282 / 376
15-12 波乱の夜会 10
しおりを挟む
「大体、何故アリアドネはそんな状態になっている?お前が何かしたのではないか?」
エルウィンは今にも腰に差してある剣を抜きそうな勢いで青年に詰め寄る。
「それは誤解です。この女性は1人、壁の花状態になっていたので私が声を掛けただけです。幸い私も1人だったものですから。まさかパートナーの相手がバルコニーで別の女性と会っているとは誰も思いませんからね」
青年は未だにぐったりしているアリアドネを抱き寄せたまま、チラリとミレーユを見つめた。
ミレーユはその視線にビクリとなった。
「この女と俺はお前が思うような関係では無い!それよりも早くアリアドネを渡せ!彼女は俺の婚約者だ!」
エルウィンはアリアドネが自分以外の男の腕の中にいるのが許せず、婚約が決定事項でも無いのに、言い切った。今のエルウィンはまるで戦場にでもいるかの如く、身体の血が熱くなっている。
「アリアドネ?そうですか、この女性はアリアドネという名前なのですか?成程、名前も外見に劣らず美しい」
青年はエルウィンの鋭い眼光にもひるむことなく、アリアドネの髪を一房救い上げるとその髪にキスをした。
その様子にエルウィンだけでなく、ミレーユも驚いた。
「貴様っ!!何をするっ!!」
咄嗟に剣を抜こうとするエルウィンにミレーユは驚き、叫んだ。
「キャアッ!!エルウィン様っ!王宮内で御無体はおよしになって下さいっ!!」
「チッ!」
忌々し気に剣から手を下ろすと、青年は口角を上げた。
「エルウィン……?もしやエルウィン・アイゼンシュタット辺境伯か?」
「ああ、そうだ。俺のことをよく知っているようだな?だったら俺の話は知っているだろう?早くアリアドネを放せ」
怒気を含んだ声でエルウィンは男を睨みつける。
すると、ミレーユが突然青年に声を掛けた。
「どこのどなたかは存じませんが、その娘は私の妹のアリアドネです。私の代わりにこちらにいらっしゃいます辺境伯様の妻になる為に城に身を寄せております。なので、どうぞ妹を辺境伯様にお返し下さいませ」
「何?」
エルウィンは先ほどのミレーユの態度が一転したことが信じられなかった。
しかし、次にミレーユはとんでもない台詞を口にする。
「代わりに、私がお相手致します。その娘は貴族令嬢としての嗜みを一切受けておりませんので貴方のような高貴なお方にはふさわしくない相手ですわ」
ミレーユは青年の服装から、只者では無いと察していた。
(何だと?!この女……一体何を言い出すのだっ?!)
エルウィンはミレーユの台詞に驚いた。
すると……。
「アハハハハハ……」
何がおかしいのか、青年は笑った。
「成程……辺境伯。貴殿はこの国を守る為の重要な要だ。大切な女性というのであればお返しいたしましょう」
そして青年はすっかり意識を無くしているアリアドネを抱き上げるとエルウィンの元へ運ぶ。
「アリアドネッ!」
エルウィンはアリアドネに駆け寄ると、まるで青年の腕から奪うように抱き寄せると、青年を睨みつけた。
「今度、アリアドネに近付こうものなら容赦はしない」
「……分かりました。覚えておきましょう」
青年は意味深な笑みを浮かべると、パーティー会場へと戻って行く。
「あ!お待ち下さい!」
性懲りも無く、青年の後をミレーユは追い……バルコニーにはエルウィンと、朦朧とした意識のまま抱きかかえられるアリアドネの二人きりとなった。
「アリアドネ……」
エルウィンは自分の腕の中で眠りに就いているアリアドネの額にそっとキスをし、夜空を見上げた――。
エルウィンは今にも腰に差してある剣を抜きそうな勢いで青年に詰め寄る。
「それは誤解です。この女性は1人、壁の花状態になっていたので私が声を掛けただけです。幸い私も1人だったものですから。まさかパートナーの相手がバルコニーで別の女性と会っているとは誰も思いませんからね」
青年は未だにぐったりしているアリアドネを抱き寄せたまま、チラリとミレーユを見つめた。
ミレーユはその視線にビクリとなった。
「この女と俺はお前が思うような関係では無い!それよりも早くアリアドネを渡せ!彼女は俺の婚約者だ!」
エルウィンはアリアドネが自分以外の男の腕の中にいるのが許せず、婚約が決定事項でも無いのに、言い切った。今のエルウィンはまるで戦場にでもいるかの如く、身体の血が熱くなっている。
「アリアドネ?そうですか、この女性はアリアドネという名前なのですか?成程、名前も外見に劣らず美しい」
青年はエルウィンの鋭い眼光にもひるむことなく、アリアドネの髪を一房救い上げるとその髪にキスをした。
その様子にエルウィンだけでなく、ミレーユも驚いた。
「貴様っ!!何をするっ!!」
咄嗟に剣を抜こうとするエルウィンにミレーユは驚き、叫んだ。
「キャアッ!!エルウィン様っ!王宮内で御無体はおよしになって下さいっ!!」
「チッ!」
忌々し気に剣から手を下ろすと、青年は口角を上げた。
「エルウィン……?もしやエルウィン・アイゼンシュタット辺境伯か?」
「ああ、そうだ。俺のことをよく知っているようだな?だったら俺の話は知っているだろう?早くアリアドネを放せ」
怒気を含んだ声でエルウィンは男を睨みつける。
すると、ミレーユが突然青年に声を掛けた。
「どこのどなたかは存じませんが、その娘は私の妹のアリアドネです。私の代わりにこちらにいらっしゃいます辺境伯様の妻になる為に城に身を寄せております。なので、どうぞ妹を辺境伯様にお返し下さいませ」
「何?」
エルウィンは先ほどのミレーユの態度が一転したことが信じられなかった。
しかし、次にミレーユはとんでもない台詞を口にする。
「代わりに、私がお相手致します。その娘は貴族令嬢としての嗜みを一切受けておりませんので貴方のような高貴なお方にはふさわしくない相手ですわ」
ミレーユは青年の服装から、只者では無いと察していた。
(何だと?!この女……一体何を言い出すのだっ?!)
エルウィンはミレーユの台詞に驚いた。
すると……。
「アハハハハハ……」
何がおかしいのか、青年は笑った。
「成程……辺境伯。貴殿はこの国を守る為の重要な要だ。大切な女性というのであればお返しいたしましょう」
そして青年はすっかり意識を無くしているアリアドネを抱き上げるとエルウィンの元へ運ぶ。
「アリアドネッ!」
エルウィンはアリアドネに駆け寄ると、まるで青年の腕から奪うように抱き寄せると、青年を睨みつけた。
「今度、アリアドネに近付こうものなら容赦はしない」
「……分かりました。覚えておきましょう」
青年は意味深な笑みを浮かべると、パーティー会場へと戻って行く。
「あ!お待ち下さい!」
性懲りも無く、青年の後をミレーユは追い……バルコニーにはエルウィンと、朦朧とした意識のまま抱きかかえられるアリアドネの二人きりとなった。
「アリアドネ……」
エルウィンは自分の腕の中で眠りに就いているアリアドネの額にそっとキスをし、夜空を見上げた――。
52
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる