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第97話 尾行した先にあるものは
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3人は店を出ると、ニコラスの母を中心に左右にパメラとニコラスが並んで仲よさげに話をしながら歩いている。しかもあろう事か、よりにもよってパメラはニコラスの母と腕を組んで談笑していた。
「…どう思う?アンジェラ」
2人で建物の陰に隠れるように後をつけて歩いているとデリクが問いかけてきた。
「どうもこうも…とても仲よさ気に見えるわ」
「うん、本当だね…まるで本当の母娘みたいだよ」
「デリク。コンラート夫人からパメラの話は聞いたことがある?」
「まさか!伯爵夫妻はパメラの話どころか、ニコラスの話すらしている姿を見たことが無いよ」
デリクが首を振りながら答える。
「と言うことは…ひょっとすると…」
「うん。もしかすると…伯爵はこの事を知らないのかもしれない…」
「そうよね…コンラート夫人の独断かもしれないわ」
それじゃ…今迄私に見せていた姿は…演技だったのだろうか?
「一体何処へ行くつもりなのだろう…あ、アンジェラ。角を曲がっていった。向こう側は…高級住宅地のある方角だよ」
「本当?見失わないように後をつけないと」
私とデリクはその後も慎重に後をつけ…やがて3人は1軒の家の前に到着した。するとパメラが下げていたショルダーバッグから鍵を取り出し…。
「あ!アンジェラッ!見たかい?」
デリクが興奮気味に言う。
「ええ、しかとこの目で見たわ」
パメラは扉を開けると、3人は家の中に完全に入って行った。
そこで私達は急いで家の方へ向かった。
3人が入った家は白い壁に緑のトンガリ屋根の2階建てだった。屋根からはレンガの煙突が伸びており、各部屋に出窓がついた可愛らしい作りとなっていた。家には庭も完備されており、周囲は白いサクで囲まれている。
「この家…借りるとしても家賃が多分高いんじゃないかな…?伯爵がニコラスに財産として分け与えた金額だけでは生活費も含めて半年も持たなと思うよ…」
「と言う事は…間違いないわね」
「ああ。きっと夫人が…密かにニコラスの援助を…していたんだ。」
「ついでにパメラの事もね…」
「きっと夫人はニコラスを見捨てることが出来なかったんだろうね。たった1人きりの息子だから…」
デリクはしみじみと言った。けれども、私には別の懸念があった。
「デリク…こんな言い方…あまりしたくは無いけれど…夫人は私達の事調べてたんじゃないかしら?私が店を開業させる事とか、貴方がパメラの事を調べている事を」
「え?それじゃ僕が襲われたのも…間接的に夫人が関わっていたって事なのか…?」
「多分…」
するとデリクが何を思ったか、郵便受けに近づくと、紙と万年筆をポケットから取り出した。
「何をするつもりなの?」
「この家の住所を書き写しておく。調べてみようと思うんだ。誰がこの家を借りているのか…」
「そんな事出来るの?」
メモを書き写しているデリクに尋ねた。すると彼は笑みを浮かべながら言った。
「アンジェラ、こう見えても僕は顔が広いんだよ。とりあえず…誰が借り主か調べた上で伯爵に話をしてみようかと思うんだ」
「そうね…。まだ伯爵もニコラスに手を貸しているかどうか分からないし…それがいいかもしれないわ」
「よし、住所を書き写したよ。それじゃそろそろ行こうか?もう14時になるから」
「ええ、行きましょう」
そして私とデリクはその場を後にした―。
「…どう思う?アンジェラ」
2人で建物の陰に隠れるように後をつけて歩いているとデリクが問いかけてきた。
「どうもこうも…とても仲よさ気に見えるわ」
「うん、本当だね…まるで本当の母娘みたいだよ」
「デリク。コンラート夫人からパメラの話は聞いたことがある?」
「まさか!伯爵夫妻はパメラの話どころか、ニコラスの話すらしている姿を見たことが無いよ」
デリクが首を振りながら答える。
「と言うことは…ひょっとすると…」
「うん。もしかすると…伯爵はこの事を知らないのかもしれない…」
「そうよね…コンラート夫人の独断かもしれないわ」
それじゃ…今迄私に見せていた姿は…演技だったのだろうか?
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「本当?見失わないように後をつけないと」
私とデリクはその後も慎重に後をつけ…やがて3人は1軒の家の前に到着した。するとパメラが下げていたショルダーバッグから鍵を取り出し…。
「あ!アンジェラッ!見たかい?」
デリクが興奮気味に言う。
「ええ、しかとこの目で見たわ」
パメラは扉を開けると、3人は家の中に完全に入って行った。
そこで私達は急いで家の方へ向かった。
3人が入った家は白い壁に緑のトンガリ屋根の2階建てだった。屋根からはレンガの煙突が伸びており、各部屋に出窓がついた可愛らしい作りとなっていた。家には庭も完備されており、周囲は白いサクで囲まれている。
「この家…借りるとしても家賃が多分高いんじゃないかな…?伯爵がニコラスに財産として分け与えた金額だけでは生活費も含めて半年も持たなと思うよ…」
「と言う事は…間違いないわね」
「ああ。きっと夫人が…密かにニコラスの援助を…していたんだ。」
「ついでにパメラの事もね…」
「きっと夫人はニコラスを見捨てることが出来なかったんだろうね。たった1人きりの息子だから…」
デリクはしみじみと言った。けれども、私には別の懸念があった。
「デリク…こんな言い方…あまりしたくは無いけれど…夫人は私達の事調べてたんじゃないかしら?私が店を開業させる事とか、貴方がパメラの事を調べている事を」
「え?それじゃ僕が襲われたのも…間接的に夫人が関わっていたって事なのか…?」
「多分…」
するとデリクが何を思ったか、郵便受けに近づくと、紙と万年筆をポケットから取り出した。
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「ええ、行きましょう」
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