時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
67 / 99

3章14 ビリーの質問

しおりを挟む
 ビルが帰り、夕暮れが近づいてきた頃――

「ビリー、遅いわね……この村には危険な野生動物は生息していないけど、心配だわ……迎えに行こうかしら?」

時計の針を気にしながら台所で食事の用意をしていると、ビリーが家に帰って来た声が聞こえてきた。

「ただいま~お姉ちゃん」

「帰って来たんだわ!」

炊事の手を止めて急いで出迎えにいくと、扉の前には大きな紙袋を抱えたビリーが立っていた。

「お帰りなさい、ビリー。遅いから心配したわ。迎えに行こうかと思っていたのよ? 大丈夫? 外は寒かったでしょう?」

「大丈夫、これを持っていたから寒く無かったよ」

ビリーは紙袋を抱えていた。
 
「その紙袋はどうしたの?」

扉の前に立っていたビリーは大きな紙袋を抱えている。
するとビリーは嬉しそうに答えた。

「あのね、これは焼き芋だよ。今日沢山サツマイモを焼いたから、お姉ちゃんにも食べさせてあげたくてお土産にもらってきたんだよ。ほら、見て」

ビリーは紙袋を開いて見せてくれた。すると袋の中には、色よく焼けたサツマイモが沢山入っていた。

「まぁ。こんなに沢山貰ってきたの? ありがとうビリー。 重かったでしょう?」

「大丈夫だよ。これくらい、僕男だし」

「ええ、そうね。それじゃ、今夜の夕食に2本だけ食べて、後は干し芋にしましょう」

「え? サツマイモって干せるの!?」

ビリーが驚く。

「ええ、そうよ。包丁で薄く切って、ザルに広げて干すの。とっても甘みが出て、保存食にもなるのよ。これから寒い冬が来て、何カ月も雪が降り続いて外に出られなくなるわ。だから保存食を沢山用意しないと。ビリーのおかげで良い保存食が作れるわ。ありがとう」

「えへへ」

頭を撫でてあげると、嬉しそうに顔を赤くするビリー。

「そうだったわ。私もビリーに見せたいものがあるの。すごいわよ~きっと驚くわ」

「え? 何々?」

「それじゃ、家の裏手に一緒に行ってみましょう。その前に焼き芋を置いてくるわね?」

「うん!」


****

 家の裏手にある風車小屋へ連れて行くと、ビリーは目を見開いた。

「え? ええっ!? お姉ちゃん! これってまさか……?」

「フフ。温泉よ。今日からもう入ることが出来るわ。それどころかポンプと繋げてあるから、もう冷たいお水で手や顔を洗わなくても済ものよ?」

それどころか、温泉が湧いてある場所はとても温かだった。ここなら雪が降り積もる心配も無さそうだ。

「ねぇ。これって、お姉ちゃんが1人でやったの?」

「え? まさか。私にはこんなこと出来ないわ。知り合いの人がやってくれたの」

今迄、村の人達にビルのことを訪ねたことがあるけれど……彼を知る人は1人もいなかった。
ひょっとすると、彼は村人たちに住んでいることを内緒にしているのか、もしくはこの村の近くに住んでいるのかもしれないし」

「知り合いの人って……? ひょっとして男の人?」

「え? ええ、そうよ」

「……何て名前の人なの?」

「ビルという名前の人だけど……?」

「何歳ぐらいの人?」

「そうね……私とあまり年が変わらないかもしれないわ」

「ふ~ん……そうなんだ」

一体ビリーはどうしたのだろう? 何だか思いつめたような顔に見える。

「ビリー? どうかしたの?」

「……ううん。何でも無い」

「そう? なら家に入りましょう? いくら温泉の傍にいても外は寒いわ。食事にしましょう」

「うん!」

次に返事をした時には……いつもと変わらないビリーの姿がそこにあった――

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

悪役令嬢は間違えない

スノウ
恋愛
 王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。  その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。  処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。  処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。  しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。  そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。  ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。  ジゼットは決意する。  次は絶対に間違えない。  処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。  そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。   ────────────    毎日20時頃に投稿します。  お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。  

処理中です...