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2-2 アリアドネの望み
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アリアドネにあてがわれた部屋は床も壁も天井も全て木で出来ているどこか温もりが感じられる部屋だった。木製のベッドに木製のクローゼット。そして木製のテーブルに椅子…。
狭い部屋では合ったが、ステニウス伯爵家で使用人と同様の扱いを受けていたアリアドネにとっては十分満足する部屋だったが、気に入った理由はそれだけでは無い。
「各部屋に暖炉がついているのはありがたいわね」
暖炉を見ながらアリアドネは笑みを浮かべた。
アイゼンシュタット領地は『レビアス』王国の中で一番北にある為、とても寒い土地だった。11月半ばにもなると大地はすっかり雪で覆われてしまうのだと、使用人達から聞かされていた。
「以前の私の部屋には暖炉が無かったから真冬は寒くて辛かったけど…ここには暖炉があるのですものね…」
アリアドネは窓の外を眺めた。空には満天の冬の星空が瞬き、とても幻想的で美しい光景だった。
アイゼンシュタットで働く使用人達は過酷な環境で働きながらも誰もが笑顔で気さくな人達ばかりであった。
「ずっと…ここにいられればいいのに…。使用人として、私もこの城に置いてもらえないかしら…」
アリアドネはポツリと呟いた。
この城がどんな役割を担っているのか改めてマリア達から聞かされ、並大抵の覚悟が無ければここで生活出来ない事を思い知らされたけれども…それでもここに置かせてもらいたいとアリアドネは強く願っていたのだ。
明日、シュミットは自分に会いにこの宿舎へ来ることになっている。その時にこの城に置かせてもらいたいと願い出よう…。
アリアドネは心にそう決めるのだった―。
****
翌朝―
ガンガンガンガン…!
突如、廊下に何かを激しく打ち鳴らす音が響き渡った。
「えっ?!何?!」
今迄聞いたことがない大きな音に驚いたアリアドネは慌てて飛び起きると部屋の扉を開けた。すると寮長のマリアが紐で吊った丸い銅製の円盤を木の棒で叩きながら廊下を歩いている姿を発見した。
「あら、アリアドネ」
マリアは扉から顔をのぞかせたアリアドネに気が付き、声を掛けてきた。
「おはよう、アリアドネ。よく眠れたかしら?」
「は、はい。眠れましたけど…それは一体何ですか?」
アリアドネはマリアの手にしている楽器のような物を指さした。
「ああ、これはね『ドラ』って言う…まぁ楽器のようなものだよ。これを打ち鳴らして皆を起こしているのさ。有事の際はそれだけじゃないんだけどね」
「そうなのですね…」
すると突然マリアが慌てた。
「あらいやだっ!私ったらつい、いつものくせでお客さんがいるのに『ドラ』を叩いてアリアドネを起こしてしまったわね。ごめんなさい」
「いえ、いいんです!私の事は…お客様扱いしないで下さい」
アリアドネは手を振って訴えた。
「え?アリアドネ…?」
マリアが首を傾げた時、扉が次々と開かれて使用人たちがぞろぞろと廊下に現れた。その中にはイゾルネの姿もあった。
「おはよう、マリア…。あれ?アリアドネも起きてしまったのかい?」
イゾルネがアリアドネに気付き、声を掛けてきた。
「おはようございます。イゾルネさん」
アリアドネは頭を下げた。
「ついうっかりして、私が起こしてしまったんだよ。まだ夜が開けたばかりだからアリアドネは寝ていても構わないんだよ?私達はこれから仕事があるから働かなくちゃならないけどね」
マリアが笑顔で話しかける。
「いえ!私も働きます。どうかお手伝いさせて下さい!」
アリアドネは頭を下げ、マリアとイゾルネはその姿に顔を見合わせるのだった―。
****
午前9時―
シュミットが城の地下にある訓練場をこっそり覗いてみると、そこには既に騎士達を相手にエルウィンが訓練を行っている姿があった。
「おいっ!そこのお前っ!動きが鈍いっ!もっと素早く動けっ!お前は剣の振り方が甘い!そんなことでは真っ先に切られてしまうぞっ!」
エルウィンは騎士達に次々と檄を飛ばしている。
「全く…事務仕事もあれくらい熱心にやって下さればいいのに…だが、今なら城を抜け出しても見つからないだろう…」
シュミットは呟くと、急いで地上へ出る階段を駆け上って行った。
