58 / 77
58 階段教室にて
しおりを挟む
大学へ到着して1限目の教室へ入ると、すでに階段教室の一番奥の窓際の席にキャロルが座っており、じっと教室の出入り口を見つめている姿が目に入った。
「あ!テアッ!」
キャロルは私を見ると笑顔で右手を振る。私も笑顔で手を振るとキャロルの席へ向かった。途中・・何やら視線を感じたので振り向くと、そこには斜め右前方に座ったヘンリーがじっと私を凝視している姿が目に入った。それを目にした私は無意識のうちに生卵が入った手提げバックを握り締めていた。もし、ヘンリーに何か言いがかりをつけられたら・・この生卵をぶつければいいだけ。そう自分に言い聞かせた。けれど・・今朝のヘンリーはいつになく、上質な服を着用している。まるでこれからデートにでも出掛けるような・・・。さすがにあのような上質な服を着ているヘンリーに生卵をぶつけるのはいささか悪い気がしてきた。しかし、母はあの姿のヘンリーを箒で追いはらい、私にいざというときにぶつけるようにと生卵を渡してきたのだ。
・・・大丈夫、母の許可も下りているし・・・万一の時は彼に生卵をぶつけよう。
自分自身に言い聞かせて、無理やり納得させた。
そんな事を考えながら、背中にヘンリーの視線を感じつつ・・・キャロルの元へ向かった。
「おはよう、テア。」
「おはよう、キャロル。」
言いながらカバンを下ろし、キャロルの隣に座ると早速話しかけてきた。
「ねえねえ、聞いてよ。テア。」
「ええ、なあに?」
「ほら・・・あそこにヘンリーが座っているでしょう?」
「え?ええ。そうね。」
ヘンリーは私たちに見られているくせに、堂々とこちらを凝視している。・・一体何を考えているのだろう?普通は・・バツが悪くて視線をそらせるべきでは?
「聞いてよ、彼ったらね・・・教室に入って来た途端・・私の隣に始め座ろうとしたのよ。おはようキャロル・・・ここに座ってもいいかなって?」
キャロルは上手にヘンリーの声真似をした。
「ええっ?!ほ、本当・・・?」
「そうなのよ。信じられないでしょう?」
この話を聞いて私は驚きを通り越して、呆れてしまった。確かヘンリーはキャロルに告白をして、別に好きな人がいるからと言って振られたと教えてくれた。それなのに?キャロルに話しかけて・・隣に座ろうとした?
キャロルとヘンリーが互いに好意を寄せていると勘違いしてしまった私も多少、どうかしているのかもしれないけれど、ヘンリーの思考は私の斜め上をいっているようだ。
「そ、それで・・・どうしたの?」
声を震わせながら尋ねてみた。
「勿論断ったに決まっているじゃない。私の隣は常にテアが座るのよって。そしたら・・。」
「そしたら?」
ゴクリと息を飲んで次のキャロルの言葉を待った。
「だったらテアに確認してくれないか?って言ってきたのよ?!2人の邪魔はしないから・・・どうか僕の事を邪険にしないで欲しいって。」
「えええっ?!うっ!ゴホッゴホッ!」
私は思わず大きな声を上げてしまい・・激しくむせる。周囲の人たちから視線を浴びてしまった。
「大丈夫?テア・・・落ち着いて?当然断ったに決まっているじゃない。」
キャロルは私の背中をさすりながら言う。
「そ、そうね・・・。あ、ありがとう・・。」
信じられない・・・ショックだった。まさか・・ヘンリーと私の思考がかぶってしまったなんて。やっぱり・・・10年も長く一緒にいると・・どこか似てしまうのだろうか?これは・・・非常にまずい。やはりヘンリーとは出来るだけ距離を開けなければ・・今に私はヘンリー色?に染まってしまうかもしれない・・などと考えているうちにニコルが教室に入ってきた。
「おはよう、テア、キャロル。」
「「おはよう、ニコル。」」
2人で声を揃えて挨拶する。
「隣・・座っていいかな?」
ニコルが笑みを浮かべながら私に尋ねてきた。
「ええ、もちろんよ。」
私が答えるとキャロルも言う。
「断るはずないでしょう?」
「そうか、良かった。」
「あ、待ってねニコル。今バッグをずらすから。」
座席に置いてあったバッグを自分の方に引き寄せるとニコルが尋ねてきた。
「あれ?何だい?テア。随分可愛らしいバッグを持っているね?」
手の平サイズのリネンで出来たミニバッグは男性の目から見ても可愛らしいようだ。
「ええ、可愛いでしょう?」
するとキャロルも覗き込んでくると歓声を上げた。
「まあ!本当・・可愛らしいバッグね。どうしたの?何か大切なものが入っているの?」
「ええ・・そうなの。」
「ふ~ん・・何が入っているか聞いてもいいかな?」
ニコルが興味津々の目で尋ねてきた。
「ええ、いいわよ。この中にはね・・・生卵が入っているの。」
「「生卵?」」
キャロルとニコルが同時に首を傾げ・・・次の説明で2人は大爆笑するのだった―。
「あ!テアッ!」
キャロルは私を見ると笑顔で右手を振る。私も笑顔で手を振るとキャロルの席へ向かった。途中・・何やら視線を感じたので振り向くと、そこには斜め右前方に座ったヘンリーがじっと私を凝視している姿が目に入った。それを目にした私は無意識のうちに生卵が入った手提げバックを握り締めていた。もし、ヘンリーに何か言いがかりをつけられたら・・この生卵をぶつければいいだけ。そう自分に言い聞かせた。けれど・・今朝のヘンリーはいつになく、上質な服を着用している。まるでこれからデートにでも出掛けるような・・・。さすがにあのような上質な服を着ているヘンリーに生卵をぶつけるのはいささか悪い気がしてきた。しかし、母はあの姿のヘンリーを箒で追いはらい、私にいざというときにぶつけるようにと生卵を渡してきたのだ。
・・・大丈夫、母の許可も下りているし・・・万一の時は彼に生卵をぶつけよう。
自分自身に言い聞かせて、無理やり納得させた。
そんな事を考えながら、背中にヘンリーの視線を感じつつ・・・キャロルの元へ向かった。
「おはよう、テア。」
「おはよう、キャロル。」
言いながらカバンを下ろし、キャロルの隣に座ると早速話しかけてきた。
「ねえねえ、聞いてよ。テア。」
「ええ、なあに?」
「ほら・・・あそこにヘンリーが座っているでしょう?」
「え?ええ。そうね。」
ヘンリーは私たちに見られているくせに、堂々とこちらを凝視している。・・一体何を考えているのだろう?普通は・・バツが悪くて視線をそらせるべきでは?
「聞いてよ、彼ったらね・・・教室に入って来た途端・・私の隣に始め座ろうとしたのよ。おはようキャロル・・・ここに座ってもいいかなって?」
キャロルは上手にヘンリーの声真似をした。
「ええっ?!ほ、本当・・・?」
「そうなのよ。信じられないでしょう?」
この話を聞いて私は驚きを通り越して、呆れてしまった。確かヘンリーはキャロルに告白をして、別に好きな人がいるからと言って振られたと教えてくれた。それなのに?キャロルに話しかけて・・隣に座ろうとした?
キャロルとヘンリーが互いに好意を寄せていると勘違いしてしまった私も多少、どうかしているのかもしれないけれど、ヘンリーの思考は私の斜め上をいっているようだ。
「そ、それで・・・どうしたの?」
声を震わせながら尋ねてみた。
「勿論断ったに決まっているじゃない。私の隣は常にテアが座るのよって。そしたら・・。」
「そしたら?」
ゴクリと息を飲んで次のキャロルの言葉を待った。
「だったらテアに確認してくれないか?って言ってきたのよ?!2人の邪魔はしないから・・・どうか僕の事を邪険にしないで欲しいって。」
「えええっ?!うっ!ゴホッゴホッ!」
私は思わず大きな声を上げてしまい・・激しくむせる。周囲の人たちから視線を浴びてしまった。
「大丈夫?テア・・・落ち着いて?当然断ったに決まっているじゃない。」
キャロルは私の背中をさすりながら言う。
「そ、そうね・・・。あ、ありがとう・・。」
信じられない・・・ショックだった。まさか・・ヘンリーと私の思考がかぶってしまったなんて。やっぱり・・・10年も長く一緒にいると・・どこか似てしまうのだろうか?これは・・・非常にまずい。やはりヘンリーとは出来るだけ距離を開けなければ・・今に私はヘンリー色?に染まってしまうかもしれない・・などと考えているうちにニコルが教室に入ってきた。
「おはよう、テア、キャロル。」
「「おはよう、ニコル。」」
2人で声を揃えて挨拶する。
「隣・・座っていいかな?」
ニコルが笑みを浮かべながら私に尋ねてきた。
「ええ、もちろんよ。」
私が答えるとキャロルも言う。
「断るはずないでしょう?」
「そうか、良かった。」
「あ、待ってねニコル。今バッグをずらすから。」
座席に置いてあったバッグを自分の方に引き寄せるとニコルが尋ねてきた。
「あれ?何だい?テア。随分可愛らしいバッグを持っているね?」
手の平サイズのリネンで出来たミニバッグは男性の目から見ても可愛らしいようだ。
「ええ、可愛いでしょう?」
するとキャロルも覗き込んでくると歓声を上げた。
「まあ!本当・・可愛らしいバッグね。どうしたの?何か大切なものが入っているの?」
「ええ・・そうなの。」
「ふ~ん・・何が入っているか聞いてもいいかな?」
ニコルが興味津々の目で尋ねてきた。
「ええ、いいわよ。この中にはね・・・生卵が入っているの。」
「「生卵?」」
キャロルとニコルが同時に首を傾げ・・・次の説明で2人は大爆笑するのだった―。
252
あなたにおすすめの小説
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください
ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。
やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが……
クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。
さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。
どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。
婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。
その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。
しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。
「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
我慢しないことにした結果
宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる