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0、瀕死の勇者に押し掛けられた日のありあわせオムライス(後)
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さ、ラストスパートだ!
ボウルにたまごを3個割り入れて、菜箸で切るようにしっかりかき混ぜる。
カラザ? 取らないよ。 焼いたらわかんないでしょ。
多めの油を入れたフライパンを強火でガンガンに熱して、うす煙が出てきたら卵液を一気に投入!
フライパンを揺すりながら菜箸で掻き回し、傾けても卵液が垂れないくらいの半熟の状態で火を止める。
お皿に盛ったご飯をフライパンの真ん中にそっと乗せ、両端を折り畳んで巻き付け形を整えたら、フライパンを持ち変えてひっくり返すみたいにお皿に戻す。
トマト煮のソースをたっぷり上に掛けたら、オムライスの完成だ。
もう一個同じように、勇者っぽいひとの分も作る。
「できたできた。 さ、食べよ」
俺はテーブルにできた料理をいそいそと並べ、満を持して手を合わせた。
「いただきます」
オムライスを口いっぱい頬張る。
うん、元々味つきご飯だったから、ケチャップ足さなくても充分美味しい!
とうもろこしの風味もしっかり感じられるし、たまごのトロトロ具合が大正解だな。
ポタージュもちゃんと牛乳使ったやつみたいにミルキーだし、生乳より賞味期限長いからスキムミルクって意外と便利かも。
切り干し大根もしっかり水分吸って戻っててポリポリだ。
乾物と缶詰めで作った即席の割にはちゃんとしたゴマ酢和えになってる。
コールスローだと酸っぱいもの&酸っぱいものになっちゃうから急遽しば漬けと一緒に醤油で和えてみたけど、これ温サラダって感じで美味い。
色味もピンクでかわいいし、お弁当向きだなこのおかず。
香の物はなくなっちゃったけど、意外とあり合わせで一汁三菜用意できるもんだな。
「……」
勇者っぽいひとは食事には手を付けず、ぱくぱく食べ続ける俺の様子をじっと警戒するみたいに見てる。
その間腹はぎゅるぎゅる鳴りっぱなし。
腹減ってんなら食べりゃいいのに。
「食べないの? せっかく作ったんだから温かいうちに食べて欲しいんだけど。 あ、なんか嫌いなものとか入ってた?」
俺が首を傾げると、勇者っぽいひとはインスタントコーヒーの溶け残りでも舐めたみたいな笑い方をした。
「……毒を喰らわばなんとやら、か」
「はァ? 何言ってんの?」
勇者っぽいひとは用意した使いそびれのコンビニスプーン(客用とか持ってないからさ……)を握り締め、掬ったオムライスを恐る恐る口に運んだ。
「……っ!!」
「どう?」
なんだかんだひとに料理作ったのなんか初めてだから、反応が気になってしまう。
勇者っぽいひとは何も言わなかった。
整った顔面はめちゃくちゃに強張っていて、それはとても美味しいものを食べた時の幸せそうな顔とはかけ離れた表情だった。
それでも、まるで何かに取り憑かれたようにガツガツと、目の前の料理を掻き込みながら必死に平らげていく彼の姿を見せられたら、美味しいかどうか、返事なんか聞かなくったってすぐにわかった。
「まだ卵残ってるけど、オムライスのおかわりいる?」
「いりまふ!」
俺は空になった長丸皿を受け取り、おかわりオムライスを作りに立ち上がる。
◆◆◆
「僕の住む村に、ある日突然ダンジョンが発生したんです」
見事な食べっぷりで三杯目のおかわりオムライスを平らげたあと、お腹が膨れて落ち着いたのか、デザートに出した甘夏ヨーグルトを食べながら、勇者っぽいひとは急に自分の身の上について語り始めた。
どうやら彼の住む世界では、ダンジョンとは自然発生するものらしい。
一度発生すれば自然消滅することはほぼなく、そのうち力を蓄えて成長し、徐々に範囲を拡げてより多くのモンスターを産み出していく。
ダンジョンを消す方法はただひとつ、誰かが内部に侵入し、ダンジョンの核となるダンジョンコアを破壊することだそうだ。
「村はダンジョンから溢れ出てきたモンスターに襲われ、毎日家畜や作物の被害が絶えませんでした。 困り果てた村長は、村の若者の中からひとり勇者を選んでダンジョンに潜らせ、ダンジョンコアを破壊させる使命を与えたんです」
「いや、なんでひとりで潜らせんだよ。 村人全員で出向いて数の暴力でぶっ壊した方が安全で確実なのでは?」
「それは、ダンジョンの中には勇者ひとりしか入れないからです。 いえ、正確に言うと大人数でも入れないこともないのですが、その場合聖なる結界が使えなくなってしまうので」
「聖なる結界?」
「はい」と、勇者っぽいひとはさっきまで穴が空いていた自分の腹を擦る。
「聖なる結界はダンジョンの中に複数点在しており、ダンジョンの内部でのみ機能します。 選ばれし勇者がひとりでこの結界の中に入ると、ダンジョンの女神の加護により疲労や身体に負っていた傷が回復します。 また、先に進んだ際にモンスターに殺されたり罠に掛かって死んでしまった場合、その勇者が最後に触れた結界の元へ飛ばされ蘇生させる、という効力を発揮するそうです」
……俺、多分それ知ってる。
触れると体力が全回復して死んでもやり直しが効く、勇者だけが使える聖なる結界……それって、セーブポイントのことでは?
