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5章 10 監禁、そして罰
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私がロザリンによって囚われて、5日が経過していた――
――午前7時
私は窓から外の景色を眺めていた。この部屋はテラスもない、高い場所にあった。
「今日で5日目……皆はどうしているのかしら……」
きっと、心配しているに違いない。真っ先に浮かんだのはエイダの顔だった。
「エイダ……」
ポツリと呟いたとき。
ガチャガチャと鍵が開けられる音が聞こえて、ロザリンが部屋に現れた。
「ほら、食事よ。この私自らが届けているのだから、ありがたく食べることね」
ワゴンを押しながらロザリンは部屋に入ってくると、私を睨みつけてきた。
もうロザリンは私の前でもヴェールを被ることはしなくなっていた。朝日の下で見るロザリンの顔は……未だになれない。
「あ、ありがとう……」
ゾッとする気持ちを押さえてお礼を述べると、ロザリンがワゴンから手を離してズカズカと近づいてきた。
「お礼を言う前に、まずは私の火傷の傷をを治すことが先でしょう! 一体いつになったら私の怪我を治せるのよ!」
ロザリンの右手には短鞭が握りしめられている。
「そ、そんな事を言われても……まだ無理なのよ……」
ユニスとして生きていた頃は、全く魔法を使うことが出来なかった。そして突然発動した禁忌魔法で私は6年間も眠りに就いてしまった。
魔術の勉強をろくに受けていない私に、治癒魔法が使えるはずもない。
現に、ロザリンに命じられて傷跡を治そうと何度も試みたが……一向に治癒魔法を使うことが出来ずにいた。
私の言葉がロザリンの逆鱗に触れたのだろう。
「嘘言うんじゃないわよ! この役立たずが!」
ロザリンが右腕を振り上げた。
鞭打たれる!
思わず目を閉じたとき。
「やめるんだ!! ロザリン!」
突如、リオンの声が部屋に響いた。
顔を上げると、息を切らせたリオンがこちらへ向ってきた。
「何よ! 邪魔する気!?」
「ロザリン! クラリスに手を出すな!! いくら光の属性だからといって、誰もが治癒魔法を使えるわけではないだろう!?」
そしてロザリンの腕を掴むリオン。
「離しなさいよ!! リオンッ! また指輪で苦しめられたいの!?」
「それでも構わない! 罰を与えるなら俺にしろ! 彼女を傷つけるな!」
「な、何よ……だったら、お望み通りリオンに罰を与えてやるわ!」
リオンに罰を与える……!?
「やめて! ロザリンッ!」
止めようとするも、リオンは首を振る。
「いいんだ。ロザリン、君の気が済むまでやればいい」
「! またその女をかばうのね……! だったら覚悟しなさい!」
ロザリンは叫ぶと、短鞭をリオンに振り下ろした――
****
「う……」
床の上に、ボロボロになったリオンが倒れていた。彼の服はところどころ裂け、白いシャツにはあちこちに血が滲んでいる。
ロザリンはリオンが倒れて動けなくなるまで鞭打つと、そのまま部屋を出て行ってしまったのだ。
「リオン……大丈夫? しっかりして……」
倒れているリオンに声をかけるも、返事がない。
「リオン……」
意識の無いリオンに呼びかける。
これだ。このことが理由で私は屋敷を逃げることが出来ずにいたのだ。
この部屋の鍵はロザリンが手にしている。
私は時を止める禁忌魔法を使うことが出来る。いざとなれば、この魔法を使ってロザリンから鍵を奪って逃げることが出来た。
けれどロザリンから忠告されていた。
もしここから逃げたら、代わりにリオンを痛めつけると。ロザリンには私がリオンを気にかけていることがバレているのだ。
リオンは、すでに何度も私の身代わりで罰を与えられている。もうこれ以上、わたしの眼の前で彼が傷つけられるのを見るのは限界だった。
「ごめんなさい……リオン……」
気を失っているリオンの身体にそっと触れた――
――午前7時
私は窓から外の景色を眺めていた。この部屋はテラスもない、高い場所にあった。
「今日で5日目……皆はどうしているのかしら……」
きっと、心配しているに違いない。真っ先に浮かんだのはエイダの顔だった。
「エイダ……」
ポツリと呟いたとき。
ガチャガチャと鍵が開けられる音が聞こえて、ロザリンが部屋に現れた。
「ほら、食事よ。この私自らが届けているのだから、ありがたく食べることね」
ワゴンを押しながらロザリンは部屋に入ってくると、私を睨みつけてきた。
もうロザリンは私の前でもヴェールを被ることはしなくなっていた。朝日の下で見るロザリンの顔は……未だになれない。
「あ、ありがとう……」
ゾッとする気持ちを押さえてお礼を述べると、ロザリンがワゴンから手を離してズカズカと近づいてきた。
「お礼を言う前に、まずは私の火傷の傷をを治すことが先でしょう! 一体いつになったら私の怪我を治せるのよ!」
ロザリンの右手には短鞭が握りしめられている。
「そ、そんな事を言われても……まだ無理なのよ……」
ユニスとして生きていた頃は、全く魔法を使うことが出来なかった。そして突然発動した禁忌魔法で私は6年間も眠りに就いてしまった。
魔術の勉強をろくに受けていない私に、治癒魔法が使えるはずもない。
現に、ロザリンに命じられて傷跡を治そうと何度も試みたが……一向に治癒魔法を使うことが出来ずにいた。
私の言葉がロザリンの逆鱗に触れたのだろう。
「嘘言うんじゃないわよ! この役立たずが!」
ロザリンが右腕を振り上げた。
鞭打たれる!
思わず目を閉じたとき。
「やめるんだ!! ロザリン!」
突如、リオンの声が部屋に響いた。
顔を上げると、息を切らせたリオンがこちらへ向ってきた。
「何よ! 邪魔する気!?」
「ロザリン! クラリスに手を出すな!! いくら光の属性だからといって、誰もが治癒魔法を使えるわけではないだろう!?」
そしてロザリンの腕を掴むリオン。
「離しなさいよ!! リオンッ! また指輪で苦しめられたいの!?」
「それでも構わない! 罰を与えるなら俺にしろ! 彼女を傷つけるな!」
「な、何よ……だったら、お望み通りリオンに罰を与えてやるわ!」
リオンに罰を与える……!?
「やめて! ロザリンッ!」
止めようとするも、リオンは首を振る。
「いいんだ。ロザリン、君の気が済むまでやればいい」
「! またその女をかばうのね……! だったら覚悟しなさい!」
ロザリンは叫ぶと、短鞭をリオンに振り下ろした――
****
「う……」
床の上に、ボロボロになったリオンが倒れていた。彼の服はところどころ裂け、白いシャツにはあちこちに血が滲んでいる。
ロザリンはリオンが倒れて動けなくなるまで鞭打つと、そのまま部屋を出て行ってしまったのだ。
「リオン……大丈夫? しっかりして……」
倒れているリオンに声をかけるも、返事がない。
「リオン……」
意識の無いリオンに呼びかける。
これだ。このことが理由で私は屋敷を逃げることが出来ずにいたのだ。
この部屋の鍵はロザリンが手にしている。
私は時を止める禁忌魔法を使うことが出来る。いざとなれば、この魔法を使ってロザリンから鍵を奪って逃げることが出来た。
けれどロザリンから忠告されていた。
もしここから逃げたら、代わりにリオンを痛めつけると。ロザリンには私がリオンを気にかけていることがバレているのだ。
リオンは、すでに何度も私の身代わりで罰を与えられている。もうこれ以上、わたしの眼の前で彼が傷つけられるのを見るのは限界だった。
「ごめんなさい……リオン……」
気を失っているリオンの身体にそっと触れた――
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