【完結】恋人にしたい人と結婚したい人とは別だよね?―――激しく同意するので別れましょう

冬馬亮

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鈍い者同士

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「待たせたな」

「いえ。こちらこそ急なお願いを」


家族との会話もそこそこに、まずは風呂で旅の汚れを流したセオドアは、客人を待たせている応接室に入った。
客人とはもちろんエーリッヒだ。


「すみません。面会の予約だけのつもりが、こうして話まで」

「ついでだから構わないよ。それで、相談って?」

「・・・はい、あの、これを見ていただけますか?」


エーリッヒはテーブルの上に字でびっしりと埋まった紙の束を置いた。


「ほう?」


セオドアの目がきらりと光る。
てっきり、セシリエとの将来についての「相談」だと思ったのに、エーリッヒの出方が予想と違っていたからだ。



「僕の夢は、ケーキショップのオーナーです。色々と仕事を掛け持ちして、資金を貯めています。でも、まだ目標額の半分にも達していません」

「そうか。先は長いな」

「はい。なので、これを考えてお父さんに持って行く事にしました。本当は店を持って、きちんとしてからお話をするつもりでしたけど、そうも言ってられなくて」

「ふむ、じゃあこれは、アイデア料を俺からもらうつもりで?」

「それも考えましたが、もしこの案を採用いただけるなら、代わりのものをお願いしたいです」


テーブルの上、セオドアが見るのは建物の図面と、細かな説明書き、必要予算や収益の見込みなどが書かれた数字の羅列。
それからセオドアが商会で扱っている多岐にわたる品々の名称とその店名だ。


「・・・なるほど。確かに儲かるかもしれん。で、お前が欲しいのはこれだな?」


セオドアは図面の一箇所を指で示し、にやりと笑う。



「僕が望むのは3年分です」

「1年だな」

「・・・3年でお願いします」

「1年半」

「・・・あの、3年で」

「1年と10か月」

「・・・さん、3年・・・」


段々と尻つぼみになっていくエーリッヒの声に、セオドアがたまらずぷっと吹き出した。


「お前、商人に向いてないな。バカ正直すぎる。最初から目当ての数字を口にしてどうする? こういう時はな、ちょっと多めに言っておくもんなんだよ。そうすれば交渉して下げられても目標近くで収まる」

「な、なるほど」


勉強になります、と頭を下げるエーリッヒを見て、セオドアの口角が更に緩んだ。


「で? 見込みが立ったところでどうする気だ? うちのセシと婚約したいとか?」

「いえ。セシリエさんの気持ちも重要なので、まずは告白する許可をもらえますか? もし嫌いだと言われたら・・・ショックですけど、潔く諦めますので」

「・・・はあ? 嫌い? セシが? まさかお前を?」

「・・・嫌われてはいないと、そう思いたいですけど・・・人の心は、他者からは推し量れませんからね・・・」


はあ、と悩ましく溜め息を吐くエーリッヒを見て、セオドアは「おいおい」と頭を抱えた。


「鈍い者同士かよ。道理で何年経っても進展しない訳だ・・・」







―――さて。


この後、セオドアとエーリッヒとの交渉は成立し、アイデア料代わりに提示した年数は、結局2年で落ち着いた。


話し合いを終えたエーリッヒは、緊張の面持ちでセシリエのいる部屋に向かう。


もちろん、告白する為だ。



果たしてその結果は―――



 




~~~~
エーリッヒが出した案については次話で。
でも、もう予想ついちゃったかも?

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