87 / 107
5−8 奪われた魔石とアンリ王子の命令
しおりを挟む
ユベールがベッドに近付いてきた。もしかすると先程の会話…聞いてはいけなかったかもしれない。そう思った私はユベールが来る前にブランケットをかぶって寝たふりをすることにした。
「…」
ユベールが私のすぐ側にやってきた。
「シルビア…」
ブランケットをかぶった私にはユベールの表情が分からない。声だけで感情を読み取るしか無かった。私の名前を呼ぶその声は…どこか苦しげに聞こえた。
「すまなかった。俺のせいで…」
違う、これはユベールのせいではない。ひょっとすると…キリアンが殺されてしまったのは私のせいかもしれない。私が彼をパートナーに選んだから。彼に…魔石を預けたから。
「お前を殴ったカロン…俺が必ず仕返ししてやる。同じ目に…いや、それ以上の苦痛を味合わせてやる」
憎悪に満ちたその声にゾッとした。…どうしよう、完全に起きるタイミングを失ってしまった。
「本当に…すまなかった」
ユベールがブランケットの上から私の身体に触れてきた。起きるなら…今がチャンスかもしれない。
「う~ん…」
わざとらしかったかも知れないが私はうめき声を上げると、モゾモゾと動いた。
「シルビア?!」
ユベールの声と同時に私はゆっくりブランケットを剥がして目を擦りながらユベールを見た。…わざとらしくなかっただろうか?
「ユベール様…」
そして起き上がろうと身体を起こした途端、グラリと目が回った。
「あ…」
思わずベッドの上でよろめいた時、ユベールが支えてきた。
「シルビアッ!」
ユベールの胸に倒れ込む形になった私は慌てて言った。
「も、申し訳ありません」
そしてユベールの胸を軽く押すように離れると、改めてユベールを見た。
「無理するな。脳震盪を起こしていたんだ。まだ休んでいたほうがいい」
「はい…」
ゆっくりベッドに身を沈めると私は尋ねた。
「あの後…一体何が合ったのですか?」
すると傍らに椅子があったのか、ユベールは座ると言った。
「あの後…お前が持ってきてくれた防寒アイテムで2人で毛布にくるまって…お前が凍えないようにずっと身体をさすっていた。それから暫くしてアンリ王子がやってきて牢屋の鍵を開けてくれたんだ。アンリ王子は出掛けていて不在だった。その隙を狙った殺人事件だったんだ。俺が地下牢に閉じ込められたのをアンリ王子に伝えてくれたのがジュリエッタだったんだ。ジュリエッタのお陰で…俺達は助かったんだ」
ユベールの顔はどこか少し嬉しそうに見えた。きっと…ジュリエッタが自分の為に行動してくれたのがうれしかたのだろう。心のなかでため息を付くと私は言った。
「あの、ところでここは何処ですか?」
「ああ、ここは救護室だ」
「救護室…」
確か私の部屋は救護室の上の階だ。
「今、何時でしょうか?」
「あ、ああ。今は午後2時だ」
「2時…もうそんな時間だったのですか…」
「大丈夫か?シルビア」
ユベールは何処かソワソワしているように見える。私はピンときた。ああ…ひょっとするとジュリエッタの元へ行きたいのだろうと。先程の会話でジュリエッタがお茶の準備をしてくれているのは知っている。
「はい、私はもう大丈夫です。なので…アンリ王子とジュリエッタ様のところへ行って下さい」
「え?いいのか…」
ユベールが以外そうな顔をした。
「はい、どうぞ。私も体調が回復したら本日は部屋へ戻ります。」
「しかし…1人にすれば危険じゃ…」
「大丈夫ですよ。遠慮せずに行って下さい」
「あ、ああ…悪いな」
ユベールは立ち上がると扉へ向かった。その時、私は肝心な事を思い出した。
「ユベール様」
「何だ?」
ユベールが振り返った。
「魔石は…どうなったのでしょう?」
「それが…見つからなかったんだ」
「そうなのですか?」
「それで…アンリ王子が言ったんだ。お前にもう一度魔石探しをやり直す様に伝えるようにと命じられた」
「!」
そんな…!
