嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
39 / 566

第3章 11 貴族の仲間入り

しおりを挟む
 ヒルダと話を終えたルドルフは応接室に通されて、ハリスとマーガレットが来るのを待っていた。

(ヒルダ様と婚約を交わしたのはいいけれども・・・勝手にこんな事を決めて父さんや母さんに何て言われてしまうだろう・・・。それに・・・グレースも・・・。)

ルドルフはグレースの事を考えると憂鬱でならなかった。きっとグレースは激怒するに違いない。裏切り者と言ってルドルフをののしるかもしれない。だけど・・。
ルドルフは目を閉じた。

(僕は・・・ヒルダ様を放っておけないよ・・・。ごめん、グレース・・・。)


 その時、ハリスがマーガレットと共に応接室へ入って来た。慌ててルドルフは立ち上がるがハリスは上機嫌でそれを止めた。そしてルドルフの向かい側に2人は座ると言った。

「よくやってくれた、ルドルフ。ヒルダのあんなに幸せそうな笑顔を見るのは実に久しぶりだった。」

ハリスはニコニコしながら言った。

「本当にルドルフ・・・貴方には感謝するわ。」

マーガレットも満足そうに言う。

「まあ・・・これで君には一生ヒルダの下僕として生きて貰う事になるのだが・・仮にヒルダの気持ちが変わって君とは別れたいと言い出す時が来ればその時は君の自由に生きればいい。何、爵位も取り上げたりはしないから安心するがいい。」

ハリスの言い方はまるでヒルダと別れたければ、嫌われるような態度をヒルダに取ればいいと遠回しに言っているようにルドルフは感じてしまい、正直に言うと良い気分はしなかった。

「とにかくルドルフ・・・これからヒルダをよろしく頼むわね。」

マーガレットも嬉しそうにルドルフに言った。

「おお、そうだ。ルドルフ。お前の父マルコも男爵になったのだから厩舎の仕事はもう終わりだ。少しばかりだがフィールズ家の別宅と領地を授けるから、明日からそちらに移り住むと良い。お前の父マルコには執事になってもらう。執事になる為の訓練をこれから毎日受けて貰うからな?取りあえず明日の朝8時から屋敷に来るように伝えてくれ。」

「はい、分かりました。」

ルドルフは丁寧に頭を下げるとフィールズ家を後にした。そして重い足取りで家へと帰って行った―。




「な、何だってっ?!ルドルフッ!ヒルダ様と婚約をしたのかっ?!」

ルドルフは帰宅すると早速父マルコに事のいきさつを説明した。

「うん・・・。旦那様と奥様に・・言われたんだ。ヒルダ様に怪我を負わせた責任を取るようにって・・・。命令されたんだ・・・。」

ルドルフは項垂れたように言う。

「ルドルフ・・・お前・・・・。」

ルドルフの母は声を震わせて、ルドルフを見た。

(ああ・・・父さんも母さんも・・・呆れているんだ・・。)

「ご、ごめんなさいっ!父さん、母さん!2人に何の相談も出来ずに勝手にヒルダ様と婚約してしまって・・・。」

しかし、2人の返事はルドルフの予想を覆すものだった。

「よ・・・よくやったぞっ!ルドルフッ!」

マルコは手を叩いて喜んだのだ。

「本当に・・・私達は孝行息子を持ったわ。」

母は涙を流して喜んでいる。

「え・・・?父さん、母さん・・・勝手にヒルダ様と婚約した事・・怒ってないの?僕は相談もせずに決めてしまったんだよ?」

すると父は言った。

「何故怒らなければならないのだ?お前のお陰で私達は平民から貴族になる事が出来たのぞ?それに今はまだ・・・男爵家ではあるが、お前がヒルダ様と結婚してくれれば我等も伯爵家になれるのだぞ?こんな素晴らしい事を何故喜んではならんのだ?」

「ええ、そうですよ。しかも今住んでいる我が家よりもずっと大きな家まで貰えて・・ルドルフのような子供を持つ事が出来て私達は本当に幸せ者だわ。」


 こうしてルドルフ家族はこの日、貴族の仲間入りを果たす事となった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

【完結】お世話になりました

⚪︎
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私達、婚約破棄しましょう

アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。 婚約者には愛する人がいる。 彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。 婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。 だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...