【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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俺の憧れ、俺の誇り

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「両者、前へ!」

その声に、2人の騎士が鍛錬上の中央に進み出る。
手に握るのは、模造剣だ。

「構え。……始めっ!」

開始の声と同時に、激しい打ち合いが始まる。
模造剣とは思えない、身を切られそうな緊張感と迫力で。

「すごいね。さすが騎士団員だ」

目の前で見る試合の迫力に圧倒されながら、ぽつりと呟いたレオンの声に、俺はただ黙って頷いた。

「この騎士団の団長から剣を教わってるんだろ? すごいな、ケインは」
「俺の剣筋はまだまだ未熟だ。打ち合いも長く続かない」
「いや、だってさ、騎士と比べたら、普通みんな未熟だろう? ふふ、ケインは相変わらず真面目だな」

……うーむ、まただ。
真面目、真面目、真面目。

なんだか最近、この言葉をよくかけられる。
馬鹿にするふうでもなく、妙に感心されながら。

自分のどこが真面目なのか、よくわからないから返事に困るのだが。

カンッ!

鈍く響いた大きな音に、俺たちの意識が試合に引き戻される。
片方の騎士が、相手の模造剣を下から打ち上げ、跳ね飛ばしたのだ。

「ふふ、すごいね」
「ああ」

今日は、いわゆる御前試合というものが開かれている。
と言っても、騎士団員全員が参加するわけではなく、各部隊から5人ずつを選抜し、全部隊総当たり形式で優勝者を決定するらしい。
選抜される5人も年齢枠があり、一定年齢以上は出場できないことになっている。

つまり、これは若手騎士の腕を競うためのものなのだ。

当然、ライナスも出ている。
そして、今のところ、ほぼ瞬殺に近い速さで試合を決めてきたのだ。

総当たり戦もかなり終盤にきており、残るは最後の2人。
1人はもちろんライナス。そしてもう1人はライナスよりも少し年上の、紺の髪の騎士。
背も頭一つほど高い。

各部隊5人ずつとはいえ、部隊は全部で12個隊ある、つまり総勢60人だ。
これまで試合を繰り返して、最終戦近くとなれば、勝ち残った騎士たちの体力は当然、疲労もたまって満身創痍であるはずだが……。

ライナスは、他の騎士たちと比べ、まだ体力に余裕があるように見える。
恐らく普段の鍛錬量の多さが、ものを言うのだろう。

思えば、連日すべての通常訓練をこなしたうえで、俺と団長との稽古にも加わり、さらにその後の俺の自主練にまで付き合って、かなり激しく打ち合っている。

そして、ライナスはきっと、1人の時でも練習をしているのだろう。

……君が負けるはずがないんだ。

試合を見つめる手に力がこもる。
開始のかけ声が響いた。

地面を蹴り、ぶつかり合う剣の衝撃音、堪えようと地面を踏みしめて剣を返し—

さすがはここまで勝ち上がってきた騎士だ、疲れてはいても、そう簡単に隙は見せない。

右に左に揺さぶり、鋭い一撃を加えてすぐに後ろに飛び退る。
これまでとは異なり、拮抗した激しい打ち合いが続く……かと思ったが。
ライナスが、少しずつ押している。
対戦する騎士の目に、わずかに焦りの色が滲んで。

すごいな。ライナス。
なんて力、なんて速さだ。

厳しい鍛錬を積み重ねて、それだけの力を。
鋭い剣戟を。同輩を跳ね返す強さを得たのか。

この先は、もう予想がつく。
--ライナス、君の勝ちだ。

ばっと力強く地面を蹴って、刹那、間合いを詰める。
相手が体勢を整えるより早く、剣を下から素早く打ち上げて。
衝撃で放しかけた剣を相手が何とか堪えたところで、今度は頭上から、強烈な一撃を叩きつける。

「すごいね、……なんて強さだ」

驚愕の声が、レオンの口から零れる。
興奮で、頬は朱に染まって。

ライナス。
自分のためだと、笑って俺の稽古に付き合ってくれた。
そして、その言葉を、本当にしてくれた。
本当に、……本当に君は、俺との時間を自分の強さに変えてくれた。

「……ケイン?」

レオンが不思議そうに俺を見る。呟く。

「ねぇ、どうしたの?」

よく、わからない。
……なぜだ。

「……どうして、泣きそうな顔をしているの?」

なぜ、こんなに。
君が誇らしいんだ。

レオンハルトの手が、俺に向かって伸びかけた、その時。
審判の声が、大きく場内に響き渡った。

「そこまでっ! 勝者、ライナスバージ・ロッテングルム!!」

一瞬の静寂、そして沸き上がる歓声。
ライナスが、剣を持った右手を空高く突き上げた。
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