42 / 98
20 マスターの要求
しおりを挟む
「なる程……なかなか興味深い話ですな。それではお前さんたちは犯罪者ではないということか?」
いつしか、マスターは不敵な笑みを浮かべていた。
「ああ、そうだ。どうだ、マスター。あんたなら牢屋が何処に点在しているか知っているんだろう? なんと言ってもあんたは『ウィスタリア』地区のギルドマスターなんだからな」
エドモントの言葉に私は驚いた。まさか目の前にいるマスターが、無法地帯と化した『ウィスタリア』のギルドマスターだったなんて。
一方、目の前のマスターはじっとエドモントを凝視していたが……やがて口を開いた。
「……知っていたのか? 俺の正体を」
「ああ。だからここに来たんだ。……頼む、力を貸してくれ」
エドモントが頭を下げた。私達も彼にならって頭を下げる。
すると……
「別に助けになってもいいが……ただではなぁ……虫が良すぎるとは思わないか? ただで情報をもらおうなんてどれだけ世間知らずなんだ?」
不敵に笑うギルドマスター。
「何だって?」
すると今迄黙ってことの成り行きを見守っていたラルフが殺気走った態度になる。
「……落ち着け」
そこをジェイクが止め、ギルドマスターに視線を移した。
「何が望みだ? 金か?」
「金か……だが、今の御時世は金はあまり意味がない。実はな、最近アルコールの取締が厳しくなって、なかなか流通しなくなっているんだ。酒を作るにしても戦火の中ではなかなか難しい。……言ってる意味が分かるか?」
「つまり、俺たちに酒を手に入れて来いということか?」
ジェイクは言葉を続ける。
「ああ、そういうことだ。そうだな、樽二本分のワインで手を打とうか?」
ギルドマスターは指を二本立てると私達を見渡した――
****
「どうするんだ? ギルドマスターは俺たちにワインを持ってくるように言っているが……」
酒場を出ると、ジェイクが私達を見渡した。
「それなら大丈夫、問題はない」
エドモントが歩きながら答える。
「まさか、エドモント……」
私の言葉に彼は頷いた。
「はい、そうです。ユリアナ様。あの隠れ家にはまだワインが残されています。幸いあの隠れ家はワインを貯蔵するのに最適な温度です。早速隠れ家に戻ったら調べてみようと思うのですが……もし大丈夫であれば渡してもよろしいですか?」
エドモントが申し訳無さそうに尋ねてくる。
「ええ、私の方は構わないわ。昔の仲間達を捜し出すほうが大事だもの。ラルフもそれでいいかしら?」
私はラルフを見た。
「ええ、もちろんです。あのワインはベルンハルト家のものですから、ユリアナ様におまかせします」
「ありがとう、それでは隠れ家に戻ったらすぐに確認しましょう」
「だが、今度は運ぶとなると荷馬車が必要になるが……どうするんだ?」
ジェイクが私達に尋ねてきた。
「そうだな。ではまずは荷馬車を手に入れよう」
そして私達は荷馬車を求めて町を探索することにした――
いつしか、マスターは不敵な笑みを浮かべていた。
「ああ、そうだ。どうだ、マスター。あんたなら牢屋が何処に点在しているか知っているんだろう? なんと言ってもあんたは『ウィスタリア』地区のギルドマスターなんだからな」
エドモントの言葉に私は驚いた。まさか目の前にいるマスターが、無法地帯と化した『ウィスタリア』のギルドマスターだったなんて。
一方、目の前のマスターはじっとエドモントを凝視していたが……やがて口を開いた。
「……知っていたのか? 俺の正体を」
「ああ。だからここに来たんだ。……頼む、力を貸してくれ」
エドモントが頭を下げた。私達も彼にならって頭を下げる。
すると……
「別に助けになってもいいが……ただではなぁ……虫が良すぎるとは思わないか? ただで情報をもらおうなんてどれだけ世間知らずなんだ?」
不敵に笑うギルドマスター。
「何だって?」
すると今迄黙ってことの成り行きを見守っていたラルフが殺気走った態度になる。
「……落ち着け」
そこをジェイクが止め、ギルドマスターに視線を移した。
「何が望みだ? 金か?」
「金か……だが、今の御時世は金はあまり意味がない。実はな、最近アルコールの取締が厳しくなって、なかなか流通しなくなっているんだ。酒を作るにしても戦火の中ではなかなか難しい。……言ってる意味が分かるか?」
「つまり、俺たちに酒を手に入れて来いということか?」
ジェイクは言葉を続ける。
「ああ、そういうことだ。そうだな、樽二本分のワインで手を打とうか?」
ギルドマスターは指を二本立てると私達を見渡した――
****
「どうするんだ? ギルドマスターは俺たちにワインを持ってくるように言っているが……」
酒場を出ると、ジェイクが私達を見渡した。
「それなら大丈夫、問題はない」
エドモントが歩きながら答える。
「まさか、エドモント……」
私の言葉に彼は頷いた。
「はい、そうです。ユリアナ様。あの隠れ家にはまだワインが残されています。幸いあの隠れ家はワインを貯蔵するのに最適な温度です。早速隠れ家に戻ったら調べてみようと思うのですが……もし大丈夫であれば渡してもよろしいですか?」
エドモントが申し訳無さそうに尋ねてくる。
「ええ、私の方は構わないわ。昔の仲間達を捜し出すほうが大事だもの。ラルフもそれでいいかしら?」
私はラルフを見た。
「ええ、もちろんです。あのワインはベルンハルト家のものですから、ユリアナ様におまかせします」
「ありがとう、それでは隠れ家に戻ったらすぐに確認しましょう」
「だが、今度は運ぶとなると荷馬車が必要になるが……どうするんだ?」
ジェイクが私達に尋ねてきた。
「そうだな。ではまずは荷馬車を手に入れよう」
そして私達は荷馬車を求めて町を探索することにした――
62
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる