【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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王さまはすべてお見通し

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「見事な戦いぶりであった。ライナスバージ・ロッテングルム」
「お褒めの言葉、光栄にございます」

試合の後、ライナスは観覧席にいた国王陛下の前へ呼ばれ、跪いて礼を述べた。

「カーンの三男だったか、年はいくつになる?」
「は、来月に18になります」
「そうか、大きくなったな。タビュラスやアーチボルトも、それぞれ立派に職務を果たしていると聞く。ロッテングルム家も安泰だな」
「もったいないお言葉、有難き幸せにございます」

俺は、王族の並ぶ席から少し離れ、陛下とライナスが言葉を交わす様子を眺めていた。

レオンは第二王子と共に、陛下の斜め後ろに立っていた。
御前試合での戦いぶりがよほど印象的だったのか、2人とも興味深げに目を輝かせてライナスを見つめている。

「そうか、もうすぐ18になるのか」

陛下はそう呟くと、ちらりと後方の王子たちを見やる。
そして、小さく頷くと、再びライナスに向き直った。

「丁度いい。ライナスバージ、お前をレオンハルトの護衛に任じるとしよう」
「……は?」
「……父上?」
「……陛下?」

予想外の言葉に驚いたのだろう、ライナスも、レオンも、ロッテングルム騎士団長も、目を大きく見開き、出した声もいつもより幾分高くなっていて。
なのになぜか、陛下の左隣に立つ父の表情は、まったく変わらないままで。

「へ、陛下、そんな重要な任務をこんな若輩者に……」
「そう言うな、カーン。レオンハルトに必要と思ってのことだ。その背を追いたくなるような少しだけ年長の相手がな」

陛下は騎士団長の言葉を遮り、今度は俺の方に視線を向けた。
そして優しく微笑む。

「幸い、同年の友には恵まれているがね。なぁ、ケイン」
「……ありがとうございます」

ゆっくりとライナスに視線を戻し、陛下は言葉を続けた。

「あれも半年後には15になる。背中を押し、上に目を向けさせてくれる、そんな目上の存在が身近にいるのもいいと思ってね。レオンハルトの護衛と言いはしたが、そう気負うことはない。話相手くらいの認識で構わんよ」

試合中、レオンハルトの目に浮かんだ、ライナスへの憧れを、陛下は見て取ったのだろうか。
突然の話に、最初は驚きの色をみせていたレオンの瞳も、すぐに嬉しそうに輝いて。

「では、頼むぞ。ライナスバージ・ロッテングルム」
「……有難き幸せ。しかと務めさせていただきます」

再び頭を深く垂れるライナスも、きっと、とても嬉しいはず。
王太子の背を押してやってくれ。
他の誰でもない、陛下が、そう頼まれたのだから。

つい、と視線をずらせば、ロッテングルム騎士団長が感激して泣きそうになっている。

ライナス以上に感動しているんじゃないかな。

ふっと笑みが零れる。

良かったな、ライナス。
空を駆け上がるかのような大躍進じゃないか。

そして同時に、このことは、レオンの側近くにいる機会が多い俺にとっても僥倖で。
今までよりも、もっと多く、ライナスの側で学ぶ時を過ごせるのだと。
そう思って。

立ち上がったライナスの笑顔が、ひどく眩しい。
手を上げて、俺の方へと駆け寄ってくる。

……なんだろう。
嬉しくて堪らない。

会場を去って行く陛下の後ろ姿に、俺は感謝を込めて頭を垂れた。

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