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12-9 根拠のない噂話
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その日の夕方――
ミカエルとウリエルは夕食までの間、城に招かれている家庭教師から出された課題の自主学習をしていた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
文字の練習をしていたウリエルが計算問題を解いているミカエルに話しかけた。
「何?」
計算問題から目をそらさずに返事をするミカエル。
「リアはエルウィン様の事好きなのかなぁ?」
「う~ん。どうなんだろう?でも僕はエルウィン様のお嫁さんにはリアがいいと思うな
ミカエルは顔を上げて答えた。
「そうだよね。ゾーイより、よっぽどリアのほうがいいよ。お兄ちゃんもそう思わない?」
「うん、そうだね。僕もエルウィン様とリアはお似合いだと思うよ。だけど、リアはエルウィン様の事、どう思っているんだろう?」
「そうだよね。でも僕、エルウィン様と結婚するならリアがいいよ」
ウリエルの言葉に頷くミカエル。
「うん、僕もそう思うよ。そうだ!だったら、僕達で協力してあげるんだよ」
いつの間にか、ミカエルもウリエルも勉強の手を止めて話をするのに夢中になっていた。
「どうするの?」
ウリエルは興奮気味にミカエルに尋ねる。
「つまり僕とウリエルの2人で、エルウィン様はリアのことが好きだっていう話を広めてあげればいいんだよ」
「そうだね!それがいいね!」
「よし、それじゃすぐに城の皆に言いに行こう!」
「うん!」
こうして2人は勉強をそっちのけに、部屋を飛び出していった。
そして無邪気な子供たちによって、たちまちエルウィンはアリアドネのことが好きだと言う話は広まっていった。
しかも、尾ヒレが付いた状態で……。
****
同日21時――
今宵エルウィンは珍しく1人きりで遅めの食事をダイニングルームでとっていた。
ある違和感を感じながら。
その違和感とは……。
「ん?」
メインディッシュの肉を切り分けていた時、エルウィンは視線を感じて顔を上げた。
すると給仕のフットマンが自分をじっと凝視していたのである。
「何だ?」
「い、いえ。何かお味はどうかと思いまして」
フットマンは笑み浮かべて答える。
「うん、いつも通り今夜もうまい」
「作用でございますか。それは良かったです」
次に視線を感じたのはワインを飲んでいるときの事だった。
(うん?何か視線を感じるな……)
視線の先を振り向くと、先程とは別のフットマンがエルウィンをじっと見つめていた。
「どうしたんだ?」
「あ…そ、そのワインをお注ぎしましょうか?」
「そうだな」
エルウィンは手持ちのワイングラスを一気に飲み干すと、テーブルの上に置いた。
「注いでくれ」
「はい、かしこまりました」
フットマンの手によって、ワインが注がれる様子を見つめながらエルウィンは思った。
何やら城の者達の様子がおかしいと……。
****
その頃――
シュミットの部屋で、声が響き渡った。
「何だってっ?!それは本当の話なのかっ?!」
声を上げた人物は他でもない、シュミットである。
「ああ、間違いない。俺はその話を部下から直接聞いたんだよ。一番初めに聞いた時は我が耳を疑ったよ」
スティーブはシュミットの部屋で興奮気味に話をしている。
「そんな…信じられない。一体どういうことだ?エルウィン様がアリアドネ様に結婚を申し込んだなどと……我々に何も相談も無く……?」
シュミットの声は何処か落ち込んでいた。
「大将…水臭いじゃないか。まさか俺たちに気を使って…?」
エルウィンの2人の幼馴染はため息をつく。
そして肝心のエルウィンは、根も葉も無い噂話が広がっていることにまだ何も気付いてはいなかった――。
ミカエルとウリエルは夕食までの間、城に招かれている家庭教師から出された課題の自主学習をしていた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
文字の練習をしていたウリエルが計算問題を解いているミカエルに話しかけた。
「何?」
計算問題から目をそらさずに返事をするミカエル。
「リアはエルウィン様の事好きなのかなぁ?」
「う~ん。どうなんだろう?でも僕はエルウィン様のお嫁さんにはリアがいいと思うな
ミカエルは顔を上げて答えた。
「そうだよね。ゾーイより、よっぽどリアのほうがいいよ。お兄ちゃんもそう思わない?」
「うん、そうだね。僕もエルウィン様とリアはお似合いだと思うよ。だけど、リアはエルウィン様の事、どう思っているんだろう?」
「そうだよね。でも僕、エルウィン様と結婚するならリアがいいよ」
ウリエルの言葉に頷くミカエル。
「うん、僕もそう思うよ。そうだ!だったら、僕達で協力してあげるんだよ」
いつの間にか、ミカエルもウリエルも勉強の手を止めて話をするのに夢中になっていた。
「どうするの?」
ウリエルは興奮気味にミカエルに尋ねる。
「つまり僕とウリエルの2人で、エルウィン様はリアのことが好きだっていう話を広めてあげればいいんだよ」
「そうだね!それがいいね!」
「よし、それじゃすぐに城の皆に言いに行こう!」
「うん!」
こうして2人は勉強をそっちのけに、部屋を飛び出していった。
そして無邪気な子供たちによって、たちまちエルウィンはアリアドネのことが好きだと言う話は広まっていった。
しかも、尾ヒレが付いた状態で……。
****
同日21時――
今宵エルウィンは珍しく1人きりで遅めの食事をダイニングルームでとっていた。
ある違和感を感じながら。
その違和感とは……。
「ん?」
メインディッシュの肉を切り分けていた時、エルウィンは視線を感じて顔を上げた。
すると給仕のフットマンが自分をじっと凝視していたのである。
「何だ?」
「い、いえ。何かお味はどうかと思いまして」
フットマンは笑み浮かべて答える。
「うん、いつも通り今夜もうまい」
「作用でございますか。それは良かったです」
次に視線を感じたのはワインを飲んでいるときの事だった。
(うん?何か視線を感じるな……)
視線の先を振り向くと、先程とは別のフットマンがエルウィンをじっと見つめていた。
「どうしたんだ?」
「あ…そ、そのワインをお注ぎしましょうか?」
「そうだな」
エルウィンは手持ちのワイングラスを一気に飲み干すと、テーブルの上に置いた。
「注いでくれ」
「はい、かしこまりました」
フットマンの手によって、ワインが注がれる様子を見つめながらエルウィンは思った。
何やら城の者達の様子がおかしいと……。
****
その頃――
シュミットの部屋で、声が響き渡った。
「何だってっ?!それは本当の話なのかっ?!」
声を上げた人物は他でもない、シュミットである。
「ああ、間違いない。俺はその話を部下から直接聞いたんだよ。一番初めに聞いた時は我が耳を疑ったよ」
スティーブはシュミットの部屋で興奮気味に話をしている。
「そんな…信じられない。一体どういうことだ?エルウィン様がアリアドネ様に結婚を申し込んだなどと……我々に何も相談も無く……?」
シュミットの声は何処か落ち込んでいた。
「大将…水臭いじゃないか。まさか俺たちに気を使って…?」
エルウィンの2人の幼馴染はため息をつく。
そして肝心のエルウィンは、根も葉も無い噂話が広がっていることにまだ何も気付いてはいなかった――。
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