「ユベール様は…どう思いますか?」
「俺は…頑張るしか無いと…思ってる」
ユベールは申し訳無さそうに言う。でも…予想通りの言葉だった。
「分かりました。明日から…頑張ります」
「ああ、そうだな。それじゃ…」
ユベールは今度こそ部屋から去って行った。
「ユベール様…」
1人になると私はポツリと呟いた―。
「…」
ユベールが私のすぐ側にやってきた。
「シルビア…」
ブランケットをかぶった私にはユベールの表情が分からない。声だけで感情を読み取るしか無かった。私の名前を呼ぶその声は…どこか苦しげに聞こえた。
「すまなかった。俺のせいで…」
違う、これはユベールのせいではない。ひょっとすると…キリアンが殺されてしまったのは私のせいかもしれない。私が彼をパートナーに選んだから。彼に…魔石を預けたから。
「お前を殴ったカロン…俺が必ず仕返ししてやる。同じ目に…いや、それ以上の苦痛を味合わせてやる」
憎悪に満ちたその声にゾッとした。…どうしよう、完全に起きるタイミングを失ってしまった。
「本当に…すまなかった」
ユベールがブランケットの上から私の身体に触れてきた。起きるなら…今がチャンスかもしれない。
「う~ん…」
わざとらしかったかも知れないが私はうめき声を上げると、モゾモゾと動いた。
「シルビア?!」
ユベールの声と同時に私はゆっくりブランケットを剥がして目を擦りながらユベールを見た。…わざとらしくなかっただろうか?
「ユベール様…」
そして起き上がろうと身体を起こした途端、グラリと目が回った。
「あ…」
思わずベッドの上でよろめいた時、ユベールが支えてきた。
「シルビアッ!」
ユベールの胸に倒れ込む形になった私は慌てて言った。
「も、申し訳ありません」
そしてユベールの胸を軽く押すように離れると、改めてユベールを見た。
「無理するな。脳震盪を起こしていたんだ。まだ休んでいたほうがいい」
「はい…」
ゆっくりベッドに身を沈めると私は尋ねた。
「あの後…一体何が合ったのですか?」
すると傍らに椅子があったのか、ユベールは座ると言った。
「あの後…お前が持ってきてくれた防寒アイテムで2人で毛布にくるまって…お前が凍えないようにずっと身体をさすっていた。それから暫くしてアンリ王子がやってきて牢屋の鍵を開けてくれたんだ。アンリ王子は出掛けていて不在だった。その隙を狙った殺人事件だったんだ。俺が地下牢に閉じ込められたのをアンリ王子に伝えてくれたのがジュリエッタだったんだ。ジュリエッタのお陰で…俺達は助かったんだ」
ユベールの顔はどこか少し嬉しそうに見えた。きっと…ジュリエッタが自分の為に行動してくれたのがうれしかたのだろう。心のなかでため息を付くと私は言った。
「あの、ところでここは何処ですか?」
「ああ、ここは救護室だ」
「救護室…」
確か私の部屋は救護室の上の階だ。
「今、何時でしょうか?」
「あ、ああ。今は午後2時だ」
「2時…もうそんな時間だったのですか…」
「大丈夫か?シルビア」
ユベールは何処かソワソワしているように見える。私はピンときた。ああ…ひょっとするとジュリエッタの元へ行きたいのだろうと。先程の会話でジュリエッタがお茶の準備をしてくれているのは知っている。
「はい、私はもう大丈夫です。なので…アンリ王子とジュリエッタ様のところへ行って下さい」
「え?いいのか…」
ユベールが以外そうな顔をした。
「はい、どうぞ。私も体調が回復したら本日は部屋へ戻ります。」
「しかし…1人にすれば危険じゃ…」
「大丈夫ですよ。遠慮せずに行って下さい」
「あ、ああ…悪いな」
ユベールは立ち上がると扉へ向かった。その時、私は肝心な事を思い出した。
「ユベール様」
「何だ?」
ユベールが振り返った。
「魔石は…どうなったのでしょう?」
「それが…見つからなかったんだ」
「そうなのですか?」
「それで…アンリ王子が言ったんだ。お前にもう一度魔石探しをやり直す様に伝えるようにと命じられた」
「!」
そんな…!
「ユベール様は…どう思いますか?」
「俺は…頑張るしか無いと…思ってる」
ユベールは申し訳無さそうに言う。でも…予想通りの言葉だった。
「分かりました。明日から…頑張ります」
「ああ、そうだな。それじゃ…」
ユベールは今度こそ部屋から去って行った。
「ユベール様…」
1人になると私はポツリと呟いた―。
10
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】うちの大公妃は肥満専攻です!
ariya
恋愛
ルドヴィカは一度目の人生を虚しく終える時に神に願った。
神様、私を憐れむならどうか次の生は大事な方を守れるだけの知識と力を与えてください。
そして彼女は二度目の人生を現代日本で過ごす。
内科医として充実な人生を送っていたが、不慮の事故によりあえなく命を落とす。
そして目覚めた時は一度目の生の起点となった婚約破棄の場であった。
------------------------------------
※突然イメージ画像が挿絵で出ることがあります。
※ストーリー内に出しているのはなんちゃって医学です。軽く調べて、脚色を加えているので現実と異なります。調べたい方、気になる方は該当学会HPなどで調べることをおすすめします。
※※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています
婚約破棄される前に、帰らせていただきます!
パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。
普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る
黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。
(ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)
結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤
凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。
幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。
でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです!
ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる