55 / 108
3章6 初めての出会い
しおりを挟む
降りてきた2人を見て、息が止まりそうなほど驚いた。何故なら2人はゲームに出てくる残りのメインヒーロー達だったからだ。
「おはようございます、先生」
ダークシルバーの髪にグレーの瞳の青年はセシル・オドラン。彼は精霊使いで、様々な魔法を使うことができた。
「おはようございます」
少しぶっきらぼうに挨拶をする、黒髪に青い瞳の彼はフレッド・バイロン。数少ない召喚魔法を扱うことが出来る青年だ。
どうして、この2人が……?
戸惑っていると、背後にいた兄が私の両肩に手を置いた。
「紹介しよう。彼女が今日から君たちが監視する対象者のユニス・ウェルナー。そして今はクラリス・レナーの名前を名乗り、表向きは私の妹ということになっている」
「え?」
私はその言葉に驚き、兄を振り返った。まさかこの2人に私の素性を明かすとは思わなかった。
「! そうか、君が禁忌魔法を使ったのか……」
セシルが驚いた様子で私を見つめた。
「なるほど。だから魔術協会の監視下に置かれることになったのか。俺達と同じだな」
「え? 同じ……?」
フレッドの言葉に耳を疑う。
「とりあえず、話の続きは馬車の中でしよう。入学式に遅れるといけないからな」
兄に促され、私達は馬車に乗り込んだ――
****
「それで先程の話の続きですけど、セシルさんとフレッドさんも魔術協会の監視下に置かれていると言ってましたけど……どういうことですか? 私のように禁忌の魔法を使ったからですか?」
馬車が動き始めると、私は早速隣に座った兄に尋ねた。
「俺は禁忌の魔法なんか使ったことはない。あんたと一緒にしないでくれ」
フレッドは心外だと言わんばかりの口調で私をジロリと見た。
あぁ……この顔はゲーム内で何度も見た。彼は一番好感度が上がりにくく、ゲーム開始時は何かとクラリスに冷たい態度をとっていたことを思い出す。
けれど好感度が一定より上がれば、まるで手の平を返したかのようにクラリスに甘くなるのだ。
「そんな言い方はよせよ、フレッド。ごめんね。口は悪いけど、コイツ本当はいい奴だから」
セシルが笑顔で話しかけてくる。人当たりの良い彼は、この世界でも変わらないようだ。
「はい、大丈夫です。気にしていませんから」
「クラリス。彼らは君と同様特殊な魔法を使うことが出来る重要人物として、魔術協会に所属しているんだよ。別に何も監視しているわけじゃないさ」
兄が苦笑しながら説明してくれた。
「だけど、監視されているようなものじゃないか。定期的に日々の生活について報告しなければいけないし、魔術協会に足を運ばなければならない義務だってある。おまけに、大学だって進学先を決められてしまったしな」
フレッドは余程気に入らないのだろう。ふてくされた態度で窓の外を見つめた。
「そうかな? 俺は『ニルヴァーナ』大学に入学できて良かったと思っているよ。何しろ、こんなに綺麗な子と知り合いになれたんだから。これからよろしく」
セシルが私に握手を求めるように手を伸ばしてきたので、握手に応じようとした矢先。
「おっと、兄の前で妹に手を出すのはやめてくれるかな?」
兄がセシルの腕を笑顔で掴んだ。
「そ、そんな。手を出すなんて、大げさな。挨拶の握手をしようと思っただけですよ?」
「別に言葉で挨拶を交わしたから握手までは必要ないだろう?」
相変わらず笑顔の兄に、セシルは苦笑した。
「分かりましたよ。もうこんな真似はしないので、手を離して下さい」
「うん。分かればいい」
兄は頷くと、再び説明を始めた。
「クラリス。彼らは君と同じクラスに配属される。2人には君の事情を説明してあるから何か困ったことがあれば彼らを頼るといい。……分かったね?」
「はい」
兄の言葉に有無を言わさない圧を感じる。
言葉の裏には、2人の監視の目を抜けるような真似はしないようにと言われているようにも感じる。
