3 / 12
③夫が呼んだ名前
しおりを挟む「みんな、お待たせ~。オムライス出来たよ~」
お昼になり家族全員分のオムライスを作った私は、リビングで遊んでいる子供たちにそう声をかける。
「わぁーい!」
「オムライス!」
嬉しそうにキッチンへとやってくる子供たちと、夫。
「おいしそう~」
「ね、おいしそうだね」
「食べましょうか」
それぞれの位置に座り、手を合わせていただきますと言ってからオムライスを食べ始める。
「ママ、おいしいっ!」
「おいしいっ!」
「本当に?良かった~」
子供たちは美味しそうに二人並んで、オムライスを頬張っていく。
「空斗(あきと)、ほっぺたにご飯粒が付いてるぞ?」
「え?どこ~?」
「空斗、反対」
「あ、ほんとだ!」
長男の空斗(あきと)。空斗はとてもいい子で、本当に心の優しい子だ。
時々、弟である流斗(りゅうと)を泣かせてしまうなどもあるけど、ちゃんと弟の面倒をよく見てくれる優しいお兄ちゃんだ。
「あ、流斗。グリンピース残しちゃダメだよ」
次男の流斗はグリンピースが苦手で、グリンピースが入っていると分かるとすぐによけてしまう。
好き嫌いなく食べてほしいと思っているのに、何か上手くはいかないものだ。
「だってキライなんだもん!」
そして嫌いな物が出ると、いつもそう言ってくる。
「好き嫌いしてると、大きくなれないよ流斗」
と言い聞かせてはいるのだけど。
「だっておいしくないんだもんっ!」
「流斗、ママが作ってくれたんだぞ? それなのに残したら、ママ悲しくなっちゃうだろ?」
どうしようか迷っていたら、夫が流斗にそう言ってくれた。
「パパ……」
夫はやっぱり、こうやって子供たちのことを考えてくれている。
ーーー浮気なんてするはず、ないわよね?
「え~」
「ほら、ご飯と一緒に食べれば美味しいぞ?」
夫が笑顔で流斗にそう言うと……。
「……はぁーい」
流斗は頑張って、グリンピースを食べてくれた。
「よーし!偉いぞ流斗!」
「りゅうと、えらい!」
夫は流斗を抱き上げると、流斗の頭をガシガシと撫でた。
「グリンピース、食べられたじゃないか流斗!」
「う、うんっ!」
こういう光景だけを見ていると、夫が浮気をしているなんてどうにも信じがたい。
浮気しているなんてのは、あり得ないとさえ思ってしまう。
こんなにも子供思いの父親なのに、私と子供たちを裏切ることなんてするのかな……。
そう思いたい気持ちが、どこかにあった。
「ほーら二人とも!早く食べちゃってよ!片付けられないでしょ?」
「お、そうだったな」
二人とも席に戻り、オムライスを再び口にする。
「ごちそうさまでした」
「はーい」
「ママ、ゲームしても良い?」
お昼ご飯を済ませた後、空斗が私にそう聞いてくる。
「えー?昨日もゲームしたでしょ?」
「今日は昨日のとは違うゲームだもん!」
空斗はゲームが大好きで、暇さえあればゲームしていい?と聞いてくる。
「はぁ……分かった。じゃあ30分だけだよ」
「やったぁ!」
空斗は嬉しそうにゲームの電源を入れて、ゲームを始める。
「ゲーム終わったら流斗とも遊んであげるんだよ、空斗!」
「はぁーい!」
本当に分かったのかな……。母は本当に大変だ。
「ママ、流斗がお絵かきしたいみたいだから、クレヨンとノート借りてくな」
「うん、分かった。 流斗のことお願いね、あなた」
「任せろって」
流斗は夫に任せ、私はすぐにお昼ご飯の片付けを始める。
ーーーこれが私たちの日常なのだ。これが私たち夫婦の、私たち家族のいつもの日常。
何にも変わらない、いつもの日常なんだ。
私たち家族は幸せなんだ。みんなで美味しいご飯を食べたり、みんなでお買い物に行ったり。
何気ない日常を楽しくしてくれるのが家族だ。
夫と結婚して夫婦になって、そして子供が出来て、家族になった。
その瞬間から私たちは、どこにでもいる普通の家族になれていたと思っていたのに……。
思い出すのは、あのラブホテルのレシートのことだ。
なんであんな所に、ラブホテルのレシートがあったのだろうか。……何であの人が、あのレシートを持っていたのか。
でもあのレシートを持っているということは、夫があそこに行ったとしか考えられない。
「……はぁっ」
あんなの気付きたくない事実、だった。
知りたくなんてなかった。そしたら私は、ずっと夫のことを愛せると思っていた。
なのにその事実があるかもしれないというだけで、胸が痛くて張り裂けそうになる。
「……何でこんなことになるんだろう」
私は夫と22で結婚して、空斗を産んだ。そして24で流斗を産んだ。
夫とは確かに授かり婚ではあったけど、それでも家族になって一層、幸せになれると思っていた。
ーーーなのに私に突然降りかかる、悪魔の微笑みが、私を狂わせようとしている。
私はどうするべきなのだろうか、私はこの事実を夫に伝えるべきなのか。
それすらも分からない。……どうしたらいいのだろう。
その日はずっと、そんなことばかりを考えていた私であった。
そしてその日の夜、夫が子供たちをお風呂に入れてくれた。
子供たちの服を着せて、髪を乾かすのは大変だ。特に流斗はドライヤーをイヤがるから、すごく苦労する。
「流斗!髪乾かさないと風邪引いちゃうよ!」
「やぁーだー!」
「流斗、ほら!すぐ終わるから!」
流斗はドライヤー本当にキライだから、いつも困ってしまう。
「いい子だね、流斗。はい、もう終わったよ」
「はぁーい!」
我が家の子供たちは、本当に元気すぎる。保育園でもはしゃぎすぎてたまにケガをしてくるから、大変だ。
でもそんな子供の成長を日々感じているからこそ、夫ともこうして子供たちに、たくさんの愛を捧げていけるんだなって思っている。
「はい、二人とももう寝るよ~!」
「えー!まだ寝ない!」
「わがまま言わないの。明日起きれなくなっちゃうよ?」
空斗はたださえ、朝弱いのだから。
「……はーい」
「いい子ね。さ、ベッド行こう二人とも」
「うんっ」
「よし、行くぞ」
二人を寝室へ連れて行くと、ベッドに潜ったのを確認してから部屋の電気を消す。
「ママ、おやすみ~」
「パパ、おやすみ~」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
二人が寝たのを確認した後、私たちはリビングの電気を消して寝室へと戻った。
「……なぁ、実乃梨」
寝室へ行くと、夫が私のそばへとやってくる。
「……何?」
「久しぶりに、どう?」
私にそう聞いてくる夫。それは私を抱きたいってこと、なんだとすぐに悟った。
そして思い出すのは、あのラブホテルのレシートのこと。 でも夫は、あのレシートを私が見つけたことも知らない。
ここは何も悟られないのが、懸命だ。……咄嗟にそう思った。
「……うん、いいよ」
「実乃梨……今日も愛してるよ」
夫は私をベッドにそのまま押し倒し、キスをする。
「んっ……」
キスをしながら、パジャマのボタンに手を掛けると、一つずつボタンを外していく夫。
「んっ、ふぅ……」
ちゅっと怪しい水音を立てながら、ブラのホックを起用に外していく夫。
そしてその胸に顔を埋めて、片方の手で私の胸を揉みながら、片方の手は一番敏感な所を弄(まさぐ)っていく。
「ぁっ……」
夫の愛撫に感じてしまっている私を、嬉しそうに見つめる夫。
「実乃梨は本当、ここ弱いよな?昔からだけど」
「っ、ダメよ……」
ダメだと言っているのに、夫は更に敏感な部分を激しく弄ってくる。
「あぁんっ……っ」
「実乃梨、ずっと抱けなくてごめん。……ずっと抱きたかった、実乃梨のこと」
私に何度もキスをしながら、充分に濡れたことを確認した夫は、私の下着を脱がせる。
「んっ……っ」
そのまま自分も下着を脱ぐと、熱く硬くなった欲望を私の中にグッと押し込んでくる。
「あぁっ……あ、なたっ……」
そのまま夫の欲望を激しくぶつけられ、甘い声と吐息が漏れてしまう。
「ん、実乃梨……っ」
「あんっ、あっ……気持ち、いいっ……」
夫にはいつも、こうして気持ちよくさせられる。自分ではコントロール出来ないほどに、いつも頭の中まで夫の欲望で支配される。
「実乃梨……声抑えなくていいから」
「っ、だって……。子供たちに、聞こえちゃう……」
「大丈夫だから」
そう思いつつも、やはり欲望には勝てない。
夫が腰を動かす度にギシギシと揺れる、ベッドのスプリングと枕元にある薄暗いライトが、私たちの甘い夫婦の時間を色褪せずに映し出していく。
「あぁっ……んっ、ダメッ……」
あまりにも気持ち良くて、思わず体を仰け反る。
「実乃梨、その顔色っぽい……。もっと見せて」
「何、言ってるの……。もう……あんっ」
夫は意地悪そうな表情をしながら、私の奥を更に深く責め立ててくる。
「っ、その顔、誰にも見せたくないな……」
「やっ……。あんっ……あなたっ!」
「あぁ……実乃梨っ……!」
そして夫は、私の奥を激しく突き立てると、そのまま両手を握って欲望を中に注ぎ込んだ。
だけどその瞬間ーーー。
【円香……】
……え? 円香……?
夫は私ではなく、違う女の名前を小さく呼んだのだったーーー。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる