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1章3 懐かしい光景
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「『テミス』の町が栄えているということは、まだあの井戸は大丈夫ってことよね……」
巻き戻る前のことを思い返してみた。
あれは私が『ルーズ』に追放されて3年目の出来事だった。
突然有毒ガスが溢れだし、たった1日で『テミス』に住む人々全員の命を奪ってしまたのだ。
その後も有毒ガスは発生し続けた。
原因を調査する為に町に入ることも叶わず、20年以上も放置されてしまった『テミス』。
ようやく有毒ガスが治まり、調査に入ると町一番の大きな井戸が原因だと判明した。
不吉な井戸は埋められたものの、町が再建されることは無かった。
やはり、たった1日で何千人もの命が奪われた町を再建する気持ちには誰もがなれなかったのだろう。
あの事件は本当に凄かった。何しろ私の暮らす『ルーズ』にまで『テミス』が滅んだ話が届いてきたのだから。
これがきっかけで王室の権威はかなり弱まった。
ソネットは「役立たず聖女」と批判を浴び、その後はどうなったのかは不明だ。
もし私が今、あの事件を事前に食い止めることが出来れば……悲惨な歴史を回避することが出来るだろうか?
でもきっとそれは無理な話だろう。私の言うことなんて誰も聞いてくれないに決まっている。
第一こんな気合の入ったドレス姿で馬車から降り立てば悪目立ちしてしまう。
「確か毒ガスが発生した井戸は貧民街にあったわよね……」
当時を思い出し、ポツリと呟いた。
この姿で貧民街に行けば、多くの物乞いたちに取り囲まれてしまうだろう。
何より、この頃の私は評判の悪女だった。ソネットに嫌がらせをするため、貧民街の人々をお金で雇って嫌がらせ行為をさせてきたのだ。
「私は嫌われ悪女、誰も私の話に耳を傾けてくれるはず無いわ。私はこれから『ルーズ』の村で、平凡だけど幸せな生活をするのだから。わざわざ厄介ごとに首を突っこむこともないわね」
自分の中で納得させると、屋敷に戻るまで私は目を閉じることにした。
平和な『テミス』の風景を見ない為に——
****
「……様、オフィーリア様」
誰かが私の名前を呼んでいる……。それにしても「オフィーリア」なんて呼ばれるのは久しぶりだ。
ずっと「リア」と呼ばれて生きてきたのに……。
「起きて下さい! オフィーリア様!」
突然大きな声で呼びかけられ、慌てて私は目を開けた。
すると豪華な馬車に乗っていることに気付き、辺りを見渡す。
「え? ここは……?」
すると御者のザックが馬車の外から私を見つめていた。
「あぁ、良かった……目が覚めたのですね?」
「え、ええ。私、眠ってしまっていたのね。ひょっとしてもう着いたのかしら?」
「はい、お屋敷に到着いたしました」
「そう。起こしてくれてありがとう」
笑顔でお礼を述べると、ザックがキョトンとした顔になる。
「あ、あの……オフィーリア様?」
でも、それはそうだろう。過去の私は、使用人に絶対お礼を言うような人間ではなかったからだ。
「では、降りようかしら。ザック、手を貸してくれる?」
「はい。オフィーリア様」
私はザックの手を借り、馬車から降り立った。
広大な敷地に建てられた3階建ての巨大な屋敷。白塗りの壁に、水色の屋根……庭園には噴水が設置され、水を噴き上げている。
懐かしい……60年ぶりに見る景色だ。
でも、この景色ともすぐにお別れになるけれども。
「あの、オフィーリア様……どうされましたか?」
背後からザックが声をかけてくる。
「いいえ、何でも無いわ。ザック、御苦労様。もう行っていいわよ」
私の言葉にザックは恐縮しながら去って行った。
1人になった私は少しの間、屋敷を見上げ……。
「行きましょう」
自分に言い聞かせると、最初の一歩を踏み出した――
巻き戻る前のことを思い返してみた。
あれは私が『ルーズ』に追放されて3年目の出来事だった。
突然有毒ガスが溢れだし、たった1日で『テミス』に住む人々全員の命を奪ってしまたのだ。
その後も有毒ガスは発生し続けた。
原因を調査する為に町に入ることも叶わず、20年以上も放置されてしまった『テミス』。
ようやく有毒ガスが治まり、調査に入ると町一番の大きな井戸が原因だと判明した。
不吉な井戸は埋められたものの、町が再建されることは無かった。
やはり、たった1日で何千人もの命が奪われた町を再建する気持ちには誰もがなれなかったのだろう。
あの事件は本当に凄かった。何しろ私の暮らす『ルーズ』にまで『テミス』が滅んだ話が届いてきたのだから。
これがきっかけで王室の権威はかなり弱まった。
ソネットは「役立たず聖女」と批判を浴び、その後はどうなったのかは不明だ。
もし私が今、あの事件を事前に食い止めることが出来れば……悲惨な歴史を回避することが出来るだろうか?
でもきっとそれは無理な話だろう。私の言うことなんて誰も聞いてくれないに決まっている。
第一こんな気合の入ったドレス姿で馬車から降り立てば悪目立ちしてしまう。
「確か毒ガスが発生した井戸は貧民街にあったわよね……」
当時を思い出し、ポツリと呟いた。
この姿で貧民街に行けば、多くの物乞いたちに取り囲まれてしまうだろう。
何より、この頃の私は評判の悪女だった。ソネットに嫌がらせをするため、貧民街の人々をお金で雇って嫌がらせ行為をさせてきたのだ。
「私は嫌われ悪女、誰も私の話に耳を傾けてくれるはず無いわ。私はこれから『ルーズ』の村で、平凡だけど幸せな生活をするのだから。わざわざ厄介ごとに首を突っこむこともないわね」
自分の中で納得させると、屋敷に戻るまで私は目を閉じることにした。
平和な『テミス』の風景を見ない為に——
****
「……様、オフィーリア様」
誰かが私の名前を呼んでいる……。それにしても「オフィーリア」なんて呼ばれるのは久しぶりだ。
ずっと「リア」と呼ばれて生きてきたのに……。
「起きて下さい! オフィーリア様!」
突然大きな声で呼びかけられ、慌てて私は目を開けた。
すると豪華な馬車に乗っていることに気付き、辺りを見渡す。
「え? ここは……?」
すると御者のザックが馬車の外から私を見つめていた。
「あぁ、良かった……目が覚めたのですね?」
「え、ええ。私、眠ってしまっていたのね。ひょっとしてもう着いたのかしら?」
「はい、お屋敷に到着いたしました」
「そう。起こしてくれてありがとう」
笑顔でお礼を述べると、ザックがキョトンとした顔になる。
「あ、あの……オフィーリア様?」
でも、それはそうだろう。過去の私は、使用人に絶対お礼を言うような人間ではなかったからだ。
「では、降りようかしら。ザック、手を貸してくれる?」
「はい。オフィーリア様」
私はザックの手を借り、馬車から降り立った。
広大な敷地に建てられた3階建ての巨大な屋敷。白塗りの壁に、水色の屋根……庭園には噴水が設置され、水を噴き上げている。
懐かしい……60年ぶりに見る景色だ。
でも、この景色ともすぐにお別れになるけれども。
「あの、オフィーリア様……どうされましたか?」
背後からザックが声をかけてくる。
「いいえ、何でも無いわ。ザック、御苦労様。もう行っていいわよ」
私の言葉にザックは恐縮しながら去って行った。
1人になった私は少しの間、屋敷を見上げ……。
「行きましょう」
自分に言い聞かせると、最初の一歩を踏み出した――
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