53 / 221
第53話 悪役令息と両親
しおりを挟む
結局、この日は母とエディットの2人で今話題のスイーツの話で盛り上がることになった。
一方、スイーツが苦手な僕は2人の会話している様子を眺め……時折話を振られては相槌を打つ程度だった。
2人が会話をしている間、本日転校してきた王子のことを考えながら……。
そして18時になったところで、エディットは帰宅していった。
「また明日もお迎えに伺います」と言い残して――。
****
19時――
仕事から帰宅した父が上機嫌でワイングラスを片手に話している。
「そうかそうか、今日もエディット令嬢が訪ねてきてくれたのか?」
「はい、そうです。剣術の授業で怪我をした僕を気遣ってくれて自分の馬車に乗せてくれました」
赤ワインを水のように流し込む父を恨めしい…基、羨ましい気持ちで見ながらローストビーフの乗ったオープンサンドを口にした。
「そうか、そうか。確かエディット令嬢の馬車は、あの有名なキャリッジ社のブランド品だったからな……乗り心地は最高だろう」
「ええ、エディットさんのご両親にとっては、たった1人きりの大切な娘ですからね。私も何度かキャリッジ社の馬車に乗ったことがあるけれども、揺れが殆ど無くて、快適だったわ」
母はクイッとシャンパンを飲んだ。
…羨ましい。
だけど、キャリッジ社か……。恐らく、この世界ではトップの企業なのだろう。
僕のいた世界で言えば、ドイツのあの有名な車を作っているメーカーに該当するのかもしれない。
「それにしてもその怪我はまさか剣術の授業で出来たものだったとはな。てっきり喧嘩でもしたのかと思ったぞ?でも見直した。お前が大の苦手だった剣術の授業をサボらずに真面目に出たのだからな」
時折、料理を口にしながらまたしてもワインをグビグビ飲み干す父。
「ええ、私もてっきり喧嘩かと思ってしまったわ。ねぇ?アドルフ」
そして母の空のグラスに、側に控えていた給仕のフットマンが2本目のシャンパンを注ぐ。一体、今夜は何本開ける気だろう?
「いえ、いえ。以前の自分ならいざ知らず、喧嘩なんかしませんから」
答えながら思った。
喧嘩かぁ…。そう言えば、母は僕を見て真っ先に喧嘩で出来た怪我なのか問い詰めてきたし…ひょっとするとアドルフは喧嘩早い人物だったのだろうか?
だけど、両親には言えない。アドルフだったときの記憶が今の僕にはすっかり抜け落ちてしまったということを。
もし伝えようものなら、真っ先に病院に送られて何処も悪くないのにあちこち検査を受けさせられるかもしれない。そんな目に遭うのはごめんだ。
「そうだ。ところで今日は歴史の試験があったのだろう?出来はどうだったのら?」
赤ら顔で大分呂律の回らなくなった父が話題を変えてきた。
「そうですね、大分手応えがあったと思います。この調子で全ての勉強を頑張っていこうと思います」
特に絶望的な古代文字を集中的に勉強したほうがいいだろう。何しろ、手も足も出ない授業だったのだから。
「それは良かったわ。試験の結果が良ければ、学校内でも堂々とエディットと一緒に行動できるでしょうから」
「え?」
母の言葉に一瞬血の気が引くのを感じた。
「あの、それはどういう意味でしょうか?」
食事の手を止めて、シャンパンを飲んでいる母に尋ねた。
「あら?当然じゃない。あの学院は身分よりも学力を重んじるのよ?エディットのように成績の良いAクラスの学生とCクラスの貴方とでは…まぁ、はっきり言えば不釣り合いじゃない?身の程知らず、恥を知れ。と言うところかしら?」
「はぁ……」
母もかなり酔っているのだろうか?随分ズバズバと言ってくれる。
「うむ、母さんの言う通りら。あの学院でエディットとお前が一緒にいたら、後ろ指を差されてしまうだろう?Cクラスのお前ならいざ知らず。成績の良いエディットの場合、同じAクラスの学生達に軽蔑されてしまうかもしれないからな。そのこともあって、お前は勉強に目覚めたのだろう?」
「え…?」
まさか…そんなはずは……?
エディットが…?
でも思い起こせば、今日エディットが僕のクラスにやってきた時にビクトリアたちが彼女に何やら文句を言っていた。
ひょっとすると、成績上位クラスと下位クラスでは仲違いしているのだろうか?
