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第56話 悪役令息、ヒロインを説得する
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「アドルフ様、本当にここで降りるおつもりですか?どうかもう一度考え直して頂けませんか?」
学院の正門まで後少しと言う緑道で馬車が止まっている。
そしてエディットはカバンを持って馬車から降りようとしている僕を悲しげな顔で見つめていた。
「うん、ここから先は歩いて登校するよ。幸い、学院の生徒達も見掛けないし」
馬車の窓から外を見渡しながら返事をした。
エステル学院は閑静な住宅街にある学院で、この緑道を利用するのは学院の関係者たちのみだった。
そして、ほぼ全員が自家用車か馬車で送り迎えして貰っているので徒歩通学している学生は誰もいない。
ここから歩いて登校すれば僕とエディットが一緒に登校してきたことに気付く者はいないだろう。
これ以上学院内でエディットが僕と一緒にいることでクラスメイト達から非難されることだけは避けたかったからだ。
そこで、正門に入る前に僕は馬車を降りることを提案したのだけれども……。
「で、ですが……アドルフ様はそんなに酷い怪我をなさっているではありませんか?私がお迎えにさえ来なければ、アドルフ様は校舎の前まで馬車に乗ることが出来たのに……」
エディットはまるで今にも泣きそうな顔をしている。
「エ、エディット……」
大変だ!
僕はエディットに罪悪感を抱かせるなんて、これっぽっちも無かったのに!
「だ、だからそんな風に考えなくたっていいんだってば。本当にエディットには感謝しているんだよ?乗り心地の良い馬車に乗せてもらえたお陰で怪我に響くこともなかったし、何より馬車の中で色々話が出来て本当に楽しかったんだから」
「アドルフ様……」
僕の言葉にエディットは少しだけ表情が柔らぎ…次の瞬間、驚きの言葉を口にした。
「そうですか……。分かりました、ではお怪我をなさっているアドルフ様の代わりに私が降りて学院まで歩きます。どうぞアドルフ様はそのままで、この馬車にお乗り下さい」
「ええっ?!だ、駄目だよっ!だって僕がこんな女性仕様の馬車に乗って、1人で
降りられるはずないじゃないか?」
エディットの馬車は真っ白な馬車に所々にバラの花模様が描かれている。内装だって淡い水色のパステルカラーで塗られている。
大勢の学生たちが行き交う中、まるでプリンセスが乗るような馬車から男が1人で降りる姿をちょっと想像してみて欲しい。
きっと誰しもが僕を気味悪がるだろう。それどころかあの男は少女趣味だとか、変態ではないだろうかと思われるに決まっている。
ただでさえ、僕は原作の中では追放決定の悪役令息。これ以上世間から悪い評判を立てられるのけは絶対に避けなくては。
「確かに、アドルフ様の仰ることは尤もですが……」
「良かった。分かってくれたんだね?それじゃ僕はもう行くよ」
うつむき加減に頷くエディットに安堵した僕は、馬車を降りようとした時……。
「お待ち下さい、アドルフ様」
「何?」
声を掛けられ、振り向いた。
「あの……それでは本日は学院内では……」
「うん、ごめんね。やっぱり僕とエディットが一緒にいるのを他の学生たちに見られると……僕は構わないけど、エディットに悪評が立つかもしれないから今日は別々に過ごそう?」
「はい……分かりました…」
エディットは今にも消え入りそうな声で返事をした。
「ごめんね?エディット」
そんなに両親の言いつけが大事なのだろうか?それとも、本当に僕と一緒にいたいのだろうか?
そんな態度を取られてしまえば、勘違いしそうになってしまう。
ひょっとして、エディットは僕のことを好きなのではないだろうか…と。
「あの、でしたらせめて……一緒に帰りませんか?放課後馬車を正門前に止めておきますから。アドルフ様だって馬車が無いとお困りですよね?」
エディット……。
「うん、ありがとう、それじゃそうさせてもらうよ。それじゃ帰りにまた会おうね」
僕はまたしても無意識のうちに手を伸ばし、エディットの頭を撫でていた。
はっ!ま、まずい……!
けれど、エディットは嬉しそうにう笑みを浮かべて僕を見つめている。
それが妙に照れくさくて、手を引っ込めた。
「そ、それじゃ僕はもう降りるよ」
「はい、分かりました」
「う、うん。またね」
僕が降りると、馬車の扉はすぐに閉められた。
そして……。
ガラガラガラガラ……
馬車は正門目指して走り出した。
「う、イタタタタ…」
馬車が遠ざかっていったところで、顔をしかめて痛む右腕を抑えた。
本当はずっと身体が痛かったけれども、エディットに気を使わせるわけにはいかなかったので痛みを我慢していたのだ。
「ふぅ~…。それにしても本当に打ち身って翌日の方が痛むんだな。とりあえず医務室は1時限目の授業が終わってから行くことにしよう。授業のノートは……ブラッドリーに見せてもらえばいいかな……?よし、それじゃ行こう」
僕は1人、痛む身体を引きずるように正門目指して歩き始めた。
そしてこの後、思いがけない出来事に遭遇することになる――。
学院の正門まで後少しと言う緑道で馬車が止まっている。
そしてエディットはカバンを持って馬車から降りようとしている僕を悲しげな顔で見つめていた。
「うん、ここから先は歩いて登校するよ。幸い、学院の生徒達も見掛けないし」
馬車の窓から外を見渡しながら返事をした。
エステル学院は閑静な住宅街にある学院で、この緑道を利用するのは学院の関係者たちのみだった。
そして、ほぼ全員が自家用車か馬車で送り迎えして貰っているので徒歩通学している学生は誰もいない。
ここから歩いて登校すれば僕とエディットが一緒に登校してきたことに気付く者はいないだろう。
これ以上学院内でエディットが僕と一緒にいることでクラスメイト達から非難されることだけは避けたかったからだ。
そこで、正門に入る前に僕は馬車を降りることを提案したのだけれども……。
「で、ですが……アドルフ様はそんなに酷い怪我をなさっているではありませんか?私がお迎えにさえ来なければ、アドルフ様は校舎の前まで馬車に乗ることが出来たのに……」
エディットはまるで今にも泣きそうな顔をしている。
「エ、エディット……」
大変だ!
僕はエディットに罪悪感を抱かせるなんて、これっぽっちも無かったのに!
「だ、だからそんな風に考えなくたっていいんだってば。本当にエディットには感謝しているんだよ?乗り心地の良い馬車に乗せてもらえたお陰で怪我に響くこともなかったし、何より馬車の中で色々話が出来て本当に楽しかったんだから」
「アドルフ様……」
僕の言葉にエディットは少しだけ表情が柔らぎ…次の瞬間、驚きの言葉を口にした。
「そうですか……。分かりました、ではお怪我をなさっているアドルフ様の代わりに私が降りて学院まで歩きます。どうぞアドルフ様はそのままで、この馬車にお乗り下さい」
「ええっ?!だ、駄目だよっ!だって僕がこんな女性仕様の馬車に乗って、1人で
降りられるはずないじゃないか?」
エディットの馬車は真っ白な馬車に所々にバラの花模様が描かれている。内装だって淡い水色のパステルカラーで塗られている。
大勢の学生たちが行き交う中、まるでプリンセスが乗るような馬車から男が1人で降りる姿をちょっと想像してみて欲しい。
きっと誰しもが僕を気味悪がるだろう。それどころかあの男は少女趣味だとか、変態ではないだろうかと思われるに決まっている。
ただでさえ、僕は原作の中では追放決定の悪役令息。これ以上世間から悪い評判を立てられるのけは絶対に避けなくては。
「確かに、アドルフ様の仰ることは尤もですが……」
「良かった。分かってくれたんだね?それじゃ僕はもう行くよ」
うつむき加減に頷くエディットに安堵した僕は、馬車を降りようとした時……。
「お待ち下さい、アドルフ様」
「何?」
声を掛けられ、振り向いた。
「あの……それでは本日は学院内では……」
「うん、ごめんね。やっぱり僕とエディットが一緒にいるのを他の学生たちに見られると……僕は構わないけど、エディットに悪評が立つかもしれないから今日は別々に過ごそう?」
「はい……分かりました…」
エディットは今にも消え入りそうな声で返事をした。
「ごめんね?エディット」
そんなに両親の言いつけが大事なのだろうか?それとも、本当に僕と一緒にいたいのだろうか?
そんな態度を取られてしまえば、勘違いしそうになってしまう。
ひょっとして、エディットは僕のことを好きなのではないだろうか…と。
「あの、でしたらせめて……一緒に帰りませんか?放課後馬車を正門前に止めておきますから。アドルフ様だって馬車が無いとお困りですよね?」
エディット……。
「うん、ありがとう、それじゃそうさせてもらうよ。それじゃ帰りにまた会おうね」
僕はまたしても無意識のうちに手を伸ばし、エディットの頭を撫でていた。
はっ!ま、まずい……!
けれど、エディットは嬉しそうにう笑みを浮かべて僕を見つめている。
それが妙に照れくさくて、手を引っ込めた。
「そ、それじゃ僕はもう降りるよ」
「はい、分かりました」
「う、うん。またね」
僕が降りると、馬車の扉はすぐに閉められた。
そして……。
ガラガラガラガラ……
馬車は正門目指して走り出した。
「う、イタタタタ…」
馬車が遠ざかっていったところで、顔をしかめて痛む右腕を抑えた。
本当はずっと身体が痛かったけれども、エディットに気を使わせるわけにはいかなかったので痛みを我慢していたのだ。
「ふぅ~…。それにしても本当に打ち身って翌日の方が痛むんだな。とりあえず医務室は1時限目の授業が終わってから行くことにしよう。授業のノートは……ブラッドリーに見せてもらえばいいかな……?よし、それじゃ行こう」
僕は1人、痛む身体を引きずるように正門目指して歩き始めた。
そしてこの後、思いがけない出来事に遭遇することになる――。
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