つまりこのひとは勇者っぽいひとじゃなくて、本当に勇者なんだ。
しかも、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者ってわけだ。
「なるほどね。 ひとりでダンジョンに潜るとおひとりさま専用の聖なる結界が使えるから、勇者はダンジョン内で死んでもまた生き返って攻略を再チャレンジできる。 大勢で押し掛けたら戦力的には有利だけど、聖なる結界が使えないから誰かが死んだらもう二度と生き返れない、と」
すると、さっき俺の目の前で勇者くんの血みどろの身体の穴が塞がったのは、セーブポイントに入った勇者が全回復した場面だったってことか。
オッケーそういう感じの夢ね、完全に把握したわ。
「ダンジョンの内部は非常に危険です。 通る度に変形する入り組んだ迷宮、狂暴なモンスター、一歩間違えば死んでしまうような危険な罠、一度下に戻ればもう二度と上に戻れない階段、……そのような場所に命の保証がない状態で入るなんて自殺行為です。誰かが死ぬような危ない橋を渡るよりも、命の保証があるひとりが時間をかけてでもダンジョンを攻略する。 それが村の決定でした」
今俺の頭の中には、妻子持ちの肥満体のおっさん商人がひとりでダンジョンに潜って空腹と戦いなから宝探しするローグライクのBGMが流れている。
いや、あのゲームにはセーブポイントとかはなかったけど。
「で、その勇者に選ばれたのが勇者くんってわけだ?」
「そうです。 僕は孤児で身寄りもありませんから、万が一帰らぬ身となっても悲しむひとはいないので都合がいいと村長が」
なんだそれ、吐き気を催す邪悪な肥溜めクソ野郎じゃねえかその村長。
てか、顔が整ってて気付かなかったけど、よく見たらこの子まだ高校生くらいじゃないか?
まだ子どもなのに、ひとりでそんな危険なことをさせられて……いくら夢だからって胸糞が悪いな。
「それで勇者くんは、……ええと、俺は天白羽佳っていうんだけど、勇者くんの名前は何て言うの?」
「僕の名前は【繧?≧縺¶励c】といいます」
「なんて??」
「【繧?≧縺¶励c】です」
「????」
え、なんか名前の時だけ不自然に雑音が重なって聞き取れないんだけど、なんでだ?
「あ、そうだ」
適当なチラシの紙とボールペンを差し出して、勇者くんに手渡す。
勇者くんはこちらの意図を汲んで名前を筆記で書いてくれたが、俺にはその文字はさっぱり読めなかった。
反対に、勇者くんはチラシに書いてあるひらがな、カタカナ、漢字まで正確に読むことが出来ている。
そもそも別の世界から来た人間と言葉が通じてるのだって、よくよく考えればおかしいわけで。
……勇者くんについてる女神の加護とやらは、回復力の他にも識字能力も補ってるのか?
俺は向こうの言葉は理解できないけど勇者には自動翻訳されて聞こえてて、勇者くんが喋る時も意志疎通ができるようこっちの言語に翻訳された言葉が聞こえるようになってる?
