婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第75話 浮かれる悪役令息

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 馬車に乗り込み、向かい合わせに座るとすぐにエディットに謝った。

「今日はごめん、エディット。折角2人で一緒に食事をしていたのに…途中で席を外しちゃって」

「いいえ、むしろ謝るべきは私の方です。私があの場でセドリック様にきちんと意見を言うべきでした。申し訳ございません」

するとエディットの方が謝ってきた。

「な、何言ってるんだよ。エディット、むしろあの場で黙っていて正解だったと思うよ。だって彼は王……」

そこまで言いかけて、慌てて口を閉ざした。

「アドルフ様?どうされましたか?」

不思議そうに首を傾げるエディット。

「い、いや。何でも無いよ。エディットまで巻き込みたくは無かったから、あの場で黙っていてくれて良かったよ」

危ない危ない…危うく彼が王子だということを口走りそうになってしまった。
自分の身分を隠してお忍びでこの学院に通っているのに、僕が彼の秘密を暴露したらとんでもないことになりそうだ。

「そうでしょうか…?ですが私はセドリック様の言葉に納得は出来ません……お昼位、アドルフ様と一緒に……食べたいです……」

エディットはそこで俯いてしまった。

「エディット」

名前を呼ぶと、顔を上げる彼女。

「僕もお昼はエディットと一緒に食べたいと思ってるよ」

「ア…アドルフ様……」

真っ赤な顔で潤んだ瞳で僕を見るエディットは本当に可愛らしかった。

「だけど、僕達が一緒にいるところを同じクラスの誰かに見られたらエディットが困る立場になるよね?」

「それはそうかも知れませんが……。で、でも…それでも私は……アドルフ様の側に…」

声を震わせるエディットに僕はある提案をした。

「それで、僕に提案があるんだけど……聞いてくれるかな?」

「提案……ですか?」

「うん。今日あの後、僕は中庭へ行ったんだ。あそこには窓も扉もついているガゼボがあったんだよ。エディットさえ良かったら明日からお弁当を持ってきて2人で一緒に食べない?あの場所には殆ど学生は殆ど行かないみたいなんだよ」

あの中庭なら誰の目も気にすること無く、エディットと2で人堂々と食事をするにはもってこいの場所だ。

「そうなのですか?それはいいですね。では明日から早速そこでお昼を一緒に頂きましょう」

エディットが頬を染めて嬉しそうに笑みを浮かべる。


エディット……。
一緒にお昼を食べる提案をしただけで、こんなに喜んでくれるとは思わなかった。

これは自惚れでも何でも無く…エディットも僕のことを親に決められた婚約者とは関係なく、好いてくれているのかも知れない。

だとしたら……こんなに嬉しいことは無い。

もっと……もっとエディットを喜ばせて、その可愛らしい笑顔を見たい。
そこで僕は自分の決意を伝えようと思った。

「エディット」

「はい、何でしょう?」

「僕はこれからも勉強を頑張るよ。そして良い点数を取って、必ずエディットと同じクラスになってみせるよ。他の誰にも後ろ指差されずに、堂々と校内で一緒にいられるようにね。だから……それまで待っていてくれるかな?」

聞き用によってはまるで告白にも取れるかも知れない。

「は、はい……勿論です!あ、あの…及ばずながら私も協力させて頂けますか?私と一緒に…その、勉強しませんか…?」

エディットは余程恥ずかしいのか、顔を真っ赤に染めながら尋ねてきた。

「本当かい?エディットと一緒に勉強出来るなら、もっと頑張れそうだよ。ありがとう、とっても嬉しいよ」

そしていつものようにエディットの頭をそっと撫でながら思った。

そうだ、サチの言う通りだ。僕はエディットに恋してる。
もう……原作なんか関係ない。

決めた。
記念式典パーティーの時、エディットに好きだと正直な自分の気持ちを伝えよう。



この時の僕は、多分相当浮かれていたのだと思う。

何故なら6年前の記憶をすっかり忘れていたのだから――。


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