「後、これだけは言っておくよ。あの大学には、君の知っている人たちも大勢いることだろう。だが、絶対誰にも自分がユニス・ウェルナーだということを知られてはいけない。分かったね? 特にリオン・ハイランドにはね。君が時を止める魔法を使った時、彼は直ぐ側にいた。君の魔力に触れているということは、本能的に記憶している可能性がある。だから不用意にリオンには接触しないように。いいね?」
この話は既に何度も聞かされていたが、再び念押しされてしまった。
けれど、私の返事は決まっている。
「はい、もちろんです。私はリオンに自分のことを明かすつもりはありませんし、彼には関わるつもりは一切ありません」
だってリオンは私と関われば、不幸になるに違いないから――
「おはようございます、先生」
ダークシルバーの髪にグレーの瞳の青年はセシル・オドラン。彼は精霊使いで、様々な魔法を使うことができた。
「おはようございます」
少しぶっきらぼうに挨拶をする、黒髪に青い瞳の彼はフレッド・バイロン。数少ない召喚魔法を扱うことが出来る青年だ。
どうして、この2人が……?
戸惑っていると、背後にいた兄が私の両肩に手を置いた。
「紹介しよう。彼女が今日から君たちが監視する対象者のユニス・ウェルナー。そして今はクラリス・レナーの名前を名乗り、表向きは私の妹ということになっている」
「え?」
私はその言葉に驚き、兄を振り返った。まさかこの2人に私の素性を明かすとは思わなかった。
「! そうか、君が禁忌魔法を使ったのか……」
セシルが驚いた様子で私を見つめた。
「なるほど。だから魔術協会の監視下に置かれることになったのか。俺達と同じだな」
「え? 同じ……?」
フレッドの言葉に耳を疑う。
「とりあえず、話の続きは馬車の中でしよう。入学式に遅れるといけないからな」
兄に促され、私達は馬車に乗り込んだ――
****
「それで先程の話の続きですけど、セシルさんとフレッドさんも魔術協会の監視下に置かれていると言ってましたけど……どういうことですか? 私のように禁忌の魔法を使ったからですか?」
馬車が動き始めると、私は早速隣に座った兄に尋ねた。
「俺は禁忌の魔法なんか使ったことはない。あんたと一緒にしないでくれ」
フレッドは心外だと言わんばかりの口調で私をジロリと見た。
あぁ……この顔はゲーム内で何度も見た。彼は一番好感度が上がりにくく、ゲーム開始時は何かとクラリスに冷たい態度をとっていたことを思い出す。
けれど好感度が一定より上がれば、まるで手の平を返したかのようにクラリスに甘くなるのだ。
「そんな言い方はよせよ、フレッド。ごめんね。口は悪いけど、コイツ本当はいい奴だから」
セシルが笑顔で話しかけてくる。人当たりの良い彼は、この世界でも変わらないようだ。
「はい、大丈夫です。気にしていませんから」
「クラリス。彼らは君と同様特殊な魔法を使うことが出来る重要人物として、魔術協会に所属しているんだよ。別に何も監視しているわけじゃないさ」
兄が苦笑しながら説明してくれた。
「だけど、監視されているようなものじゃないか。定期的に日々の生活について報告しなければいけないし、魔術協会に足を運ばなければならない義務だってある。おまけに、大学だって進学先を決められてしまったしな」
フレッドは余程気に入らないのだろう。ふてくされた態度で窓の外を見つめた。
「そうかな? 俺は『ニルヴァーナ』大学に入学できて良かったと思っているよ。何しろ、こんなに綺麗な子と知り合いになれたんだから。これからよろしく」
セシルが私に握手を求めるように手を伸ばしてきたので、握手に応じようとした矢先。
「おっと、兄の前で妹に手を出すのはやめてくれるかな?」
兄がセシルの腕を笑顔で掴んだ。
「そ、そんな。手を出すなんて、大げさな。挨拶の握手をしようと思っただけですよ?」
「別に言葉で挨拶を交わしたから握手までは必要ないだろう?」
相変わらず笑顔の兄に、セシルは苦笑した。
「分かりましたよ。もうこんな真似はしないので、手を離して下さい」
「うん。分かればいい」
兄は頷くと、再び説明を始めた。
「クラリス。彼らは君と同じクラスに配属される。2人には君の事情を説明してあるから何か困ったことがあれば彼らを頼るといい。……分かったね?」
「はい」