勇者くんの名前が聞き取れないのは、人名がこっちの言葉に翻訳できない固有名詞だから……?
「あの、そちらの呼びやすい呼び方をしてもらえたら」
「あ、そう? じゃあ悪いけど勇者くんって呼ばせてもらうね。 勇者くんはさ、なんでそれで俺んちにいるの? 話を聞く限りだと、君は今ひとりでダンジョン攻略をしていた真っ最中なんじゃないの? 体力を回復するにはセーブポイント……聖なる結界の中に入らないといけないんじゃ?」
すると、勇者くんは困ったように眉尻を下げる。
「それが……、よくわからないんです」
「わからない?」
「僕がダンジョンに潜り始めたのは、向こうの時間で昨日の深夜からのことでした。 地下一階、二階を調べ、階段を下りて地下三階に到達した時です。そこで僕は噂に聞く、聖なる結界のように青く光る魔方陣を見つけました。 それで早速中に入ってみたのですが、……特に何も起こらなくて。 何しろダンジョンに入ったのも、噂に聞く聖なる結界を見たのも初めてだったので、勝手がよくわからなくて」
この勇者くんは正真正銘駆け出し勇者くんってわけだ。
これがゲームだったら、普通は初めて見るものにはわかりやすいようチュートリアルが出るもんなんだけど……そういう初心者向けの配慮はないの? ダンジョンの女神さまってのは随分不親切だなぁ。
「不思議に思いつつも、僕は地下三階を進もうとしました。 すると、曲がり角で顔見知りを見つけたんです。 ダンジョン内にはひとの姿に化けるモンスターもいます。 ひとりでダンジョンに潜る心寂しさにつけこまれたのでしょう。 何故こんな場所にいるのかと、咄嗟に駆け寄ろうと油断した瞬間に背後から腹をひと突きされ、一瞬意識が途切れて……気付いたら、怪我を負ったまま真っ暗で狭い場所に立っていました。 すぐ目の前に扉があったので、開いてみたらこの部屋に着いた、というわけなんです」
そう言って、勇者くんが指差したのは俺の家のクローゼット。
あんま服持ってないから今冠婚葬祭用のスーツしか入ってないけど。
俺は席を立ち、クローゼットを開くが、中は何の変哲もない普通の賃貸備え付けクローゼットだ。
「ほんとにこの中から出てきたの?」
「はい」
まあ確かに、四人の姉妹兄弟がクローゼットの中から異世界のなんちゃら王国へ行って冒険するみたいな超有名なファンタジー小説があるっちゃあるけど……。
「もしかしたら、俺の家のクローゼットと勇者くんが攻略中のダンジョンにあるセーブポイントが、何かの偶然でうっかり繋がっちゃったのかもね」
勇者くんはハッとしたような顔で「あり得ると思います」と答える。
「ダンジョン学の学者の説では、そもそもダンジョンというのはひとの手で作られたものではなく、『空間の綻び現象』という自然災害が起こってできた産物なんだそうです。 時空の壁に穴が空き、そこに世界の漂着物が溜まっていって迷宮のような造りになるのだとか。……あなたもこのあなたの家も、どう見ても僕の住んでいた世界とは異なる世界の文明のものですよね? ダンジョンの空間はとても不安定ですから、どこかに空いた空間の穴同士が繋がる確率もゼロではないのかもしれません」
それって、竜巻が起こったあとに畑が土ごと抉れてるみたいな、そういう天災的な感じでダンジョンが生成されてるってこと? 時空に穴開くとか異世界の災害ヤバ!
そんで俺の家がダンジョン攻略中の勇者くんのセーブポイントで、クローゼットがその出入り口って、ますます夢が混沌としてきたな。
「この部屋が聖なる結界の内部だというのなら、僕はさっき一度死んでしまったんですね」
静かに呟いた勇者くんの声は僅かに震えていた。
……無理もない。
いくら女神の加護とかいう原理のよくわかんない力で死なないからって、自分が殺されて冷静でいられる人間なんかそうはいないよ。
「勇者くんさ、そのダンジョンもう攻略やめちゃいなよ」
「……え?」
俯いていた勇者の碧い目が、切りガラスのグラスに注いだサイダーみたいに揺らめきながらこっちを向く。
「だって、死ぬような目に遭うなんて普通に嫌じゃん。 せっかくこっちの世界に来たんだからさ、そういう危険なことはやめて安全なこの世界で暮らしなよ。 勇者くんは国籍とかはないけど、日本の制度は結構ユルガバだから仕事とかはなんとかなるだろうし、落ち着くまではうちにいたらいいからさ」
勇者くんは、「そんなこと言われるとは思わなかった」といった顔でポカンと俺を見ている。
素直な子だな、顔に全部出てる。
「ね、そうしなよ」
「……でも、ダンジョンを放置するのはやはり危険ですし、課せられた使命はきちんと果たさないと。 やめるやめないは僕の一存で決められるようなことではないので」
「いいじゃん、村のやつらなんか困らせときゃ。 君ひとりを犠牲にして安穏と暮らしてるようなやつらのために、辛い思いすることなんかないよ」
「ありがとうございます。 でも、村には孤児だった僕を育ててくれた恩人もいます。 村長だって、羽佳さんは憤ってくれてるけど悪いひとではないんです。 ただあの時は立場的に誰を選ばなければならなくて、それがたまたま僕だったってだけで。 それに、もし僕が逃げたら他の村人が新たな勇者に選ばれてしまう。 恩人や親切にしてくれたひとが痛い思いをするのはきっともっと辛いから……だから、できるところまでは頑張ろうと思います」
け、健気すぎる……! もっと我が身一番に生きるべきだよ勇者くんは。
「……とりあえずさ、今日は疲れたでしょ? 掛け布団貸したげるから、今は何も考えずにゆっくり休みな?」
勇者としての使命に責任感は持ちつつも、肉体の疲労には抗えないのか勇者くんは大人しく俺に従った。
俺も今日はバタバタしちゃって、なんか疲れたな。
早く風呂入って寝ちゃお。
その日は勇者くんにはソファで寝てもらって、俺も普通に風呂入って歯ァ磨いて普通に寝た。
翌朝には勇者くんも勇者くんの脱いだ鎧も綺麗さっぱり消えていて、一応もう一度クローゼットを確認してみたけど、中はクリーニングから返ってきたスーツをそのままぶらさげてるだけのただの閑散としたクローゼットだった。
やっぱり昨日のは夢だったんだな、変な夢だったなって思って、俺はいつも通り朝食を用意していつも通り過ごした。
スマホでニュースと天気予報チェックして、軽く筋トレして、掃除と洗濯して、一週間ぶりにスーパーに買い出しに出掛けて、昼飯は簡単に済ませて、配信で見たかった映画一本観て。
それで、夕方になったら晩御飯の仕度を始めて。
ところがそんないつもの決まったルーティンは、『ガチャリ』とひとりでにクローゼットが開く音で破られた。
後ろを振り返ると、クローゼットから出てきた勇者くんと目が合う。
お互い何か言うよりも先に、「ギュルゴゴゴゴゴッ」と勇者くんの腹の虫が怪獣みたいに鳴いた。
……夢じゃ……なかったのね……。
これが、以降ダンジョン内にある聖なる結界、もといセーブポイントとなった俺の部屋にやって来る勇者くんと一緒に晩飯を食べるようになった発端の話だ。
【本日のおしながき✕】
とうもろこしご飯
チキンのトマト煮
小松菜のおひたし
わかめの味噌汁
コールスロー
しば漬け
↓
【本日のおしながき改め】
あり合わせのオムライス
サバ缶とわかめと切り干し大根のゴマ酢和え
小松菜のご飯入りポタージュ
キャベツのしば漬け和え
甘夏ヨーグルト
ボウルにたまごを3個割り入れて、菜箸で切るようにしっかりかき混ぜる。
カラザ? 取らないよ。 焼いたらわかんないでしょ。
多めの油を入れたフライパンを強火でガンガンに熱して、うす煙が出てきたら卵液を一気に投入!
