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これも一種のプライバシー
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忙しい。とにかく滅茶苦茶忙しい。目が回るほど忙しい。
コツコツコツと回廊に靴音を響かせながら、ルナフレイアは心の中で呟いた。
調べる事は山ほどあるし、護衛任務もあるし、指示の確認も必要だし、情報収集も行わなきゃだし、だけど。
誰も使っていない部屋に飛び込み、扉を閉めると同時に、ずるずると前のめりに頽れる。
・・・なんでこんなタイミングで恋心を自覚してるのよ、私っ。
頽れたまま、扉に頭を打ち付けたい気分だ。
だけどそんな事をしたら、音で誰かが駆けつけてしまうかもしれない。
ただでさえ、今はあちこちにハトが飛ばされているのだ。
非常事態と勘違いして駆けつけたハトに、扉に頭突きをかましてる姿を見られた日にはもう・・・。
・・・立ち直れないわ。
はあ、と深く息を吐く。
初めての恋だからって、動揺しすぎでしょ。
大体、ベルフェルトさまの方は何も意識してないんだから、こっちが普通にしてれば済む話。
・・・うう。自分で言っておいてへこむわ。
「あーあ。ライナス兄さまのこと、笑えないな・・・」
恋に疎くて、不器用で、どうにもタイミングが悪いのはロッテングルムの血筋なのかもしれない。
未だに幼い時からの恋心を消化できずに立ち止まったままの不器用な従兄に、生まれて初めて親近感を覚えた。
って、こんなところで仲間意識を持ってどうするのよ。
「・・・はあ。とにかく持ち場に戻らなきゃ。いきなり消えたら皆に心配かけちゃう」
二週間前に起きたマスカルバーノ侯爵家の馬車への襲撃事件から、文字通り24時間体制で警戒態勢が敷かれている。
エレアーナが狙われていた時は、本人が自邸に籠って対策したようだが、それは彼女がデビュタント前の一公爵令嬢だったから出来たものだ。
現在、カトリアナは侯爵令嬢とはいえ、王太子の婚約者でもあり、半年もたたずに婚姻の儀を迎える。
そうなれば正式に王族ともなるのだ。
必然的に、自邸に籠城するという選択肢は排除される。
限定的ではあるが王太子のパートナーとして役割もあるし、妃教育もまだ終了していない。
そもそも、王太子妃候補が自宅に籠りきりになっては、どんな噂が立てられるかも分からないのだ。
結果、多少は減らせるとはいえ、概ねこれまで通りに動いてもらうしか方法はなく。
レオンハルトを筆頭に、王宮内で警護に当たる者たちの緊張はピークに達していた。
「単純な正面攻撃に限られるわけじゃないって、ベルフェルトさまは仰っていたけど・・・」
襲撃とかじゃない方法って、一体どんなものがあるんだろう。
誘拐? それとも脅迫?
考えを巡らせながら、のろのろと立ち上がる。
・・・とにかく、任務に戻らなきゃ。
そう思って扉に手をかけようとしたところで、何故か扉が向こうから勝手に開いて。
「えっ?」
・・・まだ開けてないのに。
敵か、それとも城内の使用人か、とぼんやりしていた頭に気合いを入れ直せば、扉から現れたのは、今、最も会うと気恥ずかしい人物ナンバーワンのその人で。
「ベルフェルト、さま」
「・・・無事だったか」
きょとんと眼を大きく見開いたルナフレイアに対し、ベルフェルトは明らかに安堵の表情を浮かべ、息を吐いている。
「ええと・・・?」
「この辺りで急に姿が見えなくなったと報告があってな。君ほどの手練れの相手となると、相当の腕前の敵と対峙しているかもしれないと判断してオレが出張って来たんだが」
「・・・え、と、なんかすみません」
今が非常警戒態勢であることは重々理解していたつもりだったけど、まさかこれ程心配されるとは。
ベルフェルトは前髪を掻き上げながら、息を吐いた。
どうやら随分と緊張していたらしい。
「いや、無事ならいい。・・・それより、何をしていた? 何か問題でもあったのか?」
今、最も聞かれたくない事を突かれてしまい、ルナフレイアは、うっと返答に詰まる。
「いえ、あの、問題は何も。・・。ただ、その、誰もいない所で、ええと・・・ちょっと頭の中を整理したいな、と思いまして」
「・・・ほう」
あ、これ、信じてない。
マズい。このままだと更にツッコミが入っちゃう。
「いえ、あの、頭の整理って言っても、任務に関係があることではなく、その、プライベートなことでですね」
「・・・ほう、それはそれは」
あれ、失敗した?
これ、ますます怪しまれてない?