それならエディットと僕が学院で一緒に過ごすのは……色々まずいかもしれない。
「あら?どうかしたの?」
「そうだな、顔色が優れないようだぞ?」
アルコール臭を漂わせた父と母が声を掛けてきた。
「…いえ、そんなことはありません。それでは食事も終わったことなので僕は退席しますね。これから勉強するつもりなので」
言い終わると席を立ち上がった。
2人がアルコールを飲んでいる姿は今の僕には、はっきり言って目の毒だ。
「おや?そうか?」
「頑張りなさい」
「はい」
2人に声を掛けられて返事をすると僕はダイニングルームを後にした。
一抹の不安を胸に抱きながら……。
そして、翌日。
僕の不安は的中することになる――。
一方、スイーツが苦手な僕は2人の会話している様子を眺め……時折話を振られては相槌を打つ程度だった。
2人が会話をしている間、本日転校してきた王子のことを考えながら……。
そして18時になったところで、エディットは帰宅していった。
「また明日もお迎えに伺います」と言い残して――。
****
19時――
仕事から帰宅した父が上機嫌でワイングラスを片手に話している。
「そうかそうか、今日もエディット令嬢が訪ねてきてくれたのか?」
「はい、そうです。剣術の授業で怪我をした僕を気遣ってくれて自分の馬車に乗せてくれました」
赤ワインを水のように流し込む父を恨めしい…基、羨ましい気持ちで見ながらローストビーフの乗ったオープンサンドを口にした。
「そうか、そうか。確かエディット令嬢の馬車は、あの有名なキャリッジ社のブランド品だったからな……乗り心地は最高だろう」
「ええ、エディットさんのご両親にとっては、たった1人きりの大切な娘ですからね。私も何度かキャリッジ社の馬車に乗ったことがあるけれども、揺れが殆ど無くて、快適だったわ」
母はクイッとシャンパンを飲んだ。
…羨ましい。
だけど、キャリッジ社か……。恐らく、この世界ではトップの企業なのだろう。
僕のいた世界で言えば、ドイツのあの有名な車を作っているメーカーに該当するのかもしれない。
「それにしてもその怪我はまさか剣術の授業で出来たものだったとはな。てっきり喧嘩でもしたのかと思ったぞ?でも見直した。お前が大の苦手だった剣術の授業をサボらずに真面目に出たのだからな」
時折、料理を口にしながらまたしてもワインをグビグビ飲み干す父。
「ええ、私もてっきり喧嘩かと思ってしまったわ。ねぇ?アドルフ」
そして母の空のグラスに、側に控えていた給仕のフットマンが2本目のシャンパンを注ぐ。一体、今夜は何本開ける気だろう?
「いえ、いえ。以前の自分ならいざ知らず、喧嘩なんかしませんから」
答えながら思った。
喧嘩かぁ…。そう言えば、母は僕を見て真っ先に喧嘩で出来た怪我なのか問い詰めてきたし…ひょっとするとアドルフは喧嘩早い人物だったのだろうか?
だけど、両親には言えない。アドルフだったときの記憶が今の僕にはすっかり抜け落ちてしまったということを。
もし伝えようものなら、真っ先に病院に送られて何処も悪くないのにあちこち検査を受けさせられるかもしれない。そんな目に遭うのはごめんだ。
「そうだ。ところで今日は歴史の試験があったのだろう?出来はどうだったのら?」
赤ら顔で大分呂律の回らなくなった父が話題を変えてきた。
「そうですね、大分手応えがあったと思います。この調子で全ての勉強を頑張っていこうと思います」
特に絶望的な古代文字を集中的に勉強したほうがいいだろう。何しろ、手も足も出ない授業だったのだから。
「それは良かったわ。試験の結果が良ければ、学校内でも堂々とエディットと一緒に行動できるでしょうから」
「え?」
母の言葉に一瞬血の気が引くのを感じた。
「あの、それはどういう意味でしょうか?」
食事の手を止めて、シャンパンを飲んでいる母に尋ねた。
「あら?当然じゃない。あの学院は身分よりも学力を重んじるのよ?エディットのように成績の良いAクラスの学生とCクラスの貴方とでは…まぁ、はっきり言えば不釣り合いじゃない?身の程知らず、恥を知れ。と言うところかしら?」
「はぁ……」
母もかなり酔っているのだろうか?随分ズバズバと言ってくれる。
「うむ、母さんの言う通りら。あの学院でエディットとお前が一緒にいたら、後ろ指を差されてしまうだろう?Cクラスのお前ならいざ知らず。成績の良いエディットの場合、同じAクラスの学生達に軽蔑されてしまうかもしれないからな。そのこともあって、お前は勉強に目覚めたのだろう?」
「え…?」
まさか…そんなはずは……?
エディットが…?
でも思い起こせば、今日エディットが僕のクラスにやってきた時にビクトリアたちが彼女に何やら文句を言っていた。
ひょっとすると、成績上位クラスと下位クラスでは仲違いしているのだろうか?
それならエディットと僕が学院で一緒に過ごすのは……色々まずいかもしれない。
「あら?どうかしたの?」
「そうだな、顔色が優れないようだぞ?」
アルコール臭を漂わせた父と母が声を掛けてきた。
「…いえ、そんなことはありません。それでは食事も終わったことなので僕は退席しますね。これから勉強するつもりなので」
言い終わると席を立ち上がった。
2人がアルコールを飲んでいる姿は今の僕には、はっきり言って目の毒だ。
「おや?そうか?」
「頑張りなさい」
「はい」
2人に声を掛けられて返事をすると僕はダイニングルームを後にした。
一抹の不安を胸に抱きながら……。
そして、翌日。
僕の不安は的中することになる――。
20
あなたにおすすめの小説
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。
愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。
ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。
ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。
二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。
時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し……
全ては、愛する人と幸せになるために。
他サイトと重複投稿しています。
全面改稿して投稿中です。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」
ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。
竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。
そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。
それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。
その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた!
『ママ! 早く僕を産んでよ!』
「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」
お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない!
それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――!
これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。
設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる