128 / 256
王太子は夢を見る
しおりを挟む
レオンハルトは多忙を極めていた。
普段の政務に加え、結婚式の準備もある。
まだ一年以上先とはいえ、王族の婚姻の準備には色々と段取りが必要で、やる事も山積みで。
愛しのカトリアナに会って癒されたい気持ちはあるけれど、なかなかその時間すら取れない日々が続いていた。
「・・・殿下、その顔やめてくださいよ。死人みたいで恐ろしいです」
眉間に皺を寄せながら、ライナスが文句を言っている。
そう言われても、出来ないことは出来ない。
今、レオンハルトは超、不機嫌なのだ。
「カトリアナ、カトリアナに会いたい。癒しがほしい。もう五日も会えてない・・・」
そうぶつぶつ言いながらも、手元の書類は物凄い勢いで処理されていく。
今日こそは。
今日こそは、この書類の山をさっさと片付けて、妃教育を頑張っているカトリアナに会いに行くんだ。
そんな決意をもって、休憩も取らずに一心不乱に執務に取り組んでいるのだ。
最初は微笑ましく見守っていたライナスだったが、一瞬たりとも休みを取らないレオンの様子に、まず心配を、それから焦りを、そして今は呆れを見せている。
「いくら早く終わらせて時間を作ったって、そんな顔色で押しかけたら心配して、さっさと休むようにと追い返されるだけですよ? カトリアナ嬢はお優しい方なんですから」
ペンを走らせる手が、ぴたりと止まる。
「そんなに・・・酷いかい?」
「ええ、それはもう。死人が生き返ったのかってくらいです」
「えええ? そんなに?」
「はい、そんなにです。今の殿下とお会いしたら、カトリアナ嬢が怖がっちゃうんじゃないかと心配になるくらいです」
「うわあ、そうなの・・・? じゃあ、頑張っても無駄じゃないか」
「仮眠を取ることをお勧めします。時間がきたら責任を持って起こしますので、せめて30分だけでも」
「うう・・・。分かったよ。ちゃんと声をかけてよ?」
「勿論です」
ふう、と溜息を吐くと、レオンは椅子から立ち上がり、ソファへと移動して横になった。
疲れはピークに達していたようで、ちゃんと起こしてよ、とライナスに言いかけたところで眠りに落ちた。
その様子に、ライナスの口元がふっと緩む。
頑張ってますよね、殿下。
よし、待っててくださいよ。
オレからご褒美をあげましょう。
静かに執務室の後ろに下がり、そっと扉を開く。
そして扉の外で待機していた護衛騎士に、耳打ちをした。
「ん・・・」
あれ? どのくらい眠ってたのかな。
ライナスはちゃんと起こすって言ってたけど。
まだ眠気の残る頭で、ぼんやりと考える。
「お目覚めですか? レオンさま」
・・・なぁんだ、夢か。
逢いたかった女性の声が心地いい。
くるりと視線を巡らすと、大好きなカトリアナの顔が眼に映り込んだ。
ああ、いい夢だなぁ。
早く起きて執務の続きをしなきゃいけないけど、カトリアナは夢の中でもやっぱり可愛くて、眼を覚ますのがもったいない気もする。
「お疲れのようですね。ご気分はいかがですか?」
「・・・最高」
「え?」
夢の中でもカトリアナに逢えたんだもの。
最高の気分だよ。
心配そうな顔も可愛いなあ。
うん、すごく可愛い。
食べちゃいたいくらい可愛い。
そうだ、せっかくだし。
食べちゃおう。
いただきます。
「レオ・・・ンさ・・・?」
カトリアナの髪に手を差し込んで、ぐっと力を込めて引き寄せる。
ふふ、慌てた顔も可愛い。
そんな事を思いながら、唇を重ねた。
ああ、大好き。
大好きだよ、カトリアナ。
何だか、もごもごと暴れてるけど、ようやく重ねることが出来た唇をそう簡単に離しはしない。
相変わらず、しっとりと柔らかいカトリアナの唇。
さらりと顔に肩にかかる柔らかな髪。
腕をぽかぽかと叩かれても、ちっとも効きやしない。
夢とはいえ、やっと逢えたんだ。
少しくらい堪能させて。
角度を変えて、ちゅっちゅっと口づけを繰り返せば、腕を叩く手に、更に力が篭ったようで、少しだけ痛い。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか。
ねぇ、カトリアナ。
うん?
痛い?
・・・夢なのに?
あれ?
ちゅっという音と共に、唇を離した。
あれ?
これもしかして・・・。
口づけの間、瞑っていた眼を開く。
「・・・レオン、さま・・・」
両手で顔を覆って、耳まで赤く染めて、ぷるぷると体を震わせているカトリアナがそこにいた。
うわあ、なにこれ。
すごく可愛いんだけど。
未だ現実味が湧かないまま、カトリアナの真っ赤な顔を見つめていると、その向こうから申し訳なさそうな声がした。
「なんか・・・すみません。うちの殿下がケダモノで」
なんだよ、ライナス。
また僕をケダモノ扱いする気?
・・・まぁ、ちょっと今日は、ね?
