時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
74 / 99

4章 6 ビリーの痕跡

しおりを挟む
 森の中は思っていた以上に真っ暗闇だった。

カンテラや、松明が無ければ何も見えないほどだ。

「ビリーッ! どこだ!」
「聞こえたら返事をしてくれー!」

村人たちの声が森に響き渡る。
私も必死で声を上げてビリーを呼んだ。

「ビリーッ! お姉ちゃんよーっ! お願い! 返事をしてーっ!!」

けれどビリーの声は聞えない。私たちの叫び声と、ホウホウと鳴くフクロウの声や時々バサバサと鳥が飛び立つ音が聞こえるのみだった。

「ビリー……何処なの……?」

いつしか私の声は涙声になっていた。
こんなに寒く、真っ暗闇の中でビリーは今も森を彷徨っているのだろうか? だとしたらさぞかし怖いに決まっている。

ビリーを捜しはじめて、かれこれ1時間は経過しただろうか? 村の男性達とバラバラにならないように一定の距離を取って捜し回っているけれども誰一人、ビリーを捜し出せていない。

「大丈夫か? リア」

私の手を繋ぐビルが声をかけてきた。

「どうしよう……」

声が震える。

「リア?」

「ビリーが居なくなったのは私のせいだわ……私が狩りの話をしなければ……ううん、狩に行くのを何としても止めさせていれば……。ビリーはこんなことに……」

ビリーの不安そうな顔が、泣いて私を呼んでいる姿が頭に浮かぶ。

「リアッ!」

すると突然ビリーに両肩を掴まれ、彼は私を覗き込んできた。

「いいか? 君は何も悪くない。いくらビリーに狩の話を伏せていたって、遅かれ早かれ耳に入っていた。狩に行くのを止めさせるのだって不可能だった。いくらリアが止めても、ビリーは家をこっそり抜け出して狩に行っていた。何故なら女手ひとつで家の仕事に追われているリアの助けになりたいと常に思っていたからだ。早く一人前の男になってリアに認めてもらいたかったんだよ!」

「ビル……」

ビルの目は真剣だった。けれど……。

「どうして……貴方にそんなことが分かるのよ……」

「え? そ、それは……」

「ビルは、まだ一度もビリーに会ったことが無いでしょう!? なのに何故そんな分かった言い方するのよ! 勝手なことばかり言わないで! あの子のことなんか何も知らないくせに!」

気付けばビルに当たり散らしていた。
泣きたいのを堪えて彼の胸をドンドン叩いていると、両手首を掴まれた。

「いや。ビリーのことは……よく知っているよ。彼の身に何が起きたかも……」

ええ……?
分からない、ビルは一体何を言っているのだろう?

「な、何よ……何を言っているの……?」

「それは……」

ビルの唇が動いたその時。

「リアさんっ! こっちへ来てくれ!!」

松明の灯りが揺らめく方角から、カールさんの呼び声が聞こえてきた。

「カールさんっ!」

カンテラを持ったまま走り始めると、ビルが追いかけてきた。

「リアッ! 危ないから1人で行くな!」

ビルと2人でカールさんの元へ駆け寄ると、捜索にあたっていた村人たちが全員集まって地面を見つめている。

「ど、どうしたんですか……何かあったのですか……?」

尋ねる声が震えてしまう。

「オフィーリアさん……これに見覚えはあるかい……?」

カールさんが松明で地面を指す。

「え……?」

照らされた地面を見て、愕然とした。そこには弓と折れた弓矢が落ちていたのだ。
そして、矢は全て折れている。

「こ、これは……ビリーの弓矢……」

ビリーは弓矢を10本携えて出掛けたのに全て無残にも折れていたのだ。
折れた弓矢……そして行方不明になったビリー。

これの意味するところは……?

「そ、そんな……ビリー……?」

そこで糸が切れたように私の意識は途切れてしまった。

「リアッ!!」

ビルが私の名を呼ぶのを聞きながら――

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

悪役令嬢は間違えない

スノウ
恋愛
 王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。  その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。  処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。  処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。  しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。  そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。  ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。  ジゼットは決意する。  次は絶対に間違えない。  処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。  そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。   ────────────    毎日20時頃に投稿します。  お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。  

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

わがまま令嬢は改心して処刑される運命を回避したい

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のセアラは権力を振りかざし、屋敷でも学園でもわがままの限りを尽くしていた。 ある夜、セアラは悪夢を見る。 それは、お気に入りの伯爵令息デズモンドに騙されて王女様に毒を盛り、処刑されるという夢だった。 首を落とされるリアルな感覚と、自分の死を喜ぶ周りの人間たちの光景に恐怖を覚えるセアラ。しかし、セアラはその中でただ一人自分のために泣いてくれた人物がいたのを思い出す。 セアラは、夢と同じ結末を迎えないよう改心することを決意する。そして夢の中で自分のために泣いてくれた侯爵家のグレアムに近づくが──……。 ●2021/6/28完結 ●表紙画像はノーコピーライトガール様のフリーイラストよりお借りしました! ◆小説家になろうにも掲載しております

【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。 婚約者ではないのに、です。 それに、いじめた記憶も一切ありません。 私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。 第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。 カクヨムにも掲載しております。

処理中です...