フライパンを揺すりながら菜箸で掻き回し、傾けても卵液が垂れないくらいの半熟の状態で火を止める。
お皿に盛ったご飯をフライパンの真ん中にそっと乗せ、両端を折り畳んで巻き付け形を整えたら、フライパンを持ち変えてひっくり返すみたいにお皿に戻す。
トマト煮のソースをたっぷり上に掛けたら、オムライスの完成だ。
もう一個同じように、勇者っぽいひとの分も作る。
「できたできた。 さ、食べよ」
俺はテーブルにできた料理をいそいそと並べ、満を持して手を合わせた。
「いただきます」
オムライスを口いっぱい頬張る。
うん、元々味つきご飯だったから、ケチャップ足さなくても充分美味しい!
とうもろこしの風味もしっかり感じられるし、たまごのトロトロ具合が大正解だな。
ポタージュもちゃんと牛乳使ったやつみたいにミルキーだし、生乳より賞味期限長いからスキムミルクって意外と便利かも。
切り干し大根もしっかり水分吸って戻っててポリポリだ。
乾物と缶詰めで作った即席の割にはちゃんとしたゴマ酢和えになってる。
コールスローだと酸っぱいもの&酸っぱいものになっちゃうから急遽しば漬けと一緒に醤油で和えてみたけど、これ温サラダって感じで美味い。
色味もピンクでかわいいし、お弁当向きだなこのおかず。
香の物はなくなっちゃったけど、意外とあり合わせで一汁三菜用意できるもんだな。
「……」
勇者っぽいひとは食事には手を付けず、ぱくぱく食べ続ける俺の様子をじっと警戒するみたいに見てる。
その間腹はぎゅるぎゅる鳴りっぱなし。
腹減ってんなら食べりゃいいのに。
「食べないの? せっかく作ったんだから温かいうちに食べて欲しいんだけど。 あ、なんか嫌いなものとか入ってた?」
俺が首を傾げると、勇者っぽいひとはインスタントコーヒーの溶け残りでも舐めたみたいな笑い方をした。
「……毒を喰らわばなんとやら、か」
「はァ? 何言ってんの?」
勇者っぽいひとは用意した使いそびれのコンビニスプーン(客用とか持ってないからさ……)を握り締め、掬ったオムライスを恐る恐る口に運んだ。
「……っ!!」
「どう?」
なんだかんだひとに料理作ったのなんか初めてだから、反応が気になってしまう。
勇者っぽいひとは何も言わなかった。
整った顔面はめちゃくちゃに強張っていて、それはとても美味しいものを食べた時の幸せそうな顔とはかけ離れた表情だった。
それでも、まるで何かに取り憑かれたようにガツガツと、目の前の料理を掻き込みながら必死に平らげていく彼の姿を見せられたら、美味しいかどうか、返事なんか聞かなくったってすぐにわかった。
「まだ卵残ってるけど、オムライスのおかわりいる?」
「いりまふ!」
俺は空になった長丸皿を受け取り、おかわりオムライスを作りに立ち上がる。
◆◆◆
「僕の住む村に、ある日突然ダンジョンが発生したんです」
見事な食べっぷりで三杯目のおかわりオムライスを平らげたあと、お腹が膨れて落ち着いたのか、デザートに出した甘夏ヨーグルトを食べながら、勇者っぽいひとは急に自分の身の上について語り始めた。
どうやら彼の住む世界では、ダンジョンとは自然発生するものらしい。
一度発生すれば自然消滅することはほぼなく、そのうち力を蓄えて成長し、徐々に範囲を拡げてより多くのモンスターを産み出していく。
ダンジョンを消す方法はただひとつ、誰かが内部に侵入し、ダンジョンの核となるダンジョンコアを破壊することだそうだ。
「村はダンジョンから溢れ出てきたモンスターに襲われ、毎日家畜や作物の被害が絶えませんでした。 困り果てた村長は、村の若者の中からひとり勇者を選んでダンジョンに潜らせ、ダンジョンコアを破壊させる使命を与えたんです」
「いや、なんでひとりで潜らせんだよ。 村人全員で出向いて数の暴力でぶっ壊した方が安全で確実なのでは?」
「それは、ダンジョンの中には勇者ひとりしか入れないからです。 いえ、正確に言うと大人数でも入れないこともないのですが、その場合聖なる結界が使えなくなってしまうので」
「聖なる結界?」
「はい」と、勇者っぽいひとはさっきまで穴が空いていた自分の腹を擦る。
「聖なる結界はダンジョンの中に複数点在しており、ダンジョンの内部でのみ機能します。 選ばれし勇者がひとりでこの結界の中に入ると、ダンジョンの女神の加護により疲労や身体に負っていた傷が回復します。 また、先に進んだ際にモンスターに殺されたり罠に掛かって死んでしまった場合、その勇者が最後に触れた結界の元へ飛ばされ蘇生させる、という効力を発揮するそうです」
……俺、多分それ知ってる。
触れると体力が全回復して死んでもやり直しが効く、勇者だけが使える聖なる結界……それって、セーブポイントのことでは?
