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2章4 嫌がらせ
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その日――
いつものように登校してくると、教室に入る直前に背後から声をかけられた。
「ユニス、おはよう」
その声は……。
振り向くと、思った通りに声の主はリオンだった。
「あら、リオンじゃない。おはよう、朝会うなんて珍しいわね。どうかしたの?」
リオンのいるSSクラスは校舎こそ同じではあったが、私のいる教室とずっと離れている。
その為、入口も別々だったのだ。
リオンが一歩私に近づき、気がついた。今までは私と同じ背丈だったリオン。それが久々に間近で見る彼は、いつのまにか私よりも頭一つ分位背が伸びていた。
「実はユニスに用事があって待っていたんだよ」
「そうなの? 私に用事って何?」
リオンを見上げながら尋ねる。
「うん。あのさ、今日の放課後時間取れるかな? 大事な話があるんだ」
「大事な話? いいわよ」
「ありがとう。それじゃ、放課後中庭で待ち合わせしよう。いいよね?」
「分かったわ、放課後中庭ね」
「良かった、それじゃまた放課後会おう」
リオンは笑顔で手を振ると、自分の教室へ駆けていった。
その後姿をみつめながら、大事な話というのは何かを考えてみた。
何だろう? そう言えば、来月はリオンの12歳の誕生日を迎える日だ。そのことだろうか?
ゲーム中では、この日リオンの運命が大きく変わることになる。
魔力が暴走して屋敷が火事になり、リオンを助けようとした父親が巻き込まれて亡くなってしまう。
まだ、リオンの魔力の暴走を止める手段は見つかっていない。
私は魔法も使えない無力な存在だけど、リオンを救う為には体を張ってでも何とかしないと……。
そのとき。
ドンッ!!
いきなり、背後から背中を強く押された。
「え? キャアッ!」
思わず勢いで廊下に倒れ込んでしまった。
「痛……」
一瞬何が起こったか分からなかった。驚いて見上げると、見たことのない2人の女子生徒が私を見下ろしている。
「何よ、ちょっとぶつかっただけで大げさに転んだりして」
「本当ね。感じ悪いわ」
その様子でピンときた。この2人は恐らくリオンのクラスメイトで、彼に想いを寄せているのだろう。
「それが人にぶつかって転ばせておきながら、言う台詞なの?」
ため息をついて、立ち上がった。
「何ですって?」
「そんなところにボサッと突っ立っているからでしょう?」
「普通、こういう場合は謝るべきでしょう? 転ばせてごめんなさいって」
すると、2人の顔つきが変わった。
「な、何よ! 頭も良くなくて地味女のくせに!」
「そうよ! それなのにリオン様の婚約者なんて、許されないわ!」
やはり、リオンが絡んでいたのだ。
周囲ではクラスメイト達が何事かと、遠巻きに見ている。けれど、相手がSSクラスだからだろう。
誰一人、止めに入ろうとしない……というか、出来ないでいた。
それほど、SSクラスの生徒たちは特別扱いされていたのだ。
「リオンとの婚約は私が決めたことじゃないわ。親同士が決めたのだから」
「そんなことくらい、分かるわよ。そうじゃなければ、あんたみたいな底辺女がリオン様の婚約者になれるはずないもの」
「本当にリオン様はお気の毒だわ。こんな相手が婚約者なのだから」
先程から2人は言いたいことを言ってくれる。
だけどクラスメイトたちの前で、今の台詞は許せなかった。何故なら、その台詞は私だけでなくクラス全員を馬鹿にしているようなものだから。
「おあいにくさま、私はリオンの御両親に気に入られるているから何を言われても平気よ」
「な、何ですって!」
「図々しい!」
2人が怒りで顔を赤く染めた時――
「皆さん! 何をしているのです? 授業が始まるチャイムはとっくに鳴り終わっているのですよ!」
私達のクラスの担任の先生が現れた。
「ほら、皆! 教室に入りなさい! それにあなた達はSSクラスでしょう? 早く自分たちの教室に戻りなさい!」
すると……。
「ふん! リオン様を困らせているくせに!」
そのうちの1人が去り際に気になる言葉を投げつけると、背を向けて2人は走り去って行った――
いつものように登校してくると、教室に入る直前に背後から声をかけられた。
「ユニス、おはよう」
その声は……。
振り向くと、思った通りに声の主はリオンだった。
「あら、リオンじゃない。おはよう、朝会うなんて珍しいわね。どうかしたの?」
リオンのいるSSクラスは校舎こそ同じではあったが、私のいる教室とずっと離れている。
その為、入口も別々だったのだ。
リオンが一歩私に近づき、気がついた。今までは私と同じ背丈だったリオン。それが久々に間近で見る彼は、いつのまにか私よりも頭一つ分位背が伸びていた。
「実はユニスに用事があって待っていたんだよ」
「そうなの? 私に用事って何?」
リオンを見上げながら尋ねる。
「うん。あのさ、今日の放課後時間取れるかな? 大事な話があるんだ」
「大事な話? いいわよ」
「ありがとう。それじゃ、放課後中庭で待ち合わせしよう。いいよね?」
「分かったわ、放課後中庭ね」
「良かった、それじゃまた放課後会おう」
リオンは笑顔で手を振ると、自分の教室へ駆けていった。
その後姿をみつめながら、大事な話というのは何かを考えてみた。
何だろう? そう言えば、来月はリオンの12歳の誕生日を迎える日だ。そのことだろうか?
ゲーム中では、この日リオンの運命が大きく変わることになる。
魔力が暴走して屋敷が火事になり、リオンを助けようとした父親が巻き込まれて亡くなってしまう。
まだ、リオンの魔力の暴走を止める手段は見つかっていない。
私は魔法も使えない無力な存在だけど、リオンを救う為には体を張ってでも何とかしないと……。
そのとき。
ドンッ!!
いきなり、背後から背中を強く押された。
「え? キャアッ!」
思わず勢いで廊下に倒れ込んでしまった。
「痛……」
一瞬何が起こったか分からなかった。驚いて見上げると、見たことのない2人の女子生徒が私を見下ろしている。
「何よ、ちょっとぶつかっただけで大げさに転んだりして」
「本当ね。感じ悪いわ」
その様子でピンときた。この2人は恐らくリオンのクラスメイトで、彼に想いを寄せているのだろう。
「それが人にぶつかって転ばせておきながら、言う台詞なの?」
ため息をついて、立ち上がった。
「何ですって?」
「そんなところにボサッと突っ立っているからでしょう?」
「普通、こういう場合は謝るべきでしょう? 転ばせてごめんなさいって」
すると、2人の顔つきが変わった。
「な、何よ! 頭も良くなくて地味女のくせに!」
「そうよ! それなのにリオン様の婚約者なんて、許されないわ!」
やはり、リオンが絡んでいたのだ。
周囲ではクラスメイト達が何事かと、遠巻きに見ている。けれど、相手がSSクラスだからだろう。
誰一人、止めに入ろうとしない……というか、出来ないでいた。
それほど、SSクラスの生徒たちは特別扱いされていたのだ。
「リオンとの婚約は私が決めたことじゃないわ。親同士が決めたのだから」
「そんなことくらい、分かるわよ。そうじゃなければ、あんたみたいな底辺女がリオン様の婚約者になれるはずないもの」
「本当にリオン様はお気の毒だわ。こんな相手が婚約者なのだから」
先程から2人は言いたいことを言ってくれる。
だけどクラスメイトたちの前で、今の台詞は許せなかった。何故なら、その台詞は私だけでなくクラス全員を馬鹿にしているようなものだから。
「おあいにくさま、私はリオンの御両親に気に入られるているから何を言われても平気よ」
「な、何ですって!」
「図々しい!」
2人が怒りで顔を赤く染めた時――
「皆さん! 何をしているのです? 授業が始まるチャイムはとっくに鳴り終わっているのですよ!」
私達のクラスの担任の先生が現れた。
「ほら、皆! 教室に入りなさい! それにあなた達はSSクラスでしょう? 早く自分たちの教室に戻りなさい!」
すると……。
「ふん! リオン様を困らせているくせに!」
そのうちの1人が去り際に気になる言葉を投げつけると、背を向けて2人は走り去って行った――
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