そう判断したルナフレイアは正しかった。
ベルフェルトは開けたままにしてあった扉をかちゃりと閉めた。
そして扉を背に寄りかかると、腕組みをして目の前のルナフレイアをじっと見すえる。
「プライバシーは極力尊重したいところだが・・・そんなに悩んでいるとなると話は別だな」
そう告げるベルフェルトの顔に、いつものような揶揄いはなくて。
「言いたくないのであれば、無理に話は聞かないが。・・・ルナフレイア嬢、オレで何か相談に乗れることはないのか?」
真面目な顔でそう告げるベルフェルトの顔は、それはそれは素敵で見惚れそうな程だったけれど。
相談に乗るも何も、貴方のことで悩んでるんです、とは勿論言えず。
もしかして、詰んだ? と思ったルナフレイアは、果たして正しかったのかどうか。
コツコツコツと回廊に靴音を響かせながら、ルナフレイアは心の中で呟いた。
調べる事は山ほどあるし、護衛任務もあるし、指示の確認も必要だし、情報収集も行わなきゃだし、だけど。
誰も使っていない部屋に飛び込み、扉を閉めると同時に、ずるずると前のめりに頽れる。
・・・なんでこんなタイミングで恋心を自覚してるのよ、私っ。
頽れたまま、扉に頭を打ち付けたい気分だ。
だけどそんな事をしたら、音で誰かが駆けつけてしまうかもしれない。
ただでさえ、今はあちこちにハトが飛ばされているのだ。
非常事態と勘違いして駆けつけたハトに、扉に頭突きをかましてる姿を見られた日にはもう・・・。
・・・立ち直れないわ。
はあ、と深く息を吐く。
初めての恋だからって、動揺しすぎでしょ。
大体、ベルフェルトさまの方は何も意識してないんだから、こっちが普通にしてれば済む話。
・・・うう。自分で言っておいてへこむわ。
「あーあ。ライナス兄さまのこと、笑えないな・・・」
恋に疎くて、不器用で、どうにもタイミングが悪いのはロッテングルムの血筋なのかもしれない。
未だに幼い時からの恋心を消化できずに立ち止まったままの不器用な従兄に、生まれて初めて親近感を覚えた。
って、こんなところで仲間意識を持ってどうするのよ。
「・・・はあ。とにかく持ち場に戻らなきゃ。いきなり消えたら皆に心配かけちゃう」
二週間前に起きたマスカルバーノ侯爵家の馬車への襲撃事件から、文字通り24時間体制で警戒態勢が敷かれている。
エレアーナが狙われていた時は、本人が自邸に籠って対策したようだが、それは彼女がデビュタント前の一公爵令嬢だったから出来たものだ。
現在、カトリアナは侯爵令嬢とはいえ、王太子の婚約者でもあり、半年もたたずに婚姻の儀を迎える。
そうなれば正式に王族ともなるのだ。
必然的に、自邸に籠城するという選択肢は排除される。
限定的ではあるが王太子のパートナーとして役割もあるし、妃教育もまだ終了していない。
そもそも、王太子妃候補が自宅に籠りきりになっては、どんな噂が立てられるかも分からないのだ。
結果、多少は減らせるとはいえ、概ねこれまで通りに動いてもらうしか方法はなく。
レオンハルトを筆頭に、王宮内で警護に当たる者たちの緊張はピークに達していた。
「単純な正面攻撃に限られるわけじゃないって、ベルフェルトさまは仰っていたけど・・・」
襲撃とかじゃない方法って、一体どんなものがあるんだろう。
誘拐? それとも脅迫?
考えを巡らせながら、のろのろと立ち上がる。
・・・とにかく、任務に戻らなきゃ。
そう思って扉に手をかけようとしたところで、何故か扉が向こうから勝手に開いて。
「えっ?」
・・・まだ開けてないのに。
敵か、それとも城内の使用人か、とぼんやりしていた頭に気合いを入れ直せば、扉から現れたのは、今、最も会うと気恥ずかしい人物ナンバーワンのその人で。
「ベルフェルト、さま」
「・・・無事だったか」
きょとんと眼を大きく見開いたルナフレイアに対し、ベルフェルトは明らかに安堵の表情を浮かべ、息を吐いている。
「ええと・・・?」
「この辺りで急に姿が見えなくなったと報告があってな。君ほどの手練れの相手となると、相当の腕前の敵と対峙しているかもしれないと判断してオレが出張って来たんだが」
「・・・え、と、なんかすみません」
今が非常警戒態勢であることは重々理解していたつもりだったけど、まさかこれ程心配されるとは。
ベルフェルトは前髪を掻き上げながら、息を吐いた。
どうやら随分と緊張していたらしい。
「いや、無事ならいい。・・・それより、何をしていた? 何か問題でもあったのか?」
今、最も聞かれたくない事を突かれてしまい、ルナフレイアは、うっと返答に詰まる。
「いえ、あの、問題は何も。・・。ただ、その、誰もいない所で、ええと・・・ちょっと頭の中を整理したいな、と思いまして」
「・・・ほう」
あ、これ、信じてない。
マズい。このままだと更にツッコミが入っちゃう。
「いえ、あの、頭の整理って言っても、任務に関係があることではなく、その、プライベートなことでですね」
「・・・ほう、それはそれは」
あれ、失敗した?
これ、ますます怪しまれてない?
そう判断したルナフレイアは正しかった。
ベルフェルトは開けたままにしてあった扉をかちゃりと閉めた。
そして扉を背に寄りかかると、腕組みをして目の前のルナフレイアをじっと見すえる。
「プライバシーは極力尊重したいところだが・・・そんなに悩んでいるとなると話は別だな」
そう告げるベルフェルトの顔に、いつものような揶揄いはなくて。
「言いたくないのであれば、無理に話は聞かないが。・・・ルナフレイア嬢、オレで何か相談に乗れることはないのか?」
真面目な顔でそう告げるベルフェルトの顔は、それはそれは素敵で見惚れそうな程だったけれど。
相談に乗るも何も、貴方のことで悩んでるんです、とは勿論言えず。
もしかして、詰んだ? と思ったルナフレイアは、果たして正しかったのかどうか。
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