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5章 16 ビルの告白 8
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「おれが魔力を注いで作り上げたこの懐中時計は、ただ時を戻すだけじゃない。もう一つ重要な役割を持っているんだ」
ビリーは握っていた私の手を離すと、今度は懐中時計を握りしめた。
「重要な役割って……?」
「この懐中時計を手にしたリアの元へ俺を導いてくれる重要な役割だよ。その時計があったから、俺は今のリアに出会えたんだ。分かりやすく言えば、道しるべのようなものだよ。わざとこの懐中時計を残してリアの家を出て行ったけど、これは一か八かの賭けだった。リアが自分で懐中時計のゼンマイを巻いてくれなければ時を戻ることが出来なかったからね。そして、俺の思惑通りリアはゼンマイを回してくれた……後のことは言わなくても分かるよな?」
ビリーの言葉に頷いた。
「……分かるわ。だって自分で体験したことだもの」
私はあの懐中時計によって、60年の時を巻き戻って……今、ここにいるのだから。
「魔法が発動したことを知った俺は魔塔に戻って、リアのいる世界の痕跡を辿ってここにやってきたんだ。……そしてこの世界にいる自分の様子を見に行ったんだ。今の状況を知りたかったからね。 そんなことをしたのは今回が初めてだったよ。自分を見つけるのは容易いことだった。それで、とんでもない事実を知ったんだ……」
ビリーはポツリと言った。
「とんでもない事実……?」
一体どんな事実なのだろう?
「ある一定の距離まで自分に近付くと、俺の身体が消えてしまうんだよ。まるで霧が消えていくように……自分の意識だけはここに存在していると言うのに。初めて体験したときは怖くもあったし、妙な感覚でもあった。もしかしてこの世の摂理で、同じ空間に存在できないようになっているのかもしれない」
ビリーは自分の手をじっと見つめ……グッと握りしめた。
「まさか、それで子供のビリーと貴方が同時に居たことが無かったの?」
私の言葉にビリーは頷く。
「……そうだよ。その事に気付いた時は絶望した。折角苦労して、ようやく自分の望むリアのいる世界に来れたのに……もう一人の自分がリアの傍にいる限り近付くことが出来ない……身体が消えてしまうのだから。だけど、それでもいいから俺はこの世界に留まることを決めたんだ。例えリアに俺自身が認識されなくても」
「……」
余りにも衝撃的な話で言葉も出てこなかった。
「リアは気付いていなかっただろう? 俺はずっと2人の近くにいたんだ。でも俺の存在が、この世界のビリーに影響を及ぼしたんだろうな。リアにすごく懐いたのも、時折大人びた態度を取る時があったのも」
確かに言われて見れば、思い当たることがあった。時折大人びたり、子供に戻ったりするのは何故だろうと不思議に思ったけれど……。
それが目の前にいるビリーの影響によるものだったなんて。
「だけど、その影響はリアにも及んでいたようだな。時々、身に覚えのない記憶が蘇るあったことがあったんだろう?」
「え、ええ……あったわ……まさか私にまで影響していたのね」
「子供のビリーがリアと一緒にいて、幸せならそれでいいと思っていた。だって、同じ俺自身なのだから。それにこの先リアにどんな運命が待ち受けているか分っていたから傍で見守ろうと決めたんだ」
「そう……だったの……」
余りにも色々な話を聞かされて、頭が追い付かない。
「リアが子供の俺に向ける笑顔や優しい眼差しを見ている内に、欲が出てしまったんだ……リアと会話がしたい、その笑顔を俺にも向けて欲しいって……だから2人が離れた隙を狙って、リアの前に姿を現したんだ……ごめん……」
ビリーはまるで悪いことをしてしまった子供のように、目を伏せた——
ビリーは握っていた私の手を離すと、今度は懐中時計を握りしめた。
「重要な役割って……?」
「この懐中時計を手にしたリアの元へ俺を導いてくれる重要な役割だよ。その時計があったから、俺は今のリアに出会えたんだ。分かりやすく言えば、道しるべのようなものだよ。わざとこの懐中時計を残してリアの家を出て行ったけど、これは一か八かの賭けだった。リアが自分で懐中時計のゼンマイを巻いてくれなければ時を戻ることが出来なかったからね。そして、俺の思惑通りリアはゼンマイを回してくれた……後のことは言わなくても分かるよな?」
ビリーの言葉に頷いた。
「……分かるわ。だって自分で体験したことだもの」
私はあの懐中時計によって、60年の時を巻き戻って……今、ここにいるのだから。
「魔法が発動したことを知った俺は魔塔に戻って、リアのいる世界の痕跡を辿ってここにやってきたんだ。……そしてこの世界にいる自分の様子を見に行ったんだ。今の状況を知りたかったからね。 そんなことをしたのは今回が初めてだったよ。自分を見つけるのは容易いことだった。それで、とんでもない事実を知ったんだ……」
ビリーはポツリと言った。
「とんでもない事実……?」
一体どんな事実なのだろう?
「ある一定の距離まで自分に近付くと、俺の身体が消えてしまうんだよ。まるで霧が消えていくように……自分の意識だけはここに存在していると言うのに。初めて体験したときは怖くもあったし、妙な感覚でもあった。もしかしてこの世の摂理で、同じ空間に存在できないようになっているのかもしれない」
ビリーは自分の手をじっと見つめ……グッと握りしめた。
「まさか、それで子供のビリーと貴方が同時に居たことが無かったの?」
私の言葉にビリーは頷く。
「……そうだよ。その事に気付いた時は絶望した。折角苦労して、ようやく自分の望むリアのいる世界に来れたのに……もう一人の自分がリアの傍にいる限り近付くことが出来ない……身体が消えてしまうのだから。だけど、それでもいいから俺はこの世界に留まることを決めたんだ。例えリアに俺自身が認識されなくても」
「……」
余りにも衝撃的な話で言葉も出てこなかった。
「リアは気付いていなかっただろう? 俺はずっと2人の近くにいたんだ。でも俺の存在が、この世界のビリーに影響を及ぼしたんだろうな。リアにすごく懐いたのも、時折大人びた態度を取る時があったのも」
確かに言われて見れば、思い当たることがあった。時折大人びたり、子供に戻ったりするのは何故だろうと不思議に思ったけれど……。
それが目の前にいるビリーの影響によるものだったなんて。
「だけど、その影響はリアにも及んでいたようだな。時々、身に覚えのない記憶が蘇るあったことがあったんだろう?」
「え、ええ……あったわ……まさか私にまで影響していたのね」
「子供のビリーがリアと一緒にいて、幸せならそれでいいと思っていた。だって、同じ俺自身なのだから。それにこの先リアにどんな運命が待ち受けているか分っていたから傍で見守ろうと決めたんだ」
「そう……だったの……」
余りにも色々な話を聞かされて、頭が追い付かない。
「リアが子供の俺に向ける笑顔や優しい眼差しを見ている内に、欲が出てしまったんだ……リアと会話がしたい、その笑顔を俺にも向けて欲しいって……だから2人が離れた隙を狙って、リアの前に姿を現したんだ……ごめん……」
ビリーはまるで悪いことをしてしまった子供のように、目を伏せた——
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