4 / 22
そういえば
しおりを挟むイアーゴ・ドミンゴは、2番目の彼女とのデートを終え、機嫌よく帰宅した。
今日の相手はエミリー・プラント、準男爵家の娘で、イアーゴの今1番のお気に入りだ。
少々学が足りないが、平民の彼女たちよりはましな振る舞いができるし、顔立ちもまあまあ華やかだ。
多少のマナーは知っているので、貴族街の店を連れて歩いても問題ない。
そういう意味では男爵令嬢のレアが一番連れ回しやすかったが、あと少しで彼女の婚約者が国外勤務を終えて帰って来るので、そろそろ関係を終わりにしないといけないのだ。
エミリーもレアの様に遊ぶ金目当てだろうが、呼び出せばいつでも飛んでくるし、どこにでも付いてくる。そして、帰れと言えば文句を言わずにすぐ帰る。
イアーゴにとって、エミリーはレア同様、面倒がない女だった。
・・・まあ、結婚相手には向かないけどな。
俺ならば、レアもエミリーも妻には選ばない。
そう思いながら扉を開ければ、執事たちがイアーゴを出迎えた。
「お帰りなさいませ、イアーゴ坊ちゃま」
頭を下げる執事やメイドたち。
イアーゴは小さく「ああ」と答えた。
子爵家にしては広い屋敷、美しく整えられた庭園、それなりに多い使用人たち。
両親からは自由にできる金も潤沢に与えられていて、何に使っても文句など言われない。
今日の様に婚約者でない女と遊び歩いても、叱られる事はない。
だって、叱る立場にある彼の両親は、いつも不在なのだ。
そういえば2人の顔を最後に見たのはいつだったかな、とイアーゴは思案した。
たぶん父はふた月以上は前で、母の顔は20日くらい見ていない気がする。
あの2人はイアーゴが何をしているのか知らないだろう。きっと興味すらない。
彼らは忙しいのだ、仕事でか遊びでかは知らないが。
―――いや、嘘だ。
イアーゴは苦笑しながら首を振った。
本当は知っている。
両親がどこで、何をしているのか。誰といるのか。
・・・知っていても、だから何だって話だけどね。
どうせ会えないし、話もできない。
会えたとしても、風が通り過ぎるように一瞬だけだ。
だから、あの2人の事は考えるだけ馬鹿馬鹿しい。
そう結論を下したイアーゴは、執事に言った。
「今日の夕食は遅めにして。ちょっと甘いものを食べすぎちゃって、まだあまりお腹が空いてないんだ」
「畏まりました」
どさりと椅子に腰かけ、机の上に重ねられた書類やら何やらをいたずらに弄びながら、イアーゴはつらつらと考える。
エミリーは甘いものが好きだから、会うとついついそういう店ばかりを選んでしまうんだよな。
でも、今日でめぼしい所はだいたい回っちゃったから、また別の店を見つけておかないと―――
「・・・あれ?」
机上のトレイ、イアーゴ宛ての手紙が置かれる場所であるそこに手が伸びた時に、はたと気づく。
そういえば最近、受け取っていない気がする。
いつも週に一度は届いてる手紙が。
「珍しいな。セシリエが書き忘れるなんて」
うっかりさんなところがあったとは新しい発見だ、とイアーゴは笑った。
セシリエ・ハンメル。
真面目で、しっかり者で、よく気が利くイアーゴの婚約者。
なかなか賢くて可愛い、お嫁さんにするのにぴったりの女の子。
いつも婚約者のイアーゴの事を考えてくれて、贈り物や手紙を欠かさない。
「あれ? でも・・・」
そういえば、最後に手紙を受け取ったのはいつだろう。
505
あなたにおすすめの小説
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
完結 振り向いてくれない彼を諦め距離を置いたら、それは困ると言う。
音爽(ネソウ)
恋愛
好きな人ができた、だけど相手は振り向いてくれそうもない。
どうやら彼は他人に無関心らしく、どんなに彼女が尽くしても良い反応は返らない。
仕方なく諦めて離れたら怒りだし泣いて縋ってきた。
「キミがいないと色々困る」自己中が過ぎる男に彼女は……
完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて
音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。
しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。
一体どういうことかと彼女は震える……
融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。
音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。
格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。
正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。
だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。
「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。
【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして
Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。
公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。
周囲にそう期待されて育って来た。
だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。
そんなある日、
殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。
決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう──
婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。
しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、
リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に……
※先日、完結した、
『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』
に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。
完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます
音爽(ネソウ)
恋愛
妹至上主義のシスコン王子、周囲に諌言されるが耳をを貸さない。
調子に乗る王女は王子に婚約者リリジュアについて大嘘を吹き込む。ほんの悪戯のつもりが王子は信じ込み婚約を破棄すると宣言する。
裏切ったおぼえがないと令嬢は反論した。しかし、その嘘を真実にしようと言い出す者が現れて「私と婚約してバカ王子を捨てないか?」
なんとその人物は隣国のフリードベル・インパジオ王太子だった。毒親にも見放されていたリリジュアはその提案に喜ぶ。だが王太子は我儘王女の想い人だった為に王女は激怒する。
後悔した王女は再び兄の婚約者へ戻すために画策するが肝心の兄テスタシモンが受け入れない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる