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第80話 懐かしい気持ち
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「あの…こんな話をして、変な人物だと思われてしまうかもしれませんが…アンジェラさんを初めてみた時も、あのお店に並んでいる商品を見た時も…すごく懐かしい気がしたのです。自分でも何故か分かりませんが…。それでもっと貴女の事を知りたくなって…貴女に興味が湧いてしまって…図々しくもニコラスの代わりになれないかと思ったんです…」
デリクさんの顔は耳まで真っ赤になっていた。その姿は前世の恋人だった彼を思い出させる。彼も自分の感情を隠す事が下手な人だった。ちょっとしたことですぐに顔を真っ赤にさせるような…そんな不器用な恋人だった。
「デリクさん。実は私もなんです…」
デリクさんが自分の気持ちを語ってくれたのだから私も思っていることを話そう。
「アンジェラさん…」
「私もデリクさんを見た時に懐かしい気持ちになりました。だから…嬉しかったです」
笑みを浮かべてデリクさんを見上げた。
「アンジェラ…」
「え?」
「アンジェラって呼んでも…いい?話し方も…もっと親しげに…したいんだけど…」
「はい。その方がいいです」
「良かった。それじゃ…僕は正式な君の婚約者になれたと…思ってもいいのかな?」
婚約者…その言葉に思わず顔が赤くなる。
「は、はい。勿論です…」
「良かった…。これから宜しく。アンジェラ」
デリクさんが右手を差し出してきた。握手を求めてきているのだろうか?
そこで私もデリクさんに右手を差し出すと、突然握りしめられて引き寄せられた。
え…?
気付けばデリクさんに額にキスされていた。それはほんの一瞬の出来事だった。
「おやすみ、アンジェラ」
「あ、お・お・おやすみなさい…」
顔が熱くなっていた。きっと自分の顔は真っ赤になっていただろう。そんな私を見てデリクさんは笑みを浮かべ、素早い動きで馬にまたがると言った。
「また…お邪魔していいかな?」
「は、はいっ!…待ってます…」
するとデリクさんは手を振り、馬の向きを変えると走り去って行った。
「デリクさん…」
キスされた額に手を当てた。
やっぱりデリクさんは…彼なのだろうか…?私はデリクさんが見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた―。
****
扉を開けて戻ってきた私は驚いてしまった。何と家族が全員集合でエントランスの前に立っていたからだ。
「な、な、な、何っ?!」
思わず後ずさると父、母、兄が口々に尋ねてきた。
「デリクさんと…随分気があっているようだな?」
「あの方とどんな話をしたのかしら?」
「アンジェラ…もう嫁にいってしまうのか?」
よ、嫁…?
前世でも叶わなかった私の密かな夢…。思わず動揺しそうになってしまった。
そこでゴホンと咳払いすると私は言った。
「デリクさんとはお話が合います。お話した内容は学校での出来事と、お店の話です。そ、それに…結婚の話ですが…わ、私はまだ学生です。そ、卒業するまでは…まだ結婚の事は考えていません!お、おやすみなさいっ!」
そして私は頭を下げると、まだ何か言いたげな家族をその場に残して駆け足で自室へ向かった。
真っ赤になっている顔を家族に見られない為に―。
デリクさんの顔は耳まで真っ赤になっていた。その姿は前世の恋人だった彼を思い出させる。彼も自分の感情を隠す事が下手な人だった。ちょっとしたことですぐに顔を真っ赤にさせるような…そんな不器用な恋人だった。
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「アンジェラさん…」
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「アンジェラ…」
「え?」
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「はい。その方がいいです」
「良かった。それじゃ…僕は正式な君の婚約者になれたと…思ってもいいのかな?」
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そこで私もデリクさんに右手を差し出すと、突然握りしめられて引き寄せられた。
え…?
気付けばデリクさんに額にキスされていた。それはほんの一瞬の出来事だった。
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「あ、お・お・おやすみなさい…」
顔が熱くなっていた。きっと自分の顔は真っ赤になっていただろう。そんな私を見てデリクさんは笑みを浮かべ、素早い動きで馬にまたがると言った。
「また…お邪魔していいかな?」
「は、はいっ!…待ってます…」
するとデリクさんは手を振り、馬の向きを変えると走り去って行った。
「デリクさん…」
キスされた額に手を当てた。
やっぱりデリクさんは…彼なのだろうか…?私はデリクさんが見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた―。
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