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5章 4 約束
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その日から、ビルは温泉堀を始めた。
1人では大変そうなので、私も手伝おうかと声をかけた。けれどビルは「これは男の仕事だから」と笑顔で答えて私に絶対手伝わせようとはしなかった。
ビルの役に立ちたかった私は、無理を承知で隣家のカールさんに事情を説明して温泉堀を手伝って貰えないかと頼みに行った。
するとカールさんは「冬の雪のせいで身体を動かす機会が減ってしまったから、丁度良かった」と言って、快く手伝うことを承諾してくれた。
カールさんが温泉堀に加わると、妻のベラさんもやってきて4人分の食事の手伝いを申し出てくれた。
こうして男湯と女湯の温泉が掘り終わる間、私たちは4人で暮らすことになったのだった——
****
—―1月半ば
ついに、ビルとカールさんは男湯と女湯の温泉を完成させた。
温泉の広さは男湯も女湯も3人程度なら同時に入れるほどの大きさだった。温泉の周囲を囲むように小屋を建て、寒さや雪を避けることが出来るように工夫された作りはカールのアイデアだった。
そしてこの日の夜。
早速私たちは完成した温泉に入ることにした——
「本当に温泉て気持ちいわね~。まさか真冬に温泉に入れるとは思わなかったわ。何しろ以前までは雪のせいで温泉まで行くことが出来なかったから」
私と一緒に温泉に浸かっているベラさんが嬉しそうに語る。
「確かに雪のせいで温泉に行くどころではありませんでしたよね」
小屋の窓から見える星空を眺めながら返事をすると、ベラさんがクスクス笑った。
「あら? オフィーリアさんは『ルーズ』で冬を越すのは初めてじゃない。何だか今の言い方、前からこの村のことを知っているみたいな言い方ね?」
「そ、そうでしたよね? 私、この村にすっかり馴染んで昔からここに住んでいたような気持ちになってしまっていました」
つい、うっかり口が滑ってしまって咄嗟に誤魔化す。
するとベラさんがぽつりと言った。
「でも……良かったわ」
「え? 何がですか?」
「オフィーリアさんのことよ。……ビリーが居なくなってしまった時、貴女の様子がおかしくなってしまって皆本当に心配したのよ?」
「……ご心配、おかけして申し訳ございませんでした」
「あ、あのね? 別に謝らなくていいのよ? 私、そういう意味で言ったわけじゃないから。でもオフィーリアさんが元に戻って良かったわ。これもきっとビルさんのお陰ね」
「……ええ、そうですね。ビルには本当に感謝しています」
傍目からは、私は元に戻ったように見えるのだろう。でもあの日以来、胸にぽっかりと大きな穴が空いてしまったような虚無感は否めない。私はもう、ビリーがいなくなったことで、心から笑えなくなっていたのだ。
「それでいつ2人は結婚するのかしら?」
「え?」
余りにも突然の質問に一瞬何を言われているのか分からなかった。
「あ、あの……結婚て誰と誰がですか?」
「あら、何を言っているの? 当然あなたとビルさんのことよ」
「え!? それは絶対にありえませんよ! 彼はただの同居人、雪の季節が終わるまでの関係ですから」
「え? そうだったの? あなた達はとてもお似合いに思えるのだけど……」
ベラさんが首を傾げる。
「私は誰かと結婚するつもりはありませんから。ビリーと約束したので」
ビリーは私が誰かと結婚するのを嫌がっていた。だから私はビリーと約束したのだ。
私は誰とも結婚しないし、ずっとビリーと一緒に暮らすって。
「……そうなの? でもあなたの決意が固いなら仕方ないわね」
「はい、そうです」
私はベラさんの言葉に頷いた。
まさか今の話が隣の温泉に入っていたビルに聞かれていたとは、知る由もなく——
1人では大変そうなので、私も手伝おうかと声をかけた。けれどビルは「これは男の仕事だから」と笑顔で答えて私に絶対手伝わせようとはしなかった。
ビルの役に立ちたかった私は、無理を承知で隣家のカールさんに事情を説明して温泉堀を手伝って貰えないかと頼みに行った。
するとカールさんは「冬の雪のせいで身体を動かす機会が減ってしまったから、丁度良かった」と言って、快く手伝うことを承諾してくれた。
カールさんが温泉堀に加わると、妻のベラさんもやってきて4人分の食事の手伝いを申し出てくれた。
こうして男湯と女湯の温泉が掘り終わる間、私たちは4人で暮らすことになったのだった——
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—―1月半ば
ついに、ビルとカールさんは男湯と女湯の温泉を完成させた。
温泉の広さは男湯も女湯も3人程度なら同時に入れるほどの大きさだった。温泉の周囲を囲むように小屋を建て、寒さや雪を避けることが出来るように工夫された作りはカールのアイデアだった。
そしてこの日の夜。
早速私たちは完成した温泉に入ることにした——
「本当に温泉て気持ちいわね~。まさか真冬に温泉に入れるとは思わなかったわ。何しろ以前までは雪のせいで温泉まで行くことが出来なかったから」
私と一緒に温泉に浸かっているベラさんが嬉しそうに語る。
「確かに雪のせいで温泉に行くどころではありませんでしたよね」
小屋の窓から見える星空を眺めながら返事をすると、ベラさんがクスクス笑った。
「あら? オフィーリアさんは『ルーズ』で冬を越すのは初めてじゃない。何だか今の言い方、前からこの村のことを知っているみたいな言い方ね?」
「そ、そうでしたよね? 私、この村にすっかり馴染んで昔からここに住んでいたような気持ちになってしまっていました」
つい、うっかり口が滑ってしまって咄嗟に誤魔化す。
するとベラさんがぽつりと言った。
「でも……良かったわ」
「え? 何がですか?」
「オフィーリアさんのことよ。……ビリーが居なくなってしまった時、貴女の様子がおかしくなってしまって皆本当に心配したのよ?」
「……ご心配、おかけして申し訳ございませんでした」
「あ、あのね? 別に謝らなくていいのよ? 私、そういう意味で言ったわけじゃないから。でもオフィーリアさんが元に戻って良かったわ。これもきっとビルさんのお陰ね」
「……ええ、そうですね。ビルには本当に感謝しています」
傍目からは、私は元に戻ったように見えるのだろう。でもあの日以来、胸にぽっかりと大きな穴が空いてしまったような虚無感は否めない。私はもう、ビリーがいなくなったことで、心から笑えなくなっていたのだ。
「それでいつ2人は結婚するのかしら?」
「え?」
余りにも突然の質問に一瞬何を言われているのか分からなかった。
「あ、あの……結婚て誰と誰がですか?」
「あら、何を言っているの? 当然あなたとビルさんのことよ」
「え!? それは絶対にありえませんよ! 彼はただの同居人、雪の季節が終わるまでの関係ですから」
「え? そうだったの? あなた達はとてもお似合いに思えるのだけど……」
ベラさんが首を傾げる。
「私は誰かと結婚するつもりはありませんから。ビリーと約束したので」
ビリーは私が誰かと結婚するのを嫌がっていた。だから私はビリーと約束したのだ。
私は誰とも結婚しないし、ずっとビリーと一緒に暮らすって。
「……そうなの? でもあなたの決意が固いなら仕方ないわね」
「はい、そうです」
私はベラさんの言葉に頷いた。
まさか今の話が隣の温泉に入っていたビルに聞かれていたとは、知る由もなく——
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