転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第166話 紫色の木の実は何処から

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紫色の木の実の出所について、僕は誰か泉の向こう側に行った人が持ってきたんじゃないかって考えた事を兄上とボブに言ってみた。

ボブは馬を木に繋いでいたロープの結び目を解いていた手を止めて、泉の方を振り返った。

「泉の向こうってぇより、森の中じゃろかねぇ。他所を通って来たかもしれないでさぁ」

森に面しているのはゲンティアナ領だけじゃなくて辺境伯領もそうだし、更に東側の男爵領もだという。隣の国のムスカリ王国も森の反対側に位置している。他の領地の現状はわからないけど、泉で隔てられていない箇所の方が森の奥地への行き来はしやすいんじゃないかという話だ。

兄上も頷いてチラリと泉に目を向けた。

「泉に行くルートは、俺達が毎日のように通っているからな。森の奥にあのトレントの木の実があるとしてもゲンティアナからのルートだったら俺達と遭遇していそうだよな。それに、泉の向こう側は毒で爛れた魔獣が彷徨いてるから簡単には行きにくいだろう。どこか森の奥に行きやすいルートがある土地から持ってきたんじゃないかな」

「他所から、『呪いの毒』の元になる木の実をわざわざゲンティアナに持ってきたってこと?怖!」

ヒュッと喉がなりそうになる。兄上は首を横に振った。

「『呪いの毒』になるって知っていたとは限らないよ。割って食べても『微毒』でしかないんだろ?」
「そうだね……」

怖くなってきて心臓がバクバクする。
もしも「呪いの毒」だってわかっていてゲンティアナに持ってきたんだったら怖すぎるよ。

確かに「呪いの毒」に変わるのは殻ごと丸呑みした場合だし、あの硬い殻を人が食べるってことはなさそうなんだよね。割って食べたら「呪いの毒」には変化しないし。
「呪いの毒」をゲンティアナに広めてやろうっていう意図で持ってきたなんてことはないのかもしれない。それでも嫌だけど……。

「でも『微毒』でも、もしも毒だってこと分かっていて売り込みに来たんだったら悪意があるかもしれないよ」
「まあな。冒険者ギルドに持ち込まれたんだったら、誰が持ってきたかはわかるだろうから、どうして持ってきたのかは確認できるんじゃないかな。きっと今頃父上が調べてくれていると思うよ。『微毒』なんて知らなかったって言うだろうけどね」

「甘い」って言って持ち込んできたんだったら、毒だと知ってたなんて言わないよね。本当に知らなかった可能性もあるんだよね。

冒険者ギルドに紫色の木の実を持ち込んだ人物が、木の実の情報についてを何処まで知っていたかは確認してみないと分からないけど、もしも、何か手違いで「呪いの毒」が発生しちゃう結果になって、町の中に広まっちゃうことがあったらと考えるとすごく怖い。
泉の向こう側の魔獣から得た毒耐性魔石を一つ手に取る。
屋敷内で毒事件があったばかりなのに、ゲンティアナの町にも毒の心配が出てきてしまった。それも「呪いの毒」だ。毒耐性の飲み物、町の人にも飲んでもらったほうが良いかもしれないなぁ。

「……さて、そろそろ急いで戻るぞ」

兄上が空を見上げてヒラリと馬に乗った。そろそろ戻らないと午後の訓練に間に合わなくなりそうだ。
僕も急いで馬に乗り込んだ。
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