うん、やりすぎちゃったかもしれないけどさ。
普段の政務に加え、結婚式の準備もある。
まだ一年以上先とはいえ、王族の婚姻の準備には色々と段取りが必要で、やる事も山積みで。
愛しのカトリアナに会って癒されたい気持ちはあるけれど、なかなかその時間すら取れない日々が続いていた。
「・・・殿下、その顔やめてくださいよ。死人みたいで恐ろしいです」
眉間に皺を寄せながら、ライナスが文句を言っている。
そう言われても、出来ないことは出来ない。
今、レオンハルトは超、不機嫌なのだ。
「カトリアナ、カトリアナに会いたい。癒しがほしい。もう五日も会えてない・・・」
そうぶつぶつ言いながらも、手元の書類は物凄い勢いで処理されていく。
今日こそは。
今日こそは、この書類の山をさっさと片付けて、妃教育を頑張っているカトリアナに会いに行くんだ。
そんな決意をもって、休憩も取らずに一心不乱に執務に取り組んでいるのだ。
最初は微笑ましく見守っていたライナスだったが、一瞬たりとも休みを取らないレオンの様子に、まず心配を、それから焦りを、そして今は呆れを見せている。
「いくら早く終わらせて時間を作ったって、そんな顔色で押しかけたら心配して、さっさと休むようにと追い返されるだけですよ? カトリアナ嬢はお優しい方なんですから」
ペンを走らせる手が、ぴたりと止まる。
「そんなに・・・酷いかい?」
「ええ、それはもう。死人が生き返ったのかってくらいです」
「えええ? そんなに?」
「はい、そんなにです。今の殿下とお会いしたら、カトリアナ嬢が怖がっちゃうんじゃないかと心配になるくらいです」
「うわあ、そうなの・・・? じゃあ、頑張っても無駄じゃないか」
「仮眠を取ることをお勧めします。時間がきたら責任を持って起こしますので、せめて30分だけでも」
「うう・・・。分かったよ。ちゃんと声をかけてよ?」
「勿論です」
ふう、と溜息を吐くと、レオンは椅子から立ち上がり、ソファへと移動して横になった。
疲れはピークに達していたようで、ちゃんと起こしてよ、とライナスに言いかけたところで眠りに落ちた。
その様子に、ライナスの口元がふっと緩む。
頑張ってますよね、殿下。
よし、待っててくださいよ。
オレからご褒美をあげましょう。
静かに執務室の後ろに下がり、そっと扉を開く。
そして扉の外で待機していた護衛騎士に、耳打ちをした。
「ん・・・」
あれ? どのくらい眠ってたのかな。
ライナスはちゃんと起こすって言ってたけど。
まだ眠気の残る頭で、ぼんやりと考える。
「お目覚めですか? レオンさま」
・・・なぁんだ、夢か。
逢いたかった女性の声が心地いい。
くるりと視線を巡らすと、大好きなカトリアナの顔が眼に映り込んだ。
ああ、いい夢だなぁ。
早く起きて執務の続きをしなきゃいけないけど、カトリアナは夢の中でもやっぱり可愛くて、眼を覚ますのがもったいない気もする。
「お疲れのようですね。ご気分はいかがですか?」
「・・・最高」
「え?」
夢の中でもカトリアナに逢えたんだもの。
最高の気分だよ。
心配そうな顔も可愛いなあ。
うん、すごく可愛い。
食べちゃいたいくらい可愛い。
そうだ、せっかくだし。
食べちゃおう。
いただきます。
「レオ・・・ンさ・・・?」
カトリアナの髪に手を差し込んで、ぐっと力を込めて引き寄せる。
ふふ、慌てた顔も可愛い。
そんな事を思いながら、唇を重ねた。
ああ、大好き。
大好きだよ、カトリアナ。
何だか、もごもごと暴れてるけど、ようやく重ねることが出来た唇をそう簡単に離しはしない。
相変わらず、しっとりと柔らかいカトリアナの唇。
さらりと顔に肩にかかる柔らかな髪。
腕をぽかぽかと叩かれても、ちっとも効きやしない。
夢とはいえ、やっと逢えたんだ。
少しくらい堪能させて。
角度を変えて、ちゅっちゅっと口づけを繰り返せば、腕を叩く手に、更に力が篭ったようで、少しだけ痛い。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか。
ねぇ、カトリアナ。
うん?
痛い?
・・・夢なのに?
あれ?
ちゅっという音と共に、唇を離した。
あれ?
これもしかして・・・。
口づけの間、瞑っていた眼を開く。
「・・・レオン、さま・・・」
両手で顔を覆って、耳まで赤く染めて、ぷるぷると体を震わせているカトリアナがそこにいた。
うわあ、なにこれ。
すごく可愛いんだけど。
未だ現実味が湧かないまま、カトリアナの真っ赤な顔を見つめていると、その向こうから申し訳なさそうな声がした。
「なんか・・・すみません。うちの殿下がケダモノで」
なんだよ、ライナス。
また僕をケダモノ扱いする気?
・・・まぁ、ちょっと今日は、ね?
うん、やりすぎちゃったかもしれないけどさ。
21
あなたにおすすめの小説
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる