」
「アリオス・チェスターです。始めまして」
アリオスは立ち上がると愛想笑いの笑みを浮かべた。
「いえ、どうぞ遠慮なさらずにお掛けになって下さい」
アグネスは満面の笑みを浮かべながら素早くアリオスの身なりを観察した。
(とても上質な服を着ているわ…あのメイドの話す通り、貴族に間違いないわね。しかも相当名門の…)
一方のエーリカはもうアリオスに目を奪われていた。
(ああ・・・・こうして間近で見ると、ますます美しいわ。なんて素敵な方なのかしら。アンドレアも良かったけど、こちらの方の方が威厳があって何処か神々しい方だわ)
惚れっぽいエーリカは応接室の入り口でアリオスの様子を伺っている段階で、その容姿に一目ぼれしてしまっていたのだ。
「ところで、チェスター様は‥‥ご出身はどちらなのでしょうか?」
アグネスは探りを入れる為に早速質問した。
「私は『ミュゼ』からやってきました」
「まぁ!『ミュゼ』ですかっ?!あの子息令嬢達の憧れの都のっ?!確か王宮もあるのですよねっ?!」
エーリカが興奮のあまり、立ち上がった。
「ええ、そうですよ」
アリオスは笑みを浮かべながら答えた。
「そ、それではアリオス様の爵位を教えて頂けますか?」
「エーリカッ!」
アグネスはエーリカをたしなめながら心の中で舌打ちした。
(全く、いつもそうやってがっついて本当に困った娘だわ。だからいつも男から結局逃げられるのよ。もっと私みたいにうまく立ち回れるようにならなければ、パトロンだってみつけられないわ。何とか娘の無作法をごまかさないと!)
「ところで、アリオス様。本日はどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」
「ええ、実は先程弟と家庭教師を連れてこの町の観光名所である湖の美しい公園へ行って来たのです。そこで管理人の方に話を伺ったのです。この公園を管理しているのはシュバルツ家だと言う事を。ただ、最近公園管理に予算を掛ける事が出来ずに整備が行き届かないと言われたので、お話を聞きたくて参りました」
「え…?」
アグネスはその話にピクリと反応した。
「見た処…このお屋敷は随分ガランとしておりますね。装飾品や絵画…そういったものが一切置かれていない。贅沢をされず、質素な生活を送られているのかと思えば‥お2人は随分高価なアクセサリーにドレスを着用しておりますね?ひょっとすると今から外出される予定でもありましたか?」
アリオスは事前に聞いていた。シュバルツ家に入り込んだスカーレットの義母と義妹はスカーレットを追い出した後、自分達にとって不必要と思える装飾品や絵画を売り払い、ドレスやアクセサリーを手当たり次第に買い漁っていると。そして今、目の前に対面する2人。ネックレスやイヤリング、指輪と言ったアクセサリー一式を身に着けてアリオスと対面している。
見た処、使用人の数も圧倒的に足りていないのか、部屋の掃除も行き届いておらず、薄っすら埃がたまっている。現に床の上には綿ぼこりがたまっている。
(このような部屋に客を通すとは…一体この屋敷の管理はどうなっているのだ?!)
「い、言え。外出の予定はないのですが、先ほども客人が来ておりましたので、一家の大黒柱を失ってしまった私達が下に見られないように武装しているのです。正直に申し上げますと。我が家の家計は火の車なのですよ」
「左様でしたか。それでは私から援助させてください」
「まぁ!援助ですかっ?!」
アグネスは耳を疑った。
「ありがとうございますっ!」
エーリカは大喜びして、心の中で思った。
(ついに見つけたわ…!彼こそ私の運命の相手なのだわ!)
愚かなエーリカは心の中ですでにアリオスとの結婚生活を想像していた。
「ええ、勿論です。お困りなのですよね?なのでシュバルツ家が管理している公園の管理費用は私が直接、支払いさせて頂きます。」
「え?公園の管理費用ですか…?」
拍子抜けしたようにアグネスは尋ねる。
「ええ、そうです。先程公園を訪れたのですが、芝生は荒れていたし、あちこち老朽化していた施設がありましたから、是非協力させて下さい」
「で、ですが…公園なんて…!」
エーリカが言いかけた時、アグネスは素早くエーリカを肘で小突くと言った。
「ええ、ありがとうございます。ではその管理費用は私達がお預かりいたします」
アグネスはそのお金を横取りしようと考えていた。
「いいえ、それには及びません。全て私の方で行います。では話も済みましたので私はこれで帰ります」
アリオスは立ち上がった。
「え?!そ、そんな!もうお帰りになるのですかっ?!」
「ええ!せめてお夕食でも食べて行って下さい!」
アグネスとエーリカは必死でアリオスを止めようとした。何とかアリオスと親交を深め、あわよくばパトロンか、もしくはエーリカの夫になって貰いたいと愚かな願いがあった。
しかし、アリオスは冷たい声で言った。
「いいえ、弟と婚約者を待たせているので失礼します」
「「婚約者…?」」
呆然とする2人を残し、アリオスは足早に部屋を出て行った―。
「娘のエーリカです」
「アリオス・チェスターです。始めまして」
アリオスは立ち上がると愛想笑いの笑みを浮かべた。
「いえ、どうぞ遠慮なさらずにお掛けになって下さい」
アグネスは満面の笑みを浮かべながら素早くアリオスの身なりを観察した。
(とても上質な服を着ているわ…あのメイドの話す通り、貴族に間違いないわね。しかも相当名門の…)
一方のエーリカはもうアリオスに目を奪われていた。
(ああ・・・・こうして間近で見ると、ますます美しいわ。なんて素敵な方なのかしら。アンドレアも良かったけど、こちらの方の方が威厳があって何処か神々しい方だわ)
惚れっぽいエーリカは応接室の入り口でアリオスの様子を伺っている段階で、その容姿に一目ぼれしてしまっていたのだ。
「ところで、チェスター様は‥‥ご出身はどちらなのでしょうか?」
アグネスは探りを入れる為に早速質問した。
「私は『ミュゼ』からやってきました」
「まぁ!『ミュゼ』ですかっ?!あの子息令嬢達の憧れの都のっ?!確か王宮もあるのですよねっ?!」
エーリカが興奮のあまり、立ち上がった。
「ええ、そうですよ」
アリオスは笑みを浮かべながら答えた。
「そ、それではアリオス様の爵位を教えて頂けますか?」
「エーリカッ!」
アグネスはエーリカをたしなめながら心の中で舌打ちした。
(全く、いつもそうやってがっついて本当に困った娘だわ。だからいつも男から結局逃げられるのよ。もっと私みたいにうまく立ち回れるようにならなければ、パトロンだってみつけられないわ。何とか娘の無作法をごまかさないと!)
「ところで、アリオス様。本日はどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」
「ええ、実は先程弟と家庭教師を連れてこの町の観光名所である湖の美しい公園へ行って来たのです。そこで管理人の方に話を伺ったのです。この公園を管理しているのはシュバルツ家だと言う事を。ただ、最近公園管理に予算を掛ける事が出来ずに整備が行き届かないと言われたので、お話を聞きたくて参りました」
「え…?」
アグネスはその話にピクリと反応した。
「見た処…このお屋敷は随分ガランとしておりますね。装飾品や絵画…そういったものが一切置かれていない。贅沢をされず、質素な生活を送られているのかと思えば‥お2人は随分高価なアクセサリーにドレスを着用しておりますね?ひょっとすると今から外出される予定でもありましたか?」
アリオスは事前に聞いていた。シュバルツ家に入り込んだスカーレットの義母と義妹はスカーレットを追い出した後、自分達にとって不必要と思える装飾品や絵画を売り払い、ドレスやアクセサリーを手当たり次第に買い漁っていると。そして今、目の前に対面する2人。ネックレスやイヤリング、指輪と言ったアクセサリー一式を身に着けてアリオスと対面している。
見た処、使用人の数も圧倒的に足りていないのか、部屋の掃除も行き届いておらず、薄っすら埃がたまっている。現に床の上には綿ぼこりがたまっている。
(このような部屋に客を通すとは…一体この屋敷の管理はどうなっているのだ?!)
「い、言え。外出の予定はないのですが、先ほども客人が来ておりましたので、一家の大黒柱を失ってしまった私達が下に見られないように武装しているのです。正直に申し上げますと。我が家の家計は火の車なのですよ」
「左様でしたか。それでは私から援助させてください」
「まぁ!援助ですかっ?!」
アグネスは耳を疑った。
「ありがとうございますっ!」
エーリカは大喜びして、心の中で思った。
(ついに見つけたわ…!彼こそ私の運命の相手なのだわ!)
愚かなエーリカは心の中ですでにアリオスとの結婚生活を想像していた。
「ええ、勿論です。お困りなのですよね?なのでシュバルツ家が管理している公園の管理費用は私が直接、支払いさせて頂きます。」
「え?公園の管理費用ですか…?」
拍子抜けしたようにアグネスは尋ねる。
「ええ、そうです。先程公園を訪れたのですが、芝生は荒れていたし、あちこち老朽化していた施設がありましたから、是非協力させて下さい」
「で、ですが…公園なんて…!」
エーリカが言いかけた時、アグネスは素早くエーリカを肘で小突くと言った。
「ええ、ありがとうございます。ではその管理費用は私達がお預かりいたします」
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「いいえ、それには及びません。全て私の方で行います。では話も済みましたので私はこれで帰ります」
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「え?!そ、そんな!もうお帰りになるのですかっ?!」
「ええ!せめてお夕食でも食べて行って下さい!」
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しかし、アリオスは冷たい声で言った。
「いいえ、弟と婚約者を待たせているので失礼します」
「「婚約者…?」」
呆然とする2人を残し、アリオスは足早に部屋を出て行った―。
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※架空のお話です。
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