命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
84 / 107

5−5 地下牢のユベール

しおりを挟む
カツーン
カツーン

 冷たい地下牢へ続く石の階段。私は足元に気をつけながら、壁に手をついて歩いていた。この王宮に地下牢がある事は王宮で暮らす人々は誰もが知っている。ただし地下牢の正確な場所を知っているのは王族と一部の人間たちのみである。そして私はこの地下牢の場所を知る数少ない人間であった。部外者の私が何故知っているのか…それは言うまでもない。11回目の死を私は地下牢で迎えたからだ。

カツーン!

 地下牢へ続く階段を最後まで下りきると、改めて身体の芯から冷え込むあまりの寒さに両肩を抱きかかえて身震いした。私が閉じ込められたのは7月。だが、今はまだ2月。この寒さは恐らく外にいる時より寒いのではないだろうか?
白い息を吐きながら私はユベールの身が心配でならなかった。この寒さでユベールは無事でいられているのだろうか?いくら騎士とは言え、人が耐えきれる寒さでは無い。

私は今リュックを背負ってこの地下牢へとやってきたのだ。中にはマフラーや手袋、毛布…思いつく限りの防寒アイテムを持ってここまで降りてきた。かなり重く、滑る階段を降りるのは怖かったが、ユベールが寒さで凍えていることを思えば、どうってことは無かった。

「ユベール様…どこですか?ユベール様…」

地下牢はとても薄暗い。天井と地下牢のないぶに松明が灯されてはあるが、ここは光が全く届かない地下牢。とてもではないが十分な明かりとは言えない。

「ユベール様…」

1つ1つ牢屋の中を覗いていく。どうしていないのだろう?ひょっとするとまだ他に地下牢があるのだろうか?

その時、かすかに声が聞こえた。

「う…」

それは何とも弱々しい声だった。

「ユベール様っ?!」

カツンカツンと足音を立てながら、慌てて声のする方へ駆けていくと、鋭い声を浴びせられた。

「誰だっ?!」

「ユベール様!私です!シルビアですっ!」

「シルビア…?シルビアなのかっ?!」

ガシャーンッ!!

鉄格子が激しく音を立てている牢屋があった。ユベールが近くにいる!

「ユベール様っ!」

叫ぶと、声が聞こえてきた。

「ここだっ!シルビアッ!」

その声は力強かった。

「ユベール様っ!」

私はユベールがいる地下牢へ駆け寄ると、彼は凍りつきそうな冷たい鉄格子を握りしめていた。彼はいつもどおりの騎士の服を着用していたが、上着は着ていない。薄暗い炎の下でも顔色が青ざめているのが見て取れた。

「ユ、ユベール様…」

鉄格子を握りしめているユベールの手に自分の手を乗せた。その手はとても冷え切っていた。私は冷え切った彼の手を包み込むように上から握りしめ、ユベールを見上げた。

「シルビア…何故、この場所を知ってるんだ?どうして…ここにやってきたんだ?」

「私が何故この地下牢の場所を知っているのか…それは…今は明かす事は出来ません。だけど…どうしてここにやってきたのかは答えることが出来ます。何故ここに着たのか?そんなの決まってるじゃないですかっ!ユベール様が心配だったからですっ!」

「シルビア…ッ!」

ユベールは驚いたように私を見た。

「ユベール様、こんな地下牢にそんな薄着では今に死んでしまいますっ!ユベール様はキリアン様を殺すはずありません!きっと何かの間違いです!私が何とかしますので、それまではどうか耐えて下さい、私色々持ってきたんですよ!」

リュックを床に置き、持参してきた毛布やマフラー、手袋を次々と取り出し、鉄格子越しにユベールに押し付けるように手渡すと言った。

「ユベール様っ!頑張って下さいっ!必ず、必ずここから出してもらえるように私がアンリ王子を説得しますからっ!」

気付けば目に涙が浮かんでいた。こんなに寒い地下牢…いくら強靭なユベールだってそう長くは持たないかも知れない…!そう思うと泣けてきた。

「!」

ユベールの目が大きく見開かれた。

「シルビア…お前、何故そこまで俺に…?」

「それは…」

カツーン
カツーン

言いかけた時、足音が近付いて来た―。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】うちの大公妃は肥満専攻です!

ariya
恋愛
ルドヴィカは一度目の人生を虚しく終える時に神に願った。  神様、私を憐れむならどうか次の生は大事な方を守れるだけの知識と力を与えてください。 そして彼女は二度目の人生を現代日本で過ごす。 内科医として充実な人生を送っていたが、不慮の事故によりあえなく命を落とす。 そして目覚めた時は一度目の生の起点となった婚約破棄の場であった。 ------------------------------------ ※突然イメージ画像が挿絵で出ることがあります。 ※ストーリー内に出しているのはなんちゃって医学です。軽く調べて、脚色を加えているので現実と異なります。調べたい方、気になる方は該当学会HPなどで調べることをおすすめします。 ※※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

婚約破棄される前に、帰らせていただきます!

パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。 普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...