つまりこのひとは勇者っぽいひとじゃなくて、本当に勇者なんだ。
しかも、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者ってわけだ。
「なるほどね。 ひとりでダンジョンに潜るとおひとりさま専用の聖なる結界が使えるから、勇者はダンジョン内で死んでもまた生き返って攻略を再チャレンジできる。 大勢で押し掛けたら戦力的には有利だけど、聖なる結界が使えないから誰かが死んだらもう二度と生き返れない、と」
すると、さっき俺の目の前で勇者くんの血みどろの身体の穴が塞がったのは、セーブポイントに入った勇者が全回復した場面だったってことか。
オッケーそういう感じの夢ね、完全に把握したわ。
「ダンジョンの内部は非常に危険です。 通る度に変形する入り組んだ迷宮、狂暴なモンスター、一歩間違えば死んでしまうような危険な罠、一度下に戻ればもう二度と上に戻れない階段、……そのような場所に命の保証がない状態で入るなんて自殺行為です。誰かが死ぬような危ない橋を渡るよりも、命の保証があるひとりが時間をかけてでもダンジョンを攻略する。 それが村の決定でした」
今俺の頭の中には、妻子持ちの肥満体のおっさん商人がひとりでダンジョンに潜って空腹と戦いなから宝探しするローグライクのBGMが流れている。
いや、あのゲームにはセーブポイントとかはなかったけど。
「で、その勇者に選ばれたのが勇者くんってわけだ?」
「そうです。 僕は孤児で身寄りもありませんから、万が一帰らぬ身となっても悲しむひとはいないので都合がいいと村長が」
なんだそれ、吐き気を催す邪悪な肥溜めクソ野郎じゃねえかその村長。
てか、顔が整ってて気付かなかったけど、よく見たらこの子まだ高校生くらいじゃないか?
まだ子どもなのに、ひとりでそんな危険なことをさせられて……いくら夢だからって胸糞が悪いな。
「それで勇者くんは、……ええと、俺は天白羽佳っていうんだけど、勇者くんの名前は何て言うの?」
「僕の名前は【繧?≧縺¶励c】といいます」
「なんて??」
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「????」
え、なんか名前の時だけ不自然に雑音が重なって聞き取れないんだけど、なんでだ?
「あ、そうだ」
適当なチラシの紙とボールペンを差し出して、勇者くんに手渡す。
勇者くんはこちらの意図を汲んで名前を筆記で書いてくれたが、俺にはその文字はさっぱり読めなかった。
反対に、勇者くんはチラシに書いてあるひらがな、カタカナ、漢字まで正確に読むことが出来ている。
そもそも別の世界から来た人間と言葉が通じてるのだって、よくよく考えればおかしいわけで。
……勇者くんについてる女神の加護とやらは、回復力の他にも識字能力も補ってるのか?
俺は向こうの言葉は理解できないけど勇者には自動翻訳されて聞こえてて、勇者くんが喋る時も意志疎通ができるようこっちの言語に翻訳された言葉が聞こえるようになってる?
勇者くんの名前が聞き取れないのは、人名がこっちの言葉に翻訳できない固有名詞だから……?
「あの、そちらの呼びやすい呼び方をしてもらえたら」
「あ、そう? じゃあ悪いけど勇者くんって呼ばせてもらうね。 勇者くんはさ、なんでそれで俺んちにいるの? 話を聞く限りだと、君は今ひとりでダンジョン攻略をしていた真っ最中なんじゃないの? 体力を回復するにはセーブポイント……聖なる結界の中に入らないといけないんじゃ?」
すると、勇者くんは困ったように眉尻を下げる。
「それが……、よくわからないんです」
「わからない?」
「僕がダンジョンに潜り始めたのは、向こうの時間で昨日の深夜からのことでした。 地下一階、二階を調べ、階段を下りて地下三階に到達した時です。そこで僕は噂に聞く、聖なる結界のように青く光る魔方陣を見つけました。 それで早速中に入ってみたのですが、……特に何も起こらなくて。 何しろダンジョンに入ったのも、噂に聞く聖なる結界を見たのも初めてだったので、勝手がよくわからなくて」
この勇者くんは正真正銘駆け出し勇者くんってわけだ。
これがゲームだったら、普通は初めて見るものにはわかりやすいようチュートリアルが出るもんなんだけど……そういう初心者向けの配慮はないの? ダンジョンの女神さまってのは随分不親切だなぁ。
「不思議に思いつつも、僕は地下三階を進もうとしました。 すると、曲がり角で顔見知りを見つけたんです。 ダンジョン内にはひとの姿に化けるモンスターもいます。 ひとりでダンジョンに潜る心寂しさにつけこまれたのでしょう。 何故こんな場所にいるのかと、咄嗟に駆け寄ろうと油断した瞬間に背後から腹をひと突きされ、一瞬意識が途切れて……気付いたら、怪我を負ったまま真っ暗で狭い場所に立っていました。 すぐ目の前に扉があったので、開いてみたらこの部屋に着いた、というわけなんです」
そう言って、勇者くんが指差したのは俺の家のクローゼット。
あんま服持ってないから今冠婚葬祭用のスーツしか入ってないけど。
俺は席を立ち、クローゼットを開くが、中は何の変哲もない普通の賃貸備え付けクローゼットだ。
「ほんとにこの中から出てきたの?」
「はい」
まあ確かに、四人の姉妹兄弟がクローゼットの中から異世界のなんちゃら王国へ行って冒険するみたいな超有名なファンタジー小説があるっちゃあるけど……。
「もしかしたら、俺の家のクローゼットと勇者くんが攻略中のダンジョンにあるセーブポイントが、何かの偶然でうっかり繋がっちゃったのかもね」
勇者くんはハッとしたような顔で「あり得ると思います」と答える。
「ダンジョン学の学者の説では、そもそもダンジョンというのはひとの手で作られたものではなく、『空間の綻び現象』という自然災害が起こってできた産物なんだそうです。 時空の壁に穴が空き、そこに世界の漂着物が溜まっていって迷宮のような造りになるのだとか。……あなたもこのあなたの家も、どう見ても僕の住んでいた世界とは異なる世界の文明のものですよね? ダンジョンの空間はとても不安定ですから、どこかに空いた空間の穴同士が繋がる確率もゼロではないのかもしれません」
それって、竜巻が起こったあとに畑が土ごと抉れてるみたいな、そういう天災的な感じでダンジョンが生成されてるってこと? 時空に穴開くとか異世界の災害ヤバ!
そんで俺の家がダンジョン攻略中の勇者くんのセーブポイントで、クローゼットがその出入り口って、ますます夢が混沌としてきたな。
「この部屋が聖なる結界の内部だというのなら、僕はさっき一度死んでしまったんですね」
静かに呟いた勇者くんの声は僅かに震えていた。
……無理もない。
いくら女神の加護とかいう原理のよくわかんない力で死なないからって、自分が殺されて冷静でいられる人間なんかそうはいないよ。
「勇者くんさ、そのダンジョンもう攻略やめちゃいなよ」
「……え?」
俯いていた勇者の碧い目が、切りガラスのグラスに注いだサイダーみたいに揺らめきながらこっちを向く。
「だって、死ぬような目に遭うなんて普通に嫌じゃん。 せっかくこっちの世界に来たんだからさ、そういう危険なことはやめて安全なこの世界で暮らしなよ。 勇者くんは国籍とかはないけど、日本の制度は結構ユルガバだから仕事とかはなんとかなるだろうし、落ち着くまではうちにいたらいいからさ」
勇者くんは、「そんなこと言われるとは思わなかった」といった顔でポカンと俺を見ている。
素直な子だな、顔に全部出てる。
「ね、そうしなよ」
