【完結】私、実はサレ妻でした。

水沼早紀

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③夫が呼んだ名前

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「みんな、お待たせ~。オムライス出来たよ~」

 お昼になり家族全員分のオムライスを作った私は、リビングで遊んでいる子供たちにそう声をかける。 

「わぁーい!」 

「オムライス!」

 嬉しそうにキッチンへとやってくる子供たちと、夫。

「おいしそう~」

「ね、おいしそうだね」

「食べましょうか」

 それぞれの位置に座り、手を合わせていただきますと言ってからオムライスを食べ始める。

「ママ、おいしいっ!」
 
「おいしいっ!」

「本当に?良かった~」

 子供たちは美味しそうに二人並んで、オムライスを頬張っていく。

「空斗(あきと)、ほっぺたにご飯粒が付いてるぞ?」

「え?どこ~?」

「空斗、反対」

「あ、ほんとだ!」

 長男の空斗(あきと)。空斗はとてもいい子で、本当に心の優しい子だ。
 時々、弟である流斗(りゅうと)を泣かせてしまうなどもあるけど、ちゃんと弟の面倒をよく見てくれる優しいお兄ちゃんだ。

「あ、流斗。グリンピース残しちゃダメだよ」

 次男の流斗はグリンピースが苦手で、グリンピースが入っていると分かるとすぐによけてしまう。
 好き嫌いなく食べてほしいと思っているのに、何か上手くはいかないものだ。

「だってキライなんだもん!」
 
 そして嫌いな物が出ると、いつもそう言ってくる。

「好き嫌いしてると、大きくなれないよ流斗」

 と言い聞かせてはいるのだけど。

「だっておいしくないんだもんっ!」
 
「流斗、ママが作ってくれたんだぞ? それなのに残したら、ママ悲しくなっちゃうだろ?」

 どうしようか迷っていたら、夫が流斗にそう言ってくれた。

「パパ……」

 夫はやっぱり、こうやって子供たちのことを考えてくれている。
 ーーー浮気なんてするはず、ないわよね?

「え~」

「ほら、ご飯と一緒に食べれば美味しいぞ?」

 夫が笑顔で流斗にそう言うと……。

「……はぁーい」

 流斗は頑張って、グリンピースを食べてくれた。

「よーし!偉いぞ流斗!」

「りゅうと、えらい!」

 夫は流斗を抱き上げると、流斗の頭をガシガシと撫でた。
 
「グリンピース、食べられたじゃないか流斗!」
 
「う、うんっ!」

 こういう光景だけを見ていると、夫が浮気をしているなんてどうにも信じがたい。
 浮気しているなんてのは、あり得ないとさえ思ってしまう。

 こんなにも子供思いの父親なのに、私と子供たちを裏切ることなんてするのかな……。
 そう思いたい気持ちが、どこかにあった。

「ほーら二人とも!早く食べちゃってよ!片付けられないでしょ?」

「お、そうだったな」
 
 二人とも席に戻り、オムライスを再び口にする。




「ごちそうさまでした」
 
「はーい」
 
「ママ、ゲームしても良い?」
  
 お昼ご飯を済ませた後、空斗が私にそう聞いてくる。

「えー?昨日もゲームしたでしょ?」

「今日は昨日のとは違うゲームだもん!」

 空斗はゲームが大好きで、暇さえあればゲームしていい?と聞いてくる。

「はぁ……分かった。じゃあ30分だけだよ」

「やったぁ!」

 空斗は嬉しそうにゲームの電源を入れて、ゲームを始める。

「ゲーム終わったら流斗とも遊んであげるんだよ、空斗!」

「はぁーい!」

 本当に分かったのかな……。母は本当に大変だ。

「ママ、流斗がお絵かきしたいみたいだから、クレヨンとノート借りてくな」

「うん、分かった。  流斗のことお願いね、あなた」

「任せろって」

 流斗は夫に任せ、私はすぐにお昼ご飯の片付けを始める。

 ーーーこれが私たちの日常なのだ。これが私たち夫婦の、私たち家族のいつもの日常。
 何にも変わらない、いつもの日常なんだ。
 
 私たち家族は幸せなんだ。みんなで美味しいご飯を食べたり、みんなでお買い物に行ったり。
 何気ない日常を楽しくしてくれるのが家族だ。

 夫と結婚して夫婦になって、そして子供が出来て、家族になった。
 その瞬間から私たちは、どこにでもいる普通の家族になれていたと思っていたのに……。

 思い出すのは、あのラブホテルのレシートのことだ。
 なんであんな所に、ラブホテルのレシートがあったのだろうか。……何であの人が、あのレシートを持っていたのか。
 でもあのレシートを持っているということは、夫があそこに行ったとしか考えられない。

「……はぁっ」

 あんなの気付きたくない事実、だった。
 知りたくなんてなかった。そしたら私は、ずっと夫のことを愛せると思っていた。
 なのにその事実があるかもしれないというだけで、胸が痛くて張り裂けそうになる。

「……何でこんなことになるんだろう」

 私は夫と22で結婚して、空斗を産んだ。そして24で流斗を産んだ。
 夫とは確かに授かり婚ではあったけど、それでも家族になって一層、幸せになれると思っていた。

 ーーーなのに私に突然降りかかる、悪魔の微笑みが、私を狂わせようとしている。
 私はどうするべきなのだろうか、私はこの事実を夫に伝えるべきなのか。
 それすらも分からない。……どうしたらいいのだろう。

 その日はずっと、そんなことばかりを考えていた私であった。



 そしてその日の夜、夫が子供たちをお風呂に入れてくれた。
 子供たちの服を着せて、髪を乾かすのは大変だ。特に流斗はドライヤーをイヤがるから、すごく苦労する。

「流斗!髪乾かさないと風邪引いちゃうよ!」

「やぁーだー!」

「流斗、ほら!すぐ終わるから!」

 流斗はドライヤー本当にキライだから、いつも困ってしまう。



「いい子だね、流斗。はい、もう終わったよ」

「はぁーい!」

 我が家の子供たちは、本当に元気すぎる。保育園でもはしゃぎすぎてたまにケガをしてくるから、大変だ。
 でもそんな子供の成長を日々感じているからこそ、夫ともこうして子供たちに、たくさんの愛を捧げていけるんだなって思っている。

「はい、二人とももう寝るよ~!」

「えー!まだ寝ない!」

「わがまま言わないの。明日起きれなくなっちゃうよ?」

 空斗はたださえ、朝弱いのだから。
 
「……はーい」

「いい子ね。さ、ベッド行こう二人とも」

「うんっ」

「よし、行くぞ」

 二人を寝室へ連れて行くと、ベッドに潜ったのを確認してから部屋の電気を消す。

「ママ、おやすみ~」

「パパ、おやすみ~」

「はーい、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 二人が寝たのを確認した後、私たちはリビングの電気を消して寝室へと戻った。

「……なぁ、実乃梨」

  寝室へ行くと、夫が私のそばへとやってくる。

「……何?」
 
「久しぶりに、どう?」  
 
 私にそう聞いてくる夫。それは私を抱きたいってこと、なんだとすぐに悟った。
 そして思い出すのは、あのラブホテルのレシートのこと。 でも夫は、あのレシートを私が見つけたことも知らない。
 ここは何も悟られないのが、懸命だ。……咄嗟にそう思った。
 
「……うん、いいよ」

「実乃梨……今日も愛してるよ」

 夫は私をベッドにそのまま押し倒し、キスをする。

「んっ……」

 キスをしながら、パジャマのボタンに手を掛けると、一つずつボタンを外していく夫。

「んっ、ふぅ……」

 ちゅっと怪しい水音を立てながら、ブラのホックを起用に外していく夫。 
 そしてその胸に顔を埋めて、片方の手で私の胸を揉みながら、片方の手は一番敏感な所を弄(まさぐ)っていく。

「ぁっ……」

 夫の愛撫に感じてしまっている私を、嬉しそうに見つめる夫。

「実乃梨は本当、ここ弱いよな?昔からだけど」

「っ、ダメよ……」

 ダメだと言っているのに、夫は更に敏感な部分を激しく弄ってくる。

「あぁんっ……っ」

「実乃梨、ずっと抱けなくてごめん。……ずっと抱きたかった、実乃梨のこと」

 私に何度もキスをしながら、充分に濡れたことを確認した夫は、私の下着を脱がせる。

「んっ……っ」

 そのまま自分も下着を脱ぐと、熱く硬くなった欲望を私の中にグッと押し込んでくる。
 
「あぁっ……あ、なたっ……」

 そのまま夫の欲望を激しくぶつけられ、甘い声と吐息が漏れてしまう。

「ん、実乃梨……っ」

「あんっ、あっ……気持ち、いいっ……」

 夫にはいつも、こうして気持ちよくさせられる。自分ではコントロール出来ないほどに、いつも頭の中まで夫の欲望で支配される。

「実乃梨……声抑えなくていいから」

「っ、だって……。子供たちに、聞こえちゃう……」

「大丈夫だから」 

 そう思いつつも、やはり欲望には勝てない。
 夫が腰を動かす度にギシギシと揺れる、ベッドのスプリングと枕元にある薄暗いライトが、私たちの甘い夫婦の時間を色褪せずに映し出していく。 

「あぁっ……んっ、ダメッ……」

 あまりにも気持ち良くて、思わず体を仰け反る。

「実乃梨、その顔色っぽい……。もっと見せて」

「何、言ってるの……。もう……あんっ」

 夫は意地悪そうな表情をしながら、私の奥を更に深く責め立ててくる。

「っ、その顔、誰にも見せたくないな……」

「やっ……。あんっ……あなたっ!」

「あぁ……実乃梨っ……!」 

 そして夫は、私の奥を激しく突き立てると、そのまま両手を握って欲望を中に注ぎ込んだ。
 だけどその瞬間ーーー。

【円香……】

 ……え? 円香……?
 夫は私ではなく、違う女の名前を小さく呼んだのだったーーー。
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