36 / 36
終
しおりを挟む*
モーレスは真新しい墓標の前にしゃがみ込み、ワインの瓶を供えた。
墓標にはこう彫られている。
『アーミティッジ・ヘンリー』
"彼は私達に惜しみない知を与えた――この言葉の続きはいつか君の友が刻むだろう"
「よぅ、爺さん、シチリは行っちまったぜ……」
フッと鼻で笑い、
「そっちは、ローレンスとよろしくやってるか?」と、優しい声で語りかけるモーレス。
後ろでは、ヘンリーと親交のあった町の人達が黙祷を捧げていた。
モーレスはゆっくりと立ち上がり、丘の上から眼下の街並みを眺める。
強い風に吹かれ、菩提樹が葉音を立てた。
「あの子ら、元気にやってんのかねぇ……」
隣に来たミレイが腰に両手を当て、ため息交じりに言った。
「さぁな……まぁ、あいつらなら、上手くやるさ……」
「そうだね」とミレイは返し、短く笑う。
「マーカスは?」
「まだ見つからないね」
「そうか……」
「なぁに、あいつは簡単に死ぬような玉じゃないさ、そのうち何食わぬ顔して、いつもの席で酒でも飲んでるさ」
「くっくっく、違いねぇ……」
マーカスの捜索は続いていたが、行方はわからずじまいだった。
荒らされていた街外れの酒場でマーカスを見たという話もあったが、結局、有力な手がかりとはななり得なかった。
「大聖堂の連中は?」
「相変わらず使者は来てるみたいだね、何人か今回のことを聞かれたそうだよ」
「……大丈夫なのか?」
「問題ないよ、本当のことなんて誰にもわかりゃしないんだから。目の前で見た私達だってわかりゃしないだろ?」と、ミレイが笑う。
「フッ、それもそうだな……」
「で、あの子の家はどうするんだい?」
「ああ、一応、アンナに片付けてもらってるが……農園もあるし、俺が預かることにした」
「そうかい、ま、それがいいね」
モーレスは大袈裟なため息をつき、
「まったく、最後まで世話を焼かせやがってよぉ……」と空を見上げた。
「ふん、あんたも素直じゃないねぇ」
「うるせぇ」
「おーい、ふたりとも! サボってんじゃねぇぞー!」
酒盛りの準備をしていたバートン達から声がかかった。
「おぅ、すぐ行く」
「さ、浴びるほど飲んで、さっさと忘れちまいな!」
ミレイがモーレスの背をバチンと叩き、先にバートン達のところに向かう。
「いてて……ったく、加減しろって」
後に続くモーレスは、オネットの墓に目を向け、
「約束は守ったぜ」と、小さく呟いた。
*
パランティア・ウェストライトブリッジ――。
シクレッタからさらに西にある、小さな田舎町。
この町には最近できたばかりのハーブ店があった。
評判の看板娘の噂は、隣町まで聞こえるほどだ。
「じゃ、また来るねぇ」
「はーい、ありがとうございましたー」
エプロン姿のマイカが元気よくお辞儀をした。
「ふぅ……あ、そうだ、これも片付けなきゃ」
籠一杯に盛られた薬草を店の奥へ運び、その後は店先にある鉢植えに水をやる。
その様子を眺める近くの女店主達は、皆一様に目尻を下げていた。
『しかし、ほんとうに働き者だねぇ』
『ああ、賢くて器量もよし、言うことないよ……うちの孫のところに来てくれないもんかねぇ』
『無理無理、マイカちゃんはお爺ちゃんっ子だからねぇ、本当に偉いよ。店を切り盛りしながらちゃーんとお爺ちゃんの面倒までみてさぁ……それに比べてうちの馬鹿息子ときたら……』
『でも、なんだって、こんな辺鄙な田舎町に来たんだか……』
『そりゃあ、お爺ちゃんの療養のためでしょ~、ほんと泣けてくるわよねぇ』
女店主達が井戸端会議に花を咲かせていると、一人の若者がマイカのところにやって来た。
『ほら、また来たよ』
『あ~あ、花束なんか持っちゃって』
『この辺じゃ見かけない顔だね』
噂をされているとも知らずに、若者は顔を真っ赤にしながらマイカに声をかけた。
