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目の前に広がる塀に、華子は口をポカンと開けた。
左右どこまでも広がる壁は一体どこまで延びているのだろう。
手土産に選んだお菓子を見下ろし、心許がなくなる。
服は前日に翔悟と選んだので大丈夫だ。……ちょっと値が張ったものの、結果良かった。凄く……
「本当に大丈夫かな」
とは言え不安は拭えない。
「大丈夫だよ」
そう笑う翔悟の眼差しは優しくて、自然と気持ちが励まされるが。
「……わっ、本当に来た」
急に掛けられた声に肩を跳ねさせれば、翔悟とよく似た面差しの男子が門から顔を覗かせていた。
「久斗」
渋面を作る翔悟と久斗と呼ばれた彼を見比べて、華子は慌てて頭を下げた。
「は、初めまして! 仁科 華子です」
「やあ、知ってますよ? 翔悟の弟の久斗です。うわあ、未だに信じられないや。あの恋愛不適合者がまさかこんなに早く結婚するなんてさ」
「恋愛、不適合……?」
首を捻る華子を他所に、久斗は尚も言い募る。
「頭でっかちの恋愛しか出来なくて、いい年して枯れてると思ってたら、急に運命に会ったとか言い出した兄貴の話、聞きます?」
「……っ、それは」
楽しそうに告げる久斗に華子は真っ赤になった。
その話ならこの二日で散々と翔悟から聞かされてきている。もうこれ以上はキャパオーバーだ。
ニヤつく久斗を睨みながら、翔悟が華子を抱き寄せた。
「余計な真似するな久斗。あとそんなにジロジロ見るな、減る」
「減るって何?! 本当に本命の彼女が出来たんだなー。今まで俺が兄貴の彼女と話そうが二人でいようが大した反応も見せなかったくせに。いや、でもおめでとう? やっと兄貴に春が来たな!」
手を叩く久斗に翔悟が苦々しい顔をする。そんな翔悟をまじまじと覗き込めば、翔悟はバツが悪そうな顔で華子を見た。
「……ごめん、俺、多分誰かを好きになったのがそもそも初めてで……重いかも……」
「ううん……だって、私も初めてだよ?」
そう言えば翔悟は目を丸くした。
「今迄好きになった人には幸せになって欲しいって思ってた。けど、翔悟とは、一緒に幸せになりたいって思うから……」
そう告白すれば翔悟が目を見張った後、蕩けるような笑みを浮かべた。
そんな眩しい笑顔に少しだけ華子の気持ちが軽くなる。
(だから絶対、彼のご両親に認められたい)
そう意気込みを新たにしていると、久斗が門を引いて恭しく頭を下げた。
「ようこそ廉堂家へ」
そっと指先を絡ませて。
華子は翔悟との一歩を踏み出した。
※ おしまい
お付き合い頂きありがとうございました
左右どこまでも広がる壁は一体どこまで延びているのだろう。
手土産に選んだお菓子を見下ろし、心許がなくなる。
服は前日に翔悟と選んだので大丈夫だ。……ちょっと値が張ったものの、結果良かった。凄く……
「本当に大丈夫かな」
とは言え不安は拭えない。
「大丈夫だよ」
そう笑う翔悟の眼差しは優しくて、自然と気持ちが励まされるが。
「……わっ、本当に来た」
急に掛けられた声に肩を跳ねさせれば、翔悟とよく似た面差しの男子が門から顔を覗かせていた。
「久斗」
渋面を作る翔悟と久斗と呼ばれた彼を見比べて、華子は慌てて頭を下げた。
「は、初めまして! 仁科 華子です」
「やあ、知ってますよ? 翔悟の弟の久斗です。うわあ、未だに信じられないや。あの恋愛不適合者がまさかこんなに早く結婚するなんてさ」
「恋愛、不適合……?」
首を捻る華子を他所に、久斗は尚も言い募る。
「頭でっかちの恋愛しか出来なくて、いい年して枯れてると思ってたら、急に運命に会ったとか言い出した兄貴の話、聞きます?」
「……っ、それは」
楽しそうに告げる久斗に華子は真っ赤になった。
その話ならこの二日で散々と翔悟から聞かされてきている。もうこれ以上はキャパオーバーだ。
ニヤつく久斗を睨みながら、翔悟が華子を抱き寄せた。
「余計な真似するな久斗。あとそんなにジロジロ見るな、減る」
「減るって何?! 本当に本命の彼女が出来たんだなー。今まで俺が兄貴の彼女と話そうが二人でいようが大した反応も見せなかったくせに。いや、でもおめでとう? やっと兄貴に春が来たな!」
手を叩く久斗に翔悟が苦々しい顔をする。そんな翔悟をまじまじと覗き込めば、翔悟はバツが悪そうな顔で華子を見た。
「……ごめん、俺、多分誰かを好きになったのがそもそも初めてで……重いかも……」
「ううん……だって、私も初めてだよ?」
そう言えば翔悟は目を丸くした。
「今迄好きになった人には幸せになって欲しいって思ってた。けど、翔悟とは、一緒に幸せになりたいって思うから……」
そう告白すれば翔悟が目を見張った後、蕩けるような笑みを浮かべた。
そんな眩しい笑顔に少しだけ華子の気持ちが軽くなる。
(だから絶対、彼のご両親に認められたい)
そう意気込みを新たにしていると、久斗が門を引いて恭しく頭を下げた。
「ようこそ廉堂家へ」
そっと指先を絡ませて。
華子は翔悟との一歩を踏み出した。
※ おしまい
お付き合い頂きありがとうございました
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