婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
27 / 221

第27話 気疲れする悪役令息

しおりを挟む
 その後、伯爵から開放された僕は次に夫人につかまった。

そして何故かエディット抜きでサンルームに連れて行かれてしまった。

その理由は僕のエディットに対する本心を聞き出したいから…等と夫人は話していたけれども、本当の理由はそうではなかった。

夫にも娘にも聞かれたくない、自分の若かりし頃の恋愛体験を語りたかっただけだったようだ。
どうも御夫人達の間で昔の恋愛話をするのが流行しているらしく、若い男性の意見を聞きたいとか、何とかで……。

そこで甘ったるいお菓子を沢山並べられて恋愛論?みたいな話を延々と1時間半に渡り、聞かされることになるのだった――。


****


 ボーン
 ボーン
 ボーン

サンルームに16時を告げる振り子時計の音が鳴り響いた。

「あら…まぁ!いけない。もうこんな時間だったのね?」

夫人が驚いたように壁に掛けられた振り子時計を見た。

「ええ、そのようですね」

夫人の話につきあわされて、疲れ切ってはいたものの僕は笑みを浮かべて頷いた。

「まぁ…。私ったらどうしましょう。アドルフ様とのお話が楽しくて、ついつい長話になってしまったわ。何しろ、アドルフ様はお話が聞き上手でいらっしゃいますから」

夫人がニコニコしながら僕を見ている。

「ありがとうございます」

頭を下げて夫人にお礼を言うものの……うん。聞き上手なのは当然だ。
何しろ前世の僕は飲料メーカー勤務の営業マン。自社製品を置いてもらう為に様々な会社や小売店を回った。

そこで営業先の人の世間話や愚痴話を聞いたりと、信頼を得て……得意先を新規開拓してきたのだから。
伯爵との話では、まるで会社の上司と話をしているみたいで落ち着かなかったけれども熟年女性?との会話は得意だった

「でも17時にエディットと出掛けるのであれば、もう御自宅に戻られるお時間はありませんよね?」

「ええ……そうなりますね」

結局明日の定期試験の勉強をすることが出来なかった…。
仕方ない。
エディットに教科書を借りて、今から出掛けるまでの1時間だけでも勉強しないと。

そんなことを考えていると、夫人がとんでもない事を提案してきた。

「それではアドルフ様、場所を移して今度は我が家自慢のティーハウスに行ってお話をしませんか?」

えっ?!夫人!冗談ですよね?
それより僕はほんの少しの合間でも勉強をしたいのに……。

そこで僕は夫人に声を掛けた。

「あの、それよりもエディットをここに呼んできて頂けませんか?2人だけで大事な話があるので。どうかお願いします」

まさか夫人に直接、「歴史の教科書をエディットから借りたい」等と言えるはずない。

「あら…まぁ、そうでしたわね?アドルフ様はエディットの婚約者なのですから当然ですわよね?分かりました。すぐにあの子を呼んでまいります!」

「お願いします」

頭を下げると、夫人は「ええ、お待ち下さい」と言って、いそいそとサンルームを出ていった。

パタパタと夫人の足音が遠くなり…ようやく僕は肩の力を抜くことが出来た。

「ふ~疲れた……」

ため息を付き、天井を見上げる。

全く、なんてことだろう。
本来であれば今日は1日、家に閉じこもって明日の試験勉強をしようと思っていたのに、僕の計画が全てパアになってしまった。

大体、何故こんなことになってしまったのだろう?
そうだ、元はと言えばブラッドリーが僕を誘いに家に来たことから始まったんだ。

そして気づけばエディットの屋敷に上がり…これから更に2人で一緒にお祭りに出掛ける約束をしている。

「参ったな…」

小声で呟き、目を閉じた時……。

「あ、あの…アドルフ様…」

不意にエディットの声が聞こえた。

そこで慌てて居住まいをただして振り向くと、エディットがいつの間にか立っていた。

何故か、頬を赤く染めて恥ずかしそうに僕を見つめながら――。



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」 ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。 竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。 そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。 それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。 その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた! 『ママ! 早く僕を産んでよ!』 「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」 お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない! それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――! これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。 設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...