アリアドネに会いに行く為に―。
狭い部屋では合ったが、ステニウス伯爵家で使用人と同様の扱いを受けていたアリアドネにとっては十分満足する部屋だったが、気に入った理由はそれだけでは無い。
「各部屋に暖炉がついているのはありがたいわね」
暖炉を見ながらアリアドネは笑みを浮かべた。
アイゼンシュタット領地は『レビアス』王国の中で一番北にある為、とても寒い土地だった。11月半ばにもなると大地はすっかり雪で覆われてしまうのだと、使用人達から聞かされていた。
「以前の私の部屋には暖炉が無かったから真冬は寒くて辛かったけど…ここには暖炉があるのですものね…」
アリアドネは窓の外を眺めた。空には満天の冬の星空が瞬き、とても幻想的で美しい光景だった。
アイゼンシュタットで働く使用人達は過酷な環境で働きながらも誰もが笑顔で気さくな人達ばかりであった。
「ずっと…ここにいられればいいのに…。使用人として、私もこの城に置いてもらえないかしら…」
アリアドネはポツリと呟いた。
この城がどんな役割を担っているのか改めてマリア達から聞かされ、並大抵の覚悟が無ければここで生活出来ない事を思い知らされたけれども…それでもここに置かせてもらいたいとアリアドネは強く願っていたのだ。
明日、シュミットは自分に会いにこの宿舎へ来ることになっている。その時にこの城に置かせてもらいたいと願い出よう…。
アリアドネは心にそう決めるのだった―。
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翌朝―
ガンガンガンガン…!
突如、廊下に何かを激しく打ち鳴らす音が響き渡った。
「えっ?!何?!」
今迄聞いたことがない大きな音に驚いたアリアドネは慌てて飛び起きると部屋の扉を開けた。すると寮長のマリアが紐で吊った丸い銅製の円盤を木の棒で叩きながら廊下を歩いている姿を発見した。
「あら、アリアドネ」
マリアは扉から顔をのぞかせたアリアドネに気が付き、声を掛けてきた。
「おはよう、アリアドネ。よく眠れたかしら?」
「は、はい。眠れましたけど…それは一体何ですか?」
アリアドネはマリアの手にしている楽器のような物を指さした。
「ああ、これはね『ドラ』って言う…まぁ楽器のようなものだよ。これを打ち鳴らして皆を起こしているのさ。有事の際はそれだけじゃないんだけどね」
「そうなのですね…」
すると突然マリアが慌てた。
「あらいやだっ!私ったらつい、いつものくせでお客さんがいるのに『ドラ』を叩いてアリアドネを起こしてしまったわね。ごめんなさい」
「いえ、いいんです!私の事は…お客様扱いしないで下さい」
アリアドネは手を振って訴えた。
「え?アリアドネ…?」
マリアが首を傾げた時、扉が次々と開かれて使用人たちがぞろぞろと廊下に現れた。その中にはイゾルネの姿もあった。
「おはよう、マリア…。あれ?アリアドネも起きてしまったのかい?」
イゾルネがアリアドネに気付き、声を掛けてきた。
「おはようございます。イゾルネさん」
アリアドネは頭を下げた。
「ついうっかりして、私が起こしてしまったんだよ。まだ夜が開けたばかりだからアリアドネは寝ていても構わないんだよ?私達はこれから仕事があるから働かなくちゃならないけどね」
マリアが笑顔で話しかける。
「いえ!私も働きます。どうかお手伝いさせて下さい!」
アリアドネは頭を下げ、マリアとイゾルネはその姿に顔を見合わせるのだった―。
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午前9時―
シュミットが城の地下にある訓練場をこっそり覗いてみると、そこには既に騎士達を相手にエルウィンが訓練を行っている姿があった。
「おいっ!そこのお前っ!動きが鈍いっ!もっと素早く動けっ!お前は剣の振り方が甘い!そんなことでは真っ先に切られてしまうぞっ!」
エルウィンは騎士達に次々と檄を飛ばしている。
「全く…事務仕事もあれくらい熱心にやって下さればいいのに…だが、今なら城を抜け出しても見つからないだろう…」
シュミットは呟くと、急いで地上へ出る階段を駆け上って行った。
アリアドネに会いに行く為に―。
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