「あの……! す、すみません!」
「はい、いらっしゃいませ」
マイカは、にこっと微笑んで若者を出迎えた。
若者の顔がさらに赤くなる。
「い、いえ、僕は客ではなくてですね……いや、客でもありますが、厳密にはその……」
若者はぶるぶるっと顔を振り、仕切り直すように花束をマイカに差し出した。
「マイカさん! は、初めて見た時から好きになりました! あ、あなたはこの花よりもうつくしい! どうか、僕とお付き合いしていただけませんかっ!」
「ごめんなさい」
ほんの一瞬の間も無くマイカは答える。
「そ、そうですよね……マイカさんのように素敵な方が僕なんかと……」
若者はどんよりと今にも泣き出しそうな顔で呟く。
「いえ、違います」
またも即答するマイカ。
「え?」
若者が困惑した表情を浮かべる。
「私には決めた人がいます。それはもう、ずっと変わることはないんです。だから、決してあなたが嫌だからとか、そういうことじゃないんです」
「あ……あはは、なんだ、そっか、なるほど。はは、いやぁ~そうじゃないかと思ってたんです。はっきり言ってくれて良かった、うん。そっかそっか、お仕事の邪魔をしてすみませんでした、では――」
若者は花束を握り絞めて走り去って行った。
マイカが若者が落としていった一輪の花を拾い上げようとすると、花は風に吹かれ、空に舞い上がった。
*
「ただいま~」
私は玄関から中に向かって声をかけた。
リビングに入り、カーテンを閉めようとして手をとめる。
白い灯台の周りを飛ぶ海鳥を眺めて、私は昔のことを思い出していた。
最初にシチリとふたりで選んだのは、海が見下ろせる高台に建つ小さな家。
赤い屋根が可愛くて、私は一目見て気に入ってしまった。
しかも馬小屋もついていて、まさに私達を待っていたかのような物件だったのだ。
シクレッタでの生活はとても情熱的だった。
夏は浜辺に降りて夕陽を眺めたり、冬は暖炉の前で遅くまで語り合って過ごした。
喧嘩なんてする暇がないくらい、常にお互いの好きをぶつけ合うのに夢中だった。
次に選んだのは山間にあるロッジ風の家。
シチリの実家に似ていて、とても落ち着ける家だった。
私はシチリに教わった薬を作り、シチリは猟師のように狩りをして暮らしていた。
夜は本を読んだり、ふたりで星を観に行ったり、時にはテントを張って外で過ごしたこともあった。
ふたりだけの、とても濃密で、ゆっくりとした時間に幸せを感じた。
でも、何度目かの冬に……ピウスが旅立ってしまった。
とても、とても哀しかったけど、二人でピウスを弔ってあげた。
墓標に『世界一、速い馬』ってシチリが彫ろうとしたのを必死でとめたっけ……ふふふ。
結局、色々と相談して『ふたりの最愛の友、ここに眠る』と彫った。
私はピウスに、彼をちゃんと迎えに来てあげてねってお願いをした。
きっと私にはできないことだから……。
それからシチリと相談して、また海の近くに引っ越すことにした。
それが今住んでいるこの家だ。
たぶん、この家が、最後の家になると思う。
私はリビングを出て、シチリの部屋に向かう。
少しだけ開いた扉から、オレンジ色の灯りが漏れている。
ドアをノックしながら、ベッドで眠るシチリに声をかけた。
「ただいま、具合はどうですか?」
「あ……あぁ、おかえり」
シチリが起き上がろうとする。
私は慌てて側に駆け寄って体を支えた。
「無理に起きなくて大丈夫ですよ」
「うん……大丈夫、今日は何だか調子が良いんだよ」と、シチリが微笑む。
「そっか、よかったです」
ベッドの脇に座り、シチリに寄り添った。
いつものように、そっと優しく、私の頭を撫でてくれる。
気付いたのはいつだったかな……。
シチリの顔に小さな皺が目立ち始めた頃?
それとも、シチリが良く休むようになった頃?
私だけがあの頃のままだった。
シチリは歳を重ねた。
私も同じように老いていくんだとばかり思ってた。
何も疑いもしなかった。
でも、私だけが……あの頃のままだった。
「マイカ、風邪をひくよ……」
「ううん、大丈夫です。もう少しだけ……」
シチリの手に頬を当てる。
猫みたいに、すりすりと何度も頬ずりをした。
ふと気付くと、外は真っ暗だった。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「あ、ごめんなさい、シチリ――」
見ると、シチリは気持ちよさそうに寝息を立てていた。
私はシチリの額にキスをした。
「おやすみなさい、いい夢を見てくださいね」
そう囁いたあと、毛布をかけ直して部屋の灯りを消した。
*
次の日の朝、部屋に行くとシチリが苦しそうに咳き込んでいた。
「ゴホゴホッ! ゴホッ!」
「大丈夫ですか⁉ い、いま、お薬持ってきますから!」
すぐに私はリビングに走った。
その辺が散らかるのも構わず、薬箱をひっくり返し、目当ての薬を握り絞めて部屋に戻った。
「シチリ! ほら、お薬ですよ、飲めますか?」
「……」
無言で頷くシチリ。
私はシチリを抱き起こして、薬を飲ませた。
「ゴホッ! ゴホゴホッ!」
いつもよりもひどい発作だ。
とても苦しそうにして、真っ赤になった顔を歪めている。
見ているのが辛い。
何もしてあげられないのが苦しい。
胸が張り裂けそうになる。
変わってあげられたら……せめて半分でも痛みを分けて欲しかった。
「シチリ……お願いですぅ……シチリぃ……」
いつの間にか、私の視界は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
必死で背中をさすりながら、いつの間にこんなに痩せ細ってしまったのだろうと胸が痛んだ。
私をひょいと持ち上げていた逞しい腕は、今では私よりも細い……。
「マイカ……」
「シチリ⁉ なんですかっ? ここにいますよ⁉」
「君は……な、泣いても……き、綺麗だね……」
震える手で私の涙を拭う。
「も、もう! シチリったら……こ、こんなときに……」
「あぁ、楽になってきた……」
シチリが水を飲む。
「久しぶりにこんなに水を飲んだな……何だか、生き返ったみたいだ……」
「よかった……咳がとまりましたね……」
コップを受け取って、サイドテーブルに置く。
「ねぇ、マイカ」
「ん?」
――えっ?
振り返ると、あの頃のシチリがいた。
が、次の瞬間、それは錯覚だったと気付く。
「僕は……変わってしまったかい?」
「う、ううん、そんなことない! シチリは、ずっとシチリです!」
嗄れた声、白くなってしまった髪、でも……何も、何も変わってない。
いつも優しくて、私を一番に想ってくれて、楽しくて、かっこよくて、ちょっとだけえっちで……。
シチリは……シチリは……。
「いいんだ、でも……これだけは言っておきたくて」
「い、いやです! そんなの元気になったらいつでも聞きますから!」
涙を堪えて私が俯くと、シチリがそっと私の手を握った。
「マイカ……君への気持ちは、流星を見たあの夜から何も変わっちゃいない……。汽車に乗った時も、二人で初めて家を選んだ時も、こうしている今も、ずっと君を愛し続けてる……それが、僕のたったひとつの自慢なんだ……マイカ……」
「シチリ……シチリ……シチリぃ……だめ……だめです、許しません……許しませんよ!」
「……」
シチリが私に倒れかかってくる。
私はシチリをぎゅっと力一杯抱きしめた。
「シチリぃ……」
悲しみが込み上げる。
抑えきれない感情が堰を切ったようにあふれ出す。
「う……うわぁああああーーーーん、うわあああああーーーー!」
叫んだ。
泣いて、泣いて、泣き叫んだ。
狂ってしまえれば……どんなに楽だろう。
「うわあああああーーーー!」
彼のことを忘れられれば、どんなに楽だろう……。
「あああああぁーーーー!」
シチリの中には、もう誰もいなかった。
行ってしまった。
「うぅ……うぅわあああーーーん!」
ピウスは来てくれた?
私は……私のことは誰が迎えに来てくれるの?
シチリ……逢いたいです。
*
『一番海が綺麗に見える場所なんだよ』
シチリはそう言っていた。
ちょっと得意そうな、あの笑顔が忘れられない。
世界にはまだ、シチリが見たかった素晴らしい景色があるはずだ。
色んな場所へ行こう。
色んな景色を見よう。
色んな人に会って、色んな経験をしよう。
お気に入りの白いブラウスと青いスカート。
旅行鞄には、彼に貰った小さな鉄製の熊を入れて。
私は店の扉の前に立ち、掛け札を『CLOSE』にする。
静かに目を瞑り、そっと扉に手を触れた。
シチリとの思い出が脳裏に流れていく。
すべてが夢のようだった。
『――行こう、マイカ』
風に乗って、シチリの声が聞こえた気がした。
小さく頷いて、足を一歩踏み出す。
私は旅に出る。
いつか彼が迎えに来る日まで……。
完
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる