【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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バザー会場にて その1

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何かいつもと違う感じがした。

何かしら。どこか、何か、違和感があって。
でも、ただそう感じるだけなんて、説明にもならないから。

気のせいよね。そう思って。

だから、何も言わなかった。

「エレアーナさま? どうかなさって?」
「いえ、何でもありませんわ。それより、今日は、お手伝いをありがとうございます。お2人がいらして下さったから、子どもたちはもう大はしゃぎですわ」
「ふふ、こちらこそ楽しみにしてましたのよ。バザー自体は何度も経験してますけれど、孤児院のバザーは初めてなんですもの。ねぇ、カトリアナ」
「そうなんです。お誘いいただいて、本当に嬉しいですわ」

今日はバザーの手伝いのため、南区トロスト街にあるジュールベーヌ孤児院に来ていた。

収益確保と地域交流を兼ねて、子どもたちの作った置物や木工品などを販売したり、軽食や飲み物を売る屋台を出したりもする。
服や生活用品など諸々を、寄付として直接持ち込むこともできるようにそれ専用の受付窓口も用意して。

アリエラとカトリアナは奥の販売スペースのお手伝い、私は受付窓口が担当だ。

今回の屋台のメニューには、私たちが作ったハーブティーも入っている。

子どもたちがお茶の淹れ方や提供の仕方をきちんと覚えれば、マナーの向上はもちろん、後でメイドや給仕といった仕事に就くときの役に立つ。
それに、もしこのお茶の評判が良かったら、孤児院の庭でハーブを育てるのもいいかもしれない。

子どもたちが自分で育てたハーブでお茶を作って売る、そんな形になれば理想的だけれど。

この子たちは、ずっとここに留まるわけではない。

いつか、孤児院を出て、自分の手でお金を稼ぎ、暮らしていけるようにならなければいけない。
何かを作って、売って、収益を出す、そういう経験は、きっと後で役に立つはず。

ときどき窓口を訪れる、寄付の品々を持った人たちに対応しながら、頭の中でいろいろな考えを巡らせていた。

孤児院と地域の人たちとの関係は良好で、寄付の受付窓口での仕事はまあまあ忙しい。
古着や未使用の文房具、使わなくなった作業用具など、だんだんと集まってきた。

分類しておかないと、後で大変になっちゃうわね。

うれしい悩みに、そっと笑んで。

販売スペースも盛況なようで、子どもたちが嬉しそうに接客する声が聞こえる。

ハーブティーの評判はどうかしら。

「こんにちは」

窓口に誰か来ていたのに気づかなかったようで、向こうから声をかけられた。

「あ、はい。ようこそいらっしゃいました。寄付のお品はこちらで……」

あら?
殿下によく似てる人。

……後ろにいる人も、似てる、ケインバッハさまに、……いや、違うわ。
これは、似てるんじゃなくて。

「レオンハルト王太子殿下? ……ケインバッハさまも」
「やあ」
「あ、王太子殿下はやめてね、今は。お忍びで来てるから」

……ああ、はい。そうですね。いつもより地味にしてはいらっしやいますよね。

でも、やっぱり、と言いますか。
お育ちの良さは隠しきれてませんよ。
お2人とも、気品がにじみ出ています。あからさまに貴族です。

まぁ、私もアリエラさまたちもここによく来てるし、貴族だってことはもみんな知ってるから、バレても大丈夫だと思いますけど。

……あら、後ろにもう1人いらっしゃるわ。きっと護衛の方かしら?
溶け込むのが上手な方ね。庶民の服を素敵に着こなしてらっしゃるわ。

「3人で、いらっしゃったんですか? なぜこちらに?」
「ブライトン公爵から聞いたんだよ。今日、君がこの孤児院にバザーの手伝いに行くってね。それで、ケインも誘って様子を見に来たんだ。あ、後ろにいるのは僕の護衛のライナスね」
「ライナスバージ・ロッテングルムと申します」
「エレアーナ・ブライトンですわ」
「……」
「……」
「……」

殿下も、ケインバッハさまも、ライナスバージさまも、ニコニコしてるだけで何も言わない。

……これは、きっと私が案内して回らないといけないやつよね。
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