兄の言葉に有無を言わさない圧を感じる。
言葉の裏には、2人の監視の目を抜けるような真似はしないようにと言われているようにも感じる。
「後、これだけは言っておくよ。あの大学には、君の知っている人たちも大勢いることだろう。だが、絶対誰にも自分がユニス・ウェルナーだということを知られてはいけない。分かったね? 特にリオン・ハイランドにはね。君が時を止める魔法を使った時、彼は直ぐ側にいた。君の魔力に触れているということは、本能的に記憶している可能性がある。だから不用意にリオンには接触しないように。いいね?」
この話は既に何度も聞かされていたが、再び念押しされてしまった。
けれど、私の返事は決まっている。
「はい、もちろんです。私はリオンに自分のことを明かすつもりはありませんし、彼には関わるつもりは一切ありません」
だってリオンは私と関われば、不幸になるに違いないから――
1,904
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】女嫌いの公爵様に嫁いだら前妻の幼子と家族になりました
香坂 凛音
恋愛
ここはステイプルドン王国。
エッジ男爵家は領民に寄り添う堅実で温かな一族であり、家族仲も良好でした。長女ジャネットは、貴族学園を優秀な成績で卒業し、妹や弟の面倒も見る、評判のよい令嬢です。
一方、アンドレアス・キーリー公爵は、深紅の髪と瞳を持つ美貌の騎士団長。
火属性の魔法を自在に操り、かつて四万の敵をひとりで蹴散らした伝説の英雄です。
しかし、女性に心を閉ざしており、一度は結婚したものの離婚した過去を持ちます。
そんな彼が、翌年に控える隣国マルケイヒー帝国の皇帝夫妻の公式訪問に備え、「形式だけでいいから再婚せよ」と王に命じられました。
選ばれたのは、令嬢ジャネット。ジャネットは初夜に冷たい言葉を突きつけられます。
「君を妻として愛するつもりはない」
「跡継ぎなら、すでにいる。……だから子供も必要ない」
これは、そんなお飾りの妻として迎えられたジャネットが、前妻の子を真心から愛し、公爵とも次第に心を通わせていく、波乱と愛の物語です。
前妻による陰湿な嫌がらせ、職人養成学校の設立、魔導圧縮バッグの開発など、ジャネットの有能さが光る場面も見どころ。
さらに、伝説の子竜の登場や、聖女を利用した愚王の陰謀など、ファンタジー要素も盛りだくさん。前向きな有能令嬢の恋の物語です。最後には心あたたまるハッピーエンドが待っています。
※こちらの作品は、カクヨム・小説家になろうでは「青空一夏」名義で投稿しております。
アルファポリスでは作風を分けるため、別アカウントを使用しています。
本作は「ほのぼの中心+きつすぎないざまぁ」で構成されています。
スカッとする場面だけでなく、読み終わったあとに幸福感が残る物語です。
ちょっぴり痛快、でも優しい読後感を大切にしています。
※カクヨム恋愛ランキング11位(6/24時点)
全54話、完結保証つき。
毎日4話更新:朝7:00/昼12:00/夕17:00/夜20:00→3回更新に変えました。
どうぞ、最後までお付き合いくださいませ。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。
それでもフランソアは
“僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ”
というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。
そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。
聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。
父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。
聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる