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第32話 夜の叫び
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「妻と息子はね、君との強引な離婚だけではなく、犯罪にも手を染めているんだよ」
義父はため息を付きながら言う。
「ええっ?!は、犯罪ですってっ?!ただでさえ私と離婚が成立していないうちからのお見合い…これだけでも十分犯罪ですよね?あ…でも実は今日、また一つデニムは犯罪を犯しましたよ」
すると私の言葉にロバートさんが何故か目をキラキラさせた。
「デニムの奴、どんな犯罪を犯したんですか?!」
「え……ひょっとしてロバートさんとデニムは知り合いですか?」
「ええ、もちろんですよ。何しろ僕はデニムとは同い年で、子供の頃から交流はありましたからね。だけどあいつは僕が平民で自分は貴族だからと言っていつもえばり散らしていました。本当に嫌な男ですよ」
ロバートさんはデニムの父親の前で平気で悪口を言っているが、義父は少しも気にしない様子で聞いている。
「それでフェリシア。デニムはどんな犯罪を犯したのだね?」
自分の息子がどのような犯罪を犯したのか、顔色一つ変えず尋ねてくる義父はかなりの大物かもしれない。
「はい、実は本日1回目のお見合いの席でデニムは見合い相手のマリア・クラウス令嬢とカードゲームで金銭を掛けていました。しかもマリア嬢は16歳です。保護者同伴でなければカジノにもいけないのに、デニムと2人きりでこの屋敷の『太陽の部屋』で賭博をしていたのです」
「ほう…そうだったのか。しかしクラウス伯爵からはそのような話は一度もでてこなかったな」
「それは当然の事ですよ。クラウス伯爵は口止めされたのですから。自分達さえ黙っていれば、バレることはないと思ったんでしょうね」
「クラウス伯爵ですか…。彼についてはあまりいい噂を聞かないですね。何でも非合法なカジノ経営に資金提供をしていると言われていますからね」
ロバートさんはすでにクラウス伯爵について調べ上げていたのか、ペラペラと書類をめくりながら言う。
「なるほど…フェリシアと離婚が成立していないうちから見合いをするデニムと、それを推し進める妻もどうかしているが、クラウス伯爵もなかなかの者だな。彼は我々に言ったのだよ。デニムが複数の女性たちと見合いをしていることをバラされたくなければ慰謝料を払ってくれと」
義父の言葉に耳を疑った。
「はぁ?!何ですかそれはっ?!」
「勿論妻とデニムは慌ててクラウス伯爵の脅しに屈して慰謝料をその場で支払ったよ。そしてもう二度と顔も見たくないからさっさと出ていってくれと彼らを部屋から追い出してしまったのだからね」
「全く…どっちもどっちですね。大人げない。クラウス伯爵も恐喝の罪を犯してるのですから」
ロバートさんは書類に新たになにか書き加えながら言う。しかし、クラウス伯爵もなかなか食えない男だ。娘が賭け事をしていたことには口を封じ、デニムの重複見合いについては恐喝をしてくるのだから。
「ところでフェリシアさん、クラウス伯爵が賭け事なんかしていないと証言してしまえばそれまでです。何か決定的な証拠でもあれば別ですが」
ロバートさんの質問に私は笑みを浮かべた。
「それならご心配なく。このお屋敷に務める使用人たちはみんな私の味方です。賭博をしていた証拠の写真も抑えていますし、彼らの交わした言葉もメモってますよ」
「素晴らしい!フェリシアさんは探偵になれそうですね!」
ロバートさんは手を叩いた。
「確かにこの屋敷の使用人たちは全員フェリシアを慕っているからね。何しろ彼らに給料を支払えるのは君の実家の援助のお陰なのだから」
「ええ。私と使用人たちの結束は硬いのです。」
「なるほどね…。しかし、本当にデニムと妻にはまいるよ。また3日後に見合いを入れているのだから」
「え?今日こんな目にあったのに、またしても見合いをするって言うんですかっ?!あの阿呆デニムはっ!!」
義父の前なのにデニムを阿呆呼ばわりしてしまった。しかし義父は少しも気にする素振りもなく言う。
「ああ、それでフェリシア…。君は一旦実家に戻ったほうが良いかもしれない」
「え…?何故ですか?」
「ああ、君から離婚届の書類が届かないことに業を煮やしたデニムが明日、君の実家に行くと言っているのだよ」
