お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第16話 仏の顔も3度まで…

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 私の家族が応接室からいなくなると伯爵がニコラスに言った。

「全く…何故あのような失礼な態度を取るのだ?あれ程ここへ来る前に言い聞かせただろう?!」

「そうよ、お前は馬鹿なのだから黙って親の言う事を聞きなさいっ!」

私は我が耳を疑った。夫人はいつも上品で物静かな女性だと思っていたのに、まさか自分の息子を馬鹿呼ばわりするなんて…。

「ああ、そうだ。良いか?ベルモンド子爵はああ見えて実は物凄い人物なのだぞ?元々はただの騎士の出身だが手柄を立てて、国王から子爵家の爵位を授かった人物だ。ベルモンド夫人もかなりの資産を持つ子爵家の女性、そして長男のカミーユはアカデミーを主席で卒業、そしてアンジェラだって学年1頭が良い娘だろう?良いか?お前の様な馬鹿には到底不釣り合いな位の縁組なんだ。お前とアンジェラを許婚にするのに、どれだけ大変だったかお前には分からんのかっ!」

伯爵は顔を真っ赤にしてニコラスに怒鳴りつける。

「うるさいっ!俺を馬鹿呼ばわりするなっ!俺が馬鹿なら俺という人間をこの世に送り出した親達だって馬鹿親だっ!」

あろうことか、この親子3人は我が家の応接室で親子喧嘩を始めてしまった。

「何て人達なの…」

私は半ば呆れた様子で眺めていると…。

「ははぁ~ん…成程…」

すぐ側で父の声が聞こえた。

「え?!お父様っ?!」

慌てて振り向くと背後にはいつの間にか、父ならず母も兄もマジックミラーからコンラート親子の喧嘩を眺めていたのだ。

「い、いつの間に…」

すると父が言った。

「成程…。何故伯爵がアンジェラを是非息子の婚約者にと粘って来たのか理由が分かったよ」

「でもこれで納得したわ。ニコラス様は両親から常に馬鹿呼ばわりされていたから、賢いアンジェラに強く当たっていたのね」

母が頷く。

「確かにニコラスは本当に馬鹿だったよ。家庭教師を頼まれて教えていたけれども彼ほどの馬鹿は見たことが無かったよ。入学試験に合格させるのにどれほど苦労したことか…こんな事なら、もっと授業料を釣り上げとけば良かったかな」

兄は腕組みしながら言う。

「お父様、お母様…それにお兄様まで…。まさにその通りだわ。それで…いつまであの親子を放置しておくつもりですか?このままではますますエスカレートしていくばかりですけど?」

「うむ…確かにそうだな。頃合いを見て出てもいいが…アンジェラ、お前はどうしたい?」

「そうですね…」

わたしはニコラスの様子を見た。彼は今両親から馬鹿だのクズだのと呼ばれて叱責されている。

「…こうしてみると何だかニコラス様が少し哀れに感じます。あれでは虐待に近いのでは無いでしょうか?」

「そのようだな。多少気の毒な境遇とも言える」

「それならアンジェラ。彼を気の毒に思って、このままずっと我慢していけるのかい?」

兄が尋ねてきた。

「いえ、無理ですね」

私はきっぱり答える。

「まぁ!てっきりニコラス様に同情してこのまま結婚するのかと思ったわ」

母が驚いたように目を見開く。

「ええ、本来ならそうかも知れませんが…でも虐待は負の連鎖を引き起こします。親から虐待されて育った者は生まれてきた我が子を同じ目に遭わせかねません。私は我が子をそのような目に遭わせたくありません」

「「「なるほど」」」

父、母、兄が声を揃える。

「ですが、このままあっさり切り捨てるのも気の毒といえば気の毒です。ニコラス様がああなってしまったのはそもそも両親の歪んだ教育のせいだと思うのです」

「まぁ、確かにそうと言えるかもしれないが…ではどうするのだ?」

父が尋ねてきた。

「はい、東の国では【仏の顔も3度まで】と言うことわざがあります。なので後3回だけ、今後私に対するニコラスの態度を許そうと思います。けれど4度目…私の我慢の限界を超えた場合は此方から婚約破棄を申し出る許可を取らせて下さい」

「え…貴女は本当にそれでいいの?」

「はい、お母様」

私は頷く。

「まぁ…アンジェラが自分で決めたことなら僕は何も言えないが…」

「よし、分かった。ではその様にしよう。しかし、本当にお前はよく出来た娘だな。私も鼻が高いよ」

父は私を見ると言った。

「ありがとうございます」

しかし、家族は私の本意を知らないだろう。あのニコラスの事。絶対にまた同じことを繰り返すに決まっている。私はただ自分から堂々とニコラスに公衆の面前でで婚約破棄を告げてやりたいのだ。仮にニコラスが心を入れ替えればそれはそれで婚約関係を続けても構わない。

どちらにしろ、もう私はニコラスにもパメラにも、そして2人の取り巻きたちにもうんざりしているのだから。

「よし、それでは…応接室へ行くとするか」

「はい、お父様」

父の言葉に私は返事をした―。







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