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第5章 14 ロビーでの会話
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アリオスの報告が終わると4人はカールを起こし、18時の夕食の時間まで自由に過ごした。そしてその後はホテルの1階で豪華な食事を堪能した―。
21時少し前―
ブリジットとスカーレットがジミーとの待ち合わせ場所のロビーに行くと、驚く事にロビー中央に置かれた談話用のソファに座ったジミーとアリオスがいた。
「え…?アリオス様、何故こちらに…?」
ブリジットは戸惑いながらアリオスに尋ねた。
「カール様はどうされたのですか?」
スカーレットの質問にアリオスは言った。
「カールなら、もう部屋で眠っている。遊び疲れたようだ。それで…俺も話に混ぜて貰えないかと思って彼に頼んでいた処だ。どうだろう?俺も話を聞かせてくれないだろうか?」
一方のジミーはすっかり恐縮している。
「い、いえ。そんなスカーレットの恩人の方なのですから、当然です」
「良かった。感謝するよ。実はシュバルツ家の事で話を聞きたい事があったからな」
そしてアリオスはスカーレットとブリジットを見ると言った。
「君達も座ろう」
「はい」
「失礼致します」
スカーレットとブリジットも空いているソファに座ると、早速スカーレットは口を開いた。
「ジミー。お仕事はもう慣れたの?」
「ああ、ばっちりさ。今じゃ大分レパートリーも増えて、厨房のサブリーダー
になったし、デザートは全て俺が担当してるんだ」
「凄いわね、ジミー。貴方はお菓子作り以外にも料理も才能があったのね」
スカーレットは感心したように言う。
「ジミー。他に厨房にいた仲間はどうしたの?」
ブリジットが質問した。
「はい、皆就職先はバラバラです。俺のように食堂に勤めた者もいれば、レストランやホテル、それにこの町を出て、別のお屋敷で料理人として働いてる者もいます。皆と時々手紙のやり取りをして近況報告していますよ」
「そうだったの。それは良かったわ」
スカーレットは安堵した。屋敷に住んでいた頃厨房には時々顔を出しており、全員と顔見知りだったからだ。
「皆、無事に就職先が決まっていたのね…本来であれば私が紹介状を書いて皆の就職先を斡旋してあげなくちゃいけない立場なのに‥」
スカーレットは申し訳なさげに言う。
「何言ってるんだ?スカーレット。あの状況は普通じゃなかったんだ。しかもあんな突然に全員が一斉にやめたのだから紹介状なんて書いている余裕すら無かったじゃないか。誰もスカーレットの事をそんな風に思う使用人はいないさ」
「ジミー…ありがとう」
「ところで、一つ聞きたい事があるのだが、万一今あの屋敷を占拠している親子があの屋敷から出て行った場合…君達はあの屋敷に戻るつもりはあるか?」
「え?」
ジミーは驚いた様子でアリオスを見た。
「アリオス様…?」
スカーレットは怪訝そうに首を傾げた。一方のブリジットは喜んでいる。
「アリオス様、つまりそれはあのマゼンダ親子をあのお屋敷から追い出す策があると言う事ですね?」
「い、いや。まだこれと言った打開策は何も見つかってはいないが…もしあの親子が出て行き、スカーレットが戻って来れた場合は…屋敷で働いていた者達は戻ってくる意思があるのか確認して置きたくて…」
するとジミーはじっとスカーレットを見つめると言った。
「ええ勿論です。あのシュバルツ家の正当な継承者はスカーレットなのですから」
「大丈夫です!私は信じています。スカーレット様が必ずシュバルツ家に戻れることを…!」
ブリジットも力強く頷いた。
****
22時―
「それでは俺はこれで帰ります、明日も仕事なので」
ジミーがソファから立ち上がり、全員の顔を見た。
「ええ、またね。ジミー」
スカーレットはジミーに言う。
「ああ」
ジミーは頷くとアリオスとブリジットにも声を掛けた。
「また是非『リムネー』へ来て下さい」
「ああ、分った」
「勿論よ」
そして最後にジミーは手を振ると、背を向けて出口へと歩きだした。
スカーレットはジミーがホテルのドアを開けて出て行くまで、見送るのだった―。
21時少し前―
ブリジットとスカーレットがジミーとの待ち合わせ場所のロビーに行くと、驚く事にロビー中央に置かれた談話用のソファに座ったジミーとアリオスがいた。
「え…?アリオス様、何故こちらに…?」
ブリジットは戸惑いながらアリオスに尋ねた。
「カール様はどうされたのですか?」
スカーレットの質問にアリオスは言った。
「カールなら、もう部屋で眠っている。遊び疲れたようだ。それで…俺も話に混ぜて貰えないかと思って彼に頼んでいた処だ。どうだろう?俺も話を聞かせてくれないだろうか?」
一方のジミーはすっかり恐縮している。
「い、いえ。そんなスカーレットの恩人の方なのですから、当然です」
「良かった。感謝するよ。実はシュバルツ家の事で話を聞きたい事があったからな」
そしてアリオスはスカーレットとブリジットを見ると言った。
「君達も座ろう」
「はい」
「失礼致します」
スカーレットとブリジットも空いているソファに座ると、早速スカーレットは口を開いた。
「ジミー。お仕事はもう慣れたの?」
「ああ、ばっちりさ。今じゃ大分レパートリーも増えて、厨房のサブリーダー
になったし、デザートは全て俺が担当してるんだ」
「凄いわね、ジミー。貴方はお菓子作り以外にも料理も才能があったのね」
スカーレットは感心したように言う。
「ジミー。他に厨房にいた仲間はどうしたの?」
ブリジットが質問した。
「はい、皆就職先はバラバラです。俺のように食堂に勤めた者もいれば、レストランやホテル、それにこの町を出て、別のお屋敷で料理人として働いてる者もいます。皆と時々手紙のやり取りをして近況報告していますよ」
「そうだったの。それは良かったわ」
スカーレットは安堵した。屋敷に住んでいた頃厨房には時々顔を出しており、全員と顔見知りだったからだ。
「皆、無事に就職先が決まっていたのね…本来であれば私が紹介状を書いて皆の就職先を斡旋してあげなくちゃいけない立場なのに‥」
スカーレットは申し訳なさげに言う。
「何言ってるんだ?スカーレット。あの状況は普通じゃなかったんだ。しかもあんな突然に全員が一斉にやめたのだから紹介状なんて書いている余裕すら無かったじゃないか。誰もスカーレットの事をそんな風に思う使用人はいないさ」
「ジミー…ありがとう」
「ところで、一つ聞きたい事があるのだが、万一今あの屋敷を占拠している親子があの屋敷から出て行った場合…君達はあの屋敷に戻るつもりはあるか?」
「え?」
ジミーは驚いた様子でアリオスを見た。
「アリオス様…?」
スカーレットは怪訝そうに首を傾げた。一方のブリジットは喜んでいる。
「アリオス様、つまりそれはあのマゼンダ親子をあのお屋敷から追い出す策があると言う事ですね?」
「い、いや。まだこれと言った打開策は何も見つかってはいないが…もしあの親子が出て行き、スカーレットが戻って来れた場合は…屋敷で働いていた者達は戻ってくる意思があるのか確認して置きたくて…」
するとジミーはじっとスカーレットを見つめると言った。
「ええ勿論です。あのシュバルツ家の正当な継承者はスカーレットなのですから」
「大丈夫です!私は信じています。スカーレット様が必ずシュバルツ家に戻れることを…!」
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「ああ、分った」
「勿論よ」
そして最後にジミーは手を振ると、背を向けて出口へと歩きだした。
スカーレットはジミーがホテルのドアを開けて出て行くまで、見送るのだった―。
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