「な…何ですって~っ!!」
私は思わず叫んでいた―。
義父はため息を付きながら言う。
「ええっ?!は、犯罪ですってっ?!ただでさえ私と離婚が成立していないうちからのお見合い…これだけでも十分犯罪ですよね?あ…でも実は今日、また一つデニムは犯罪を犯しましたよ」
すると私の言葉にロバートさんが何故か目をキラキラさせた。
「デニムの奴、どんな犯罪を犯したんですか?!」
「え……ひょっとしてロバートさんとデニムは知り合いですか?」
「ええ、もちろんですよ。何しろ僕はデニムとは同い年で、子供の頃から交流はありましたからね。だけどあいつは僕が平民で自分は貴族だからと言っていつもえばり散らしていました。本当に嫌な男ですよ」
ロバートさんはデニムの父親の前で平気で悪口を言っているが、義父は少しも気にしない様子で聞いている。
「それでフェリシア。デニムはどんな犯罪を犯したのだね?」
自分の息子がどのような犯罪を犯したのか、顔色一つ変えず尋ねてくる義父はかなりの大物かもしれない。
「はい、実は本日1回目のお見合いの席でデニムは見合い相手のマリア・クラウス令嬢とカードゲームで金銭を掛けていました。しかもマリア嬢は16歳です。保護者同伴でなければカジノにもいけないのに、デニムと2人きりでこの屋敷の『太陽の部屋』で賭博をしていたのです」
「ほう…そうだったのか。しかしクラウス伯爵からはそのような話は一度もでてこなかったな」
「それは当然の事ですよ。クラウス伯爵は口止めされたのですから。自分達さえ黙っていれば、バレることはないと思ったんでしょうね」
「クラウス伯爵ですか…。彼についてはあまりいい噂を聞かないですね。何でも非合法なカジノ経営に資金提供をしていると言われていますからね」
ロバートさんはすでにクラウス伯爵について調べ上げていたのか、ペラペラと書類をめくりながら言う。
「なるほど…フェリシアと離婚が成立していないうちから見合いをするデニムと、それを推し進める妻もどうかしているが、クラウス伯爵もなかなかの者だな。彼は我々に言ったのだよ。デニムが複数の女性たちと見合いをしていることをバラされたくなければ慰謝料を払ってくれと」
義父の言葉に耳を疑った。
「はぁ?!何ですかそれはっ?!」
「勿論妻とデニムは慌ててクラウス伯爵の脅しに屈して慰謝料をその場で支払ったよ。そしてもう二度と顔も見たくないからさっさと出ていってくれと彼らを部屋から追い出してしまったのだからね」
「全く…どっちもどっちですね。大人げない。クラウス伯爵も恐喝の罪を犯してるのですから」
ロバートさんは書類に新たになにか書き加えながら言う。しかし、クラウス伯爵もなかなか食えない男だ。娘が賭け事をしていたことには口を封じ、デニムの重複見合いについては恐喝をしてくるのだから。
「ところでフェリシアさん、クラウス伯爵が賭け事なんかしていないと証言してしまえばそれまでです。何か決定的な証拠でもあれば別ですが」
ロバートさんの質問に私は笑みを浮かべた。
「それならご心配なく。このお屋敷に務める使用人たちはみんな私の味方です。賭博をしていた証拠の写真も抑えていますし、彼らの交わした言葉もメモってますよ」
「素晴らしい!フェリシアさんは探偵になれそうですね!」
ロバートさんは手を叩いた。
「確かにこの屋敷の使用人たちは全員フェリシアを慕っているからね。何しろ彼らに給料を支払えるのは君の実家の援助のお陰なのだから」
「ええ。私と使用人たちの結束は硬いのです。」
「なるほどね…。しかし、本当にデニムと妻にはまいるよ。また3日後に見合いを入れているのだから」
「え?今日こんな目にあったのに、またしても見合いをするって言うんですかっ?!あの阿呆デニムはっ!!」
義父の前なのにデニムを阿呆呼ばわりしてしまった。しかし義父は少しも気にする素振りもなく言う。
「ああ、それでフェリシア…。君は一旦実家に戻ったほうが良いかもしれない」
「え…?何故ですか?」
「ああ、君から離婚届の書類が届かないことに業を煮やしたデニムが明日、君の実家に行くと言っているのだよ」
「な…何ですって~っ!!」
私は思わず叫んでいた―。
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