【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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お似合い同士

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「相変わらず仲の良ろしいことね」

サロンからレオンハルトが去った後、お茶会の場は一時騒然としていた。

目の前で王太子と婚約者の熱愛ぶりを見せつけられ、様々な反応を見せた令嬢たちだったが、それぞれが落ちつくまでにはそれなりの時間が必要だった訳で。

それでも、リュークザインから受けていた噂話の収集は無事に完遂した。

招待客が帰った後、最後まで残っていたのがホストであったカトリアナ、そしてその友エレアーナとシュリエラだった。

そしてシュリエラが冒頭の言葉を発したのだった。

「お恥ずかしいところをお見せしまして・・・」

揶揄うような口調に、カトリアナも赤くなって恥じ入っている。

「いいえ、寧ろちょうどよかったのではありませんか? 先ほどの様子ですと、まだ王太子殿下を狙っているご令嬢もいらっしゃったようですし」

ぴしゃりと断言したシュリエラにカトリアナが「え?」と目を丸くする。

「それが心配で殿下もわざわざいらしたのでしょう?」
「・・・そうなんでしょうか」
「そうに決まってるじゃありませんか。ねえ、エレアーナさま?」

今いちピンと来ない様子のカトリアナに、シュリエラが横のエレアーナに同意を求める。
それにエレアーナはふふ、と笑んで同意を示す。

「まあ、とにかく良かったですわ。これでくだらない嫉妬も止むといいですけど」
「お気遣いありがとうございます。シュリエラさまはお優しいのね」

にこにことお礼を告げられ、シュリエラが思わず眉根を寄せる。

「・・・別に、わたくしは貴女を気遣ってこんなことを言ってるわけではありません。いまだ未練がましい令嬢方がみっともなくて見るに堪えないだけですわ」
「ふふ、それでもですわ。わたくしが勝手に嬉しくなっているだけですのよ」
「・・・そう。それなら別に構いませんけれど」

強気で意地っ張りなシュリエラの言動も、カトリアナにとっては可愛くて仕方ないらしい。
そんな様子をエレアーナは微笑ましく見守っていたが、ふと目をやれば、扉の向こうから夫が顔を覗かせていることに気づいた。

「ケインさま。どうかなされたのですか」
「ああ、レアナ」

薄い笑みを浮かべて、ケインは妻の元へと歩み寄る。

「仕事が早く終わったから、一緒に帰れるかと思って来てみたんだ」
「嬉しいですわ」
「お茶会は無事に終わったのか?」
「ええ。とても楽しかったです」

嬉しそうに微笑むエレアーナを見て、ケインバッハも「それは良かった」と笑みを零す。

と、そこへもう一人、マスカルバーノ家の従者が扉向こうから現れた。
それに気づいたカトリアナが皆に辞去の挨拶をして去っていった。

「シュリエラさまは、まだご用事がありますの?」
「いいえ、別に・・・」
「ああ、彼女は俺が送ることになってます」

エレアーナの問いにシュリエラが答えようとしたとほぼ同時に、それまで壁と化していたアッテンボローが返答した。

「・・・そういえば貴方はずっとそこにいらしたのよね。静かすぎて存在を忘れてましたわ」
「護衛なんでね、今のは誉め言葉として受け取っておこう。そしてここからは君の婚約者として責任もって君を家まで送らせてもらうよ」

食い気味の返答に冷ややかに答えるシュリエラをものともせず、アッテンはにこにこと言葉を継いだ。

「さあ、姫君。お手をどうぞ」
「・・・」

しばしの間、差しだされた手をじーっと見つめていたシュリエラだったが、いつまで経っても手を引っ込める気配がないのを見て、諦めたようにはあ、と溜息を吐くと、のろのろと手を重ねた。

気恥ずかしさを隠すように仏頂面をするシュリエラと、それが楽しみで余計にちょっかいをかけるアッテンボローと。

ちぐはぐなのに、妙にぴったりにも思える二人が去っていく後ろ姿を眺めつつ、エレアーナはぽつりと溢した。

「何を思い悩んでいたのかは存じませんが、踏ん切りがついたようで良かったですわね」
「アッテンボローのことか?」
「ええ。お辛そうでしたもの」

その言葉に、ケインバッハも深く頷く。

「そうだな。想いを堪えるのは辛いからな」

何かを思い出すように呟いた夫の顔を、エレアーナは静かに見上げた。

「・・・だが、どうやらあいつは一度吹っ切ったら押しが強いタイプだな」
「ふふ、そのようですね」

「本当に、お似合いの二人ですわ。あ、お似合いと言えば、カトリアナさまたちもですね」

思い出しただけで、くすりと笑みが溢れてしまう。
不思議そうな表情のケインに、エレアーナは先程のお茶会での出来事について話した。

「そんなことが・・・」
「とても素敵でしたのよ。カトリアナさまが頬を染めて殿下の良いところをそれはもうたくさん仰りはじめて、それを後から現れた殿下が後ろから抱きしめられましたの。まるで物語のような光景でしたわ」
「そうか」

ケインバッハは顎に手を当てて、エレアーナの言葉にじっと耳を傾けている。

「周りのご令嬢方もそう思ったようですわ。皆さん歓声を上げておられましたから」
「成程、分かった」

神妙に頷くケインに、エレアーナがきょとんとした顔で聞き返す。

「ケインさま? あの、分かったとは何を?」
「君が喜ぶのはどんな事かが分かった。参考にする」
「えと、あの、ケインさま?」

時々もの凄い天然ぶりを発揮する夫が、一人頷き、納得する様子を見て、もしかして、とエレアーナは思ったのだが。

「よし、レアナ。次のお茶会はいつ開く予定だ?」

果たして、ケインの問いは予想通りのもので。
思わずくすりと笑ってしまったエレアーナだった。
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