357 / 566
第4章 23 父と娘の再会
しおりを挟む
12時10分―
ヒルダ達を乗せた馬車がフィールズ家に到着した。ヒルダは虚ろな瞳で窓から屋敷を眺めた。前回帰郷したときは変装し、アンナの親友として身分を偽っての帰郷だった。そして今回は…身分を偽ることなく、堂々とヒルダとして我が家に戻って来る事が出来たのに、ヒルダの心は悲しみで一杯だった。
(いや…ここには…ルドルフの思い出と‥悲しい思い出が多すぎる…)
ヒルダの大きな瞳から再び一滴の涙が頬を伝って流れ落ちた。
「ヒルダ、フィールズ家に着いた。降りよう」
エドガーが窓の外を眺めているヒルダに声を掛けても、何の反応も無い。ただ虚ろな瞳で屋敷を眺めている。
「ヒルダ様?」
カミラが声を掛けてもヒルダは返事もしない。まるで2人の事を認識していないようにも見えた。ついに見かねたエドガーはヒルダを突然抱き上げた。
「え?」
抱き上げられたとき、ヒルダはようやく我に返った。
「あ…お兄様…」
「ヒルダ、降りよう。」
「はい…」
エドガーはヒルダを抱きかかえたまま降りると、目の前には既に喪服を着たハリスが立っていた。
「エドガーッ!抱きかかえているのは…ヒルダだなっ?!」
エドガーの胸に顔を押し付けていたヒルダはハリスの呼び声に顔を向けた。するとそこにはハリスがやつれた姿で今にも泣きそうな顔でこちらを見ている。
「お父…様…」
エドガーはそのまま、ヒルダを地面に降ろすと背後に下がった。
「ヒルダ…久しぶりだな…」
ハリスは声を震わせてヒルダを見つめる。
「はい…お久しぶりです。お父様…」
「おかえり、ヒルダ」
ハリスは泣き笑いのような顔を浮かべると、次の瞬間ヒルダを思い切り抱きしめた。
「た、ただいま…お父様…」
ヒルダはハリスの背中に手を回し…次の瞬間、大きな声を上げて泣き出した。
「お父様…!!ルドルフ…ルドルフが…っ!!私 ‥ルドルフを…あ、愛していたの…け、結婚の約束だって…していたのに…それなのに…!!」
そして激しく泣きじゃくる。
「ヒルダ…ああ、分ってる。分ってる。ヒルダ…」
ハリスは2年前に別れたヒルダが、すっかり背が伸びたのに、やせ細っていた姿が哀れでならなかった。
「ヒルダ、もうすぐルドルフの葬儀が始まる。だから…しっかり準備をして…お別れを告げるんだ…」
ハリスは泣きじゃくる娘の金の髪を撫でながら言う。
「だ、だけど…わ、私はルドルフとお別れなんて…悲しくて出来ないわ…!」
ヒルダはハリスにしがみついたまま激しく首を振る。
「駄目だ、ヒルダ。そんな様子では…ルドルフは安心して神の身元へ行けないだろう?」
「!」
「で、でも…」
するとハリスが言った。
「ヒルダ、悲しくて辛いのは…お前だけじゃない。ルドルフの両親は、たった1人きりの息子を亡くしてしまったんだぞ?」
その言葉にヒルダの肩がピクリと動く。
(そうだったわ…辛いのは私だけじゃない…ルドルフの両親だってすごく悲しんでる‥なのに私は自分だけ辛いと感じていた…)
ようやく少し冷静になれたヒルダは涙に濡れた顔を上げてハリスを見た。
「お父様…わ、私…ルドルフを見送る仕度をしてきます…」
「ああ、そうだな。もうあまり時間が無いからな」
その時、ハリスはようやくカミラの方を見た。
「カミラ…ヒルダが世話になっているな。本当に…ありがとう」
ハリスは声を掛けた。
「いいえ、とんでもございません。ハリス様」
カミラはさっと頭を下げる。
「カミラ、ヒルダを連れて屋敷へ入ってすぐに葬儀の準備をしてきてくれ」
「はい、かしこまりました。ヒルダ様、参りましょう」
「ええ…」
ヒルダは頷くと、ハリスから離れてカミラと共にエントランスに向かって歩き始める。
そしてその後ろ姿をエドガーとハリスは黙って見つめるのだった―。
ヒルダ達を乗せた馬車がフィールズ家に到着した。ヒルダは虚ろな瞳で窓から屋敷を眺めた。前回帰郷したときは変装し、アンナの親友として身分を偽っての帰郷だった。そして今回は…身分を偽ることなく、堂々とヒルダとして我が家に戻って来る事が出来たのに、ヒルダの心は悲しみで一杯だった。
(いや…ここには…ルドルフの思い出と‥悲しい思い出が多すぎる…)
ヒルダの大きな瞳から再び一滴の涙が頬を伝って流れ落ちた。
「ヒルダ、フィールズ家に着いた。降りよう」
エドガーが窓の外を眺めているヒルダに声を掛けても、何の反応も無い。ただ虚ろな瞳で屋敷を眺めている。
「ヒルダ様?」
カミラが声を掛けてもヒルダは返事もしない。まるで2人の事を認識していないようにも見えた。ついに見かねたエドガーはヒルダを突然抱き上げた。
「え?」
抱き上げられたとき、ヒルダはようやく我に返った。
「あ…お兄様…」
「ヒルダ、降りよう。」
「はい…」
エドガーはヒルダを抱きかかえたまま降りると、目の前には既に喪服を着たハリスが立っていた。
「エドガーッ!抱きかかえているのは…ヒルダだなっ?!」
エドガーの胸に顔を押し付けていたヒルダはハリスの呼び声に顔を向けた。するとそこにはハリスがやつれた姿で今にも泣きそうな顔でこちらを見ている。
「お父…様…」
エドガーはそのまま、ヒルダを地面に降ろすと背後に下がった。
「ヒルダ…久しぶりだな…」
ハリスは声を震わせてヒルダを見つめる。
「はい…お久しぶりです。お父様…」
「おかえり、ヒルダ」
ハリスは泣き笑いのような顔を浮かべると、次の瞬間ヒルダを思い切り抱きしめた。
「た、ただいま…お父様…」
ヒルダはハリスの背中に手を回し…次の瞬間、大きな声を上げて泣き出した。
「お父様…!!ルドルフ…ルドルフが…っ!!私 ‥ルドルフを…あ、愛していたの…け、結婚の約束だって…していたのに…それなのに…!!」
そして激しく泣きじゃくる。
「ヒルダ…ああ、分ってる。分ってる。ヒルダ…」
ハリスは2年前に別れたヒルダが、すっかり背が伸びたのに、やせ細っていた姿が哀れでならなかった。
「ヒルダ、もうすぐルドルフの葬儀が始まる。だから…しっかり準備をして…お別れを告げるんだ…」
ハリスは泣きじゃくる娘の金の髪を撫でながら言う。
「だ、だけど…わ、私はルドルフとお別れなんて…悲しくて出来ないわ…!」
ヒルダはハリスにしがみついたまま激しく首を振る。
「駄目だ、ヒルダ。そんな様子では…ルドルフは安心して神の身元へ行けないだろう?」
「!」
「で、でも…」
するとハリスが言った。
「ヒルダ、悲しくて辛いのは…お前だけじゃない。ルドルフの両親は、たった1人きりの息子を亡くしてしまったんだぞ?」
その言葉にヒルダの肩がピクリと動く。
(そうだったわ…辛いのは私だけじゃない…ルドルフの両親だってすごく悲しんでる‥なのに私は自分だけ辛いと感じていた…)
ようやく少し冷静になれたヒルダは涙に濡れた顔を上げてハリスを見た。
「お父様…わ、私…ルドルフを見送る仕度をしてきます…」
「ああ、そうだな。もうあまり時間が無いからな」
その時、ハリスはようやくカミラの方を見た。
「カミラ…ヒルダが世話になっているな。本当に…ありがとう」
ハリスは声を掛けた。
「いいえ、とんでもございません。ハリス様」
カミラはさっと頭を下げる。
「カミラ、ヒルダを連れて屋敷へ入ってすぐに葬儀の準備をしてきてくれ」
「はい、かしこまりました。ヒルダ様、参りましょう」
「ええ…」
ヒルダは頷くと、ハリスから離れてカミラと共にエントランスに向かって歩き始める。
そしてその後ろ姿をエドガーとハリスは黙って見つめるのだった―。
2
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる