【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

文字の大きさ
126 / 256

兄は意外と心配しているのです

しおりを挟む
「お前、好きな男はいないのか?」

別に回りくどい言い方が好みな訳じゃないけど、今のって、あまりにあからさますぎやしません?

少しイラっときたので、兄をじとり、と睨みつける。

「私に怒っても現実は変わらないぞ? シュリエラ」

あー、もう。
自分はお見合いでさっさと結婚相手が決まったからって、親切に私の心配までしなくてもいいのに。

条件だけで選別したリュークお兄さまのお相手は、意外と言っては失礼だけど、物凄く、それはもう物凄く素敵な方だった。
先日、顔合わせをしたけど、本当に政略結婚?って疑ったのが正直な感想だもの。

気のせいなのか、あるいは、身内びいきなのか、はたまた只の思い違いかも分からないけど、お相手のご令嬢は、リュークお兄さまの事を好いてらっしゃるように見えた。

いえ、きっとそれは私の気のせいだわ。
だって初めて顔を合わせたんだもの。

前から好きだったなんて、有り得ない。

でもね、私は当主であるリュークお兄さまとは立場が違うんだから、別にお相手がいるかいないかで目くじら立てないでもいいんじゃないかしら。

後継者問題とか、私には関係ない話でしょ。
だったらいっそ・・・なんて思わないこともない。

だからちょっとだけ、本音を漏らしてみた。

「別に、このまま結婚しないでもいいかな、とも思っているのですが・・・」

面倒だから言ってみただけ。
深く考えての事じゃない。

一人って気楽そうだし。
愛想振り撒くのも疲れるし。

思ったことがすぐ顔に出るから、駆け引きとか向いてないし。
挙句、我慢もきかないし。

なのに、お兄さまったら本気モードに入ってしまって。

「シュリエラ。お前はなかなかの美人だ。いや、相当と言ってもいいだろう。気性は激しいが、それがまた魅力だと言ってくれる男もいる筈だ。何より今は、お前は他人を思い遣る心を持っている。お前を妻としたい男は、それこそ星の数ほどいるのだぞ」

頭を撫でられながら、やたらと褒めちぎられてしまう。

もう、私、もう十五なのよ?
頭撫で撫でなんて、子どもじゃないんだから。

それに、真面目に慰められると、却って受けるダメージが大きいんですけど。

星の数ほどいる訳ないじゃない。

ふう、と大きな溜息を吐いて、まだ頭を撫ででいるお兄さまの顔を見上げた。

「わたくし、前に恋をした時、それはもう酷かったではないですか。相手の迷惑も考えず、ただただ殿下の後を追いかけ回して。それはもう、醜態と言っていい程の」
「シュリエラ・・・」
「そのせいで、当時、婚約者候補に挙がっていたエレアーナさまのお命まで危うくなるような事態に発展してしまいました」

頭の上の、兄の手の動きが止まる。

「恋をしたら、またあんな風になるのではないかと恐いのです。わたくしは、もう誰のことも傷つけたくありません」

目を見れば分かる。
兄は今、凄く困っている。

だから私は、ふふ、と微笑んでみせた。

「だから恋はもういいのです。結婚しなければならないのなら、そうですね、政略結婚がいいです。互いを好きにならなくてもいいというお相手が。だから・・リュークお兄さまが選んでくださいませんか」
「・・・お前は気になる男がいるのではないか? 前に夜会で踊っていた男がいただろう?」

兄は本当に細かいところにまで気がつく人だ。
なんて、感心したりして。

「ライナスさまのことですか? それともアッテンボローさま?」
「どちらもだ。もし、お前の心が向いている相手がいるのならば・・・」
「ライナスさまはわたくしにとって兄のような存在ですし、アッテンボローさまとは、夜会で一度、踊ったきりですわ。それきりお声もかけて頂いておりません。きっとわたくしのことなど、何とも思っておられない筈ですわ」

言った後で、しまった、と思った。
これでは、誰が気になっているのか、自分からバラしたようなものだ。

慌てて、兄が何か言いだす前に、こちらが口を開く。

「そういえば、ベルフェルトお兄さまとも踊ってますわ」
「わざわざ茶化さなくていい」

やっぱり、私の頭の中なんてお見通しなのね。

「リュークお兄さまが選んだお方ならば、何の不安も心配もありません。その方と結婚いたしますから、お兄さま、どうかわたくしに良いお相手を探してくださいませ」
「シュリエラ、お前は・・・」

兄は何か言いかけたけど。
私の顔を見て、言いかけた言葉を呑み込んで。

「・・・そうか、私が勝手に選んで構わないのだな」

いつだって、家族をなかなか突き放せないお兄さまは、最後には私の願い通りにすると頷いてくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

処理中です...