婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第134話 名門、モーガン家

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 ガラガラと走り続けるヴァレンシュタイン家の馬車の中で、安堵のため息をついた。

「良かった……ヴァレンシュタイン家の御者がブラッドリーの家を知っていて」

 家には内緒で出て来てしまったけれど、大丈夫だろうか?本当はブラッドリーの家に行くことを伝えるべきなのだろう。だけど、ヴァレンシュタイン家がブラッドリーを良く思っていないのは知っていた。

母に伝えれば反対されるかもしれない。

 そう思うと、どうしても伝えられなかった。

「でも……まぁいいか。アドルフだって、もう18歳なんだから。それ位のこと、一々親に相談しなくても」

無理やり自分の中で決めつけ、窓の外に視線を移した。
空は黄昏色に染まり、一番星が大きく光り輝いていた――。



****

「ここがブラッドリーの住む屋敷か……」

馬車から降りた僕は高い塀にぐるりと囲まれたモーガン家を見上げた。
モーガン家は古くからある伯爵家で町中に大きな屋敷を構えている。かなり年季の入った石造りの建物は3階建てで、ちょっとした古城のようにも見える雰囲気のある屋敷だった。

そう言えば、ブラッドリーの住む屋敷はこの町の重要文化財に指定されてると話してたっけ……。
そんなことを考えていた時、男性御者に背後から声を掛けられた。

「あの……アドルフ様」
「あ、ごめん。何?」

慌てて振り向いて返事をする。

「いえ、お帰りの馬車は……いかがいたしましょうか?」

この御者もまだどこか僕に怯えている節が見える。
参ったな……。もう僕は以前のアドルフとは違うのに。

「帰りは辻馬車を使って帰るから大丈夫だよ。それよりヴァレンシュタイン家に戻ったら、母に僕はモーガン家へ向かったと伝えて置いて貰えるかな?」

事後報告になるけれど、この際伝えないよりはマシだろう。

「はい、承知致しました。それでは失礼致します」

「うん。乗せてくれてありがとう」

「い、いえ!」

驚いた様に返事をすると、馬車はすぐに走り去って行った。

「よし、行こうかな」

ごくりと息を呑むと、フェンスの扉を開けて敷地内へと足を踏み入れた――。


****


「へ~……広い庭だな……」

モーガン家の屋敷の庭はとても広く、綺麗に芝生が刈りこまれていた。

「こんな町中にこれだけ広い屋敷が建っているってことは……モーガン家はそうとうな名家なんだろうなぁ~」

きっと家柄だけなら、ブラッドリーがエディットの婚約者に選ばれていたのかもしれない。
そんなことを考えながら、遠くに見える屋敷を目指しながら後悔した。

どうして屋敷の扉の前まで馬車で送って貰わなかったのだろう――と。



****

 5分程歩き続け、屋敷に辿り着いた。

「ブラッドリー……。僕が尋ねて来たことを知ればどんな顔をするだろう」

恐らく歓迎されはしないだろう。もしかすると、会って貰えずに追い返されてしまうかもしれない。
その時はブラッドリーに手紙を書くつもりだ。

悪いけどブラッドリーにエディットは渡すことは出来ないと文章にしたためて、この屋敷の郵便受けに入れて置こう。
彼が読んでくれるかどうかは分からないけれど、何もしないで家に帰るよりはずっとマシだ。

そんなことを想定しながら、僕は目の前の呼び鈴を鳴らした――。
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