「……でも、ダンジョンを放置するのはやはり危険ですし、課せられた使命はきちんと果たさないと。 やめるやめないは僕の一存で決められるようなことではないので」
「いいじゃん、村のやつらなんか困らせときゃ。 君ひとりを犠牲にして安穏と暮らしてるようなやつらのために、辛い思いすることなんかないよ」
「ありがとうございます。 でも、村には孤児だった僕を育ててくれた恩人もいます。 村長だって、羽佳さんは憤ってくれてるけど悪いひとではないんです。 ただあの時は立場的に誰を選ばなければならなくて、それがたまたま僕だったってだけで。 それに、もし僕が逃げたら他の村人が新たな勇者に選ばれてしまう。 恩人や親切にしてくれたひとが痛い思いをするのはきっともっと辛いから……だから、できるところまでは頑張ろうと思います」
け、健気すぎる……! もっと我が身一番に生きるべきだよ勇者くんは。
「……とりあえずさ、今日は疲れたでしょ? 掛け布団貸したげるから、今は何も考えずにゆっくり休みな?」
勇者としての使命に責任感は持ちつつも、肉体の疲労には抗えないのか勇者くんは大人しく俺に従った。
俺も今日はバタバタしちゃって、なんか疲れたな。
早く風呂入って寝ちゃお。
その日は勇者くんにはソファで寝てもらって、俺も普通に風呂入って歯ァ磨いて普通に寝た。
翌朝には勇者くんも勇者くんの脱いだ鎧も綺麗さっぱり消えていて、一応もう一度クローゼットを確認してみたけど、中はクリーニングから返ってきたスーツをそのままぶらさげてるだけのただの閑散としたクローゼットだった。
やっぱり昨日のは夢だったんだな、変な夢だったなって思って、俺はいつも通り朝食を用意していつも通り過ごした。
スマホでニュースと天気予報チェックして、軽く筋トレして、掃除と洗濯して、一週間ぶりにスーパーに買い出しに出掛けて、昼飯は簡単に済ませて、配信で見たかった映画一本観て。
それで、夕方になったら晩御飯の仕度を始めて。
ところがそんないつもの決まったルーティンは、『ガチャリ』とひとりでにクローゼットが開く音で破られた。
後ろを振り返ると、クローゼットから出てきた勇者くんと目が合う。
お互い何か言うよりも先に、「ギュルゴゴゴゴゴッ」と勇者くんの腹の虫が怪獣みたいに鳴いた。
……夢じゃ……なかったのね……。
これが、以降ダンジョン内にある聖なる結界、もといセーブポイントとなった俺の部屋にやって来る勇者くんと一緒に晩飯を食べるようになった発端の話だ。
【本日のおしながき✕】
とうもろこしご飯
チキンのトマト煮
小松菜のおひたし
わかめの味噌汁
コールスロー
しば漬け
↓
【本日のおしながき改め】
あり合わせのオムライス
サバ缶とわかめと切り干し大根のゴマ酢和え
小松菜のご飯入りポタージュ
キャベツのしば漬け和え
甘夏ヨーグルト
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痛みに身を裂かれる日々の中、偶然出会った天才魔法使い・ラーゴが痛みを魔法で解消してくれた上、解呪を手伝ってくれるという。
だがその条件は「ラーゴと結婚すること」――。
初対面から好意を抱かれる理由は分からないものの、竜騎士の死は竜の死だ。魔法使い・ラーゴの提案に飛びつき、偽りの婚約者となるリウだったが――。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
【BL】正統派イケメンな幼馴染が僕だけに見せる顔が可愛いすぎる!
ひつじのめい
BL
αとΩの同性の両親を持つ相模 楓(さがみ かえで)は母似の容姿の為にΩと思われる事が多々あるが、説明するのが面倒くさいと放置した事でクラスメイトにはΩと認識されていたが楓のバース性はαである。
そんな楓が初恋を拗らせている相手はαの両親を持つ2つ年上の小野寺 翠(おのでら すい)だった。
翠に恋人が出来た時に気持ちも告げずに、接触を一切絶ちながらも、好みのタイプを観察しながら自分磨きに勤しんでいたが、実際は好みのタイプとは正反対の風貌へと自ら進んでいた。
実は翠も幼い頃の女の子の様な可愛い楓に心を惹かれていたのだった。
楓がΩだと信じていた翠は、自分の本当のバース性がβだと気づかれるのを恐れ、楓とは正反対の相手と付き合っていたのだった。
楓がその事を知った時に、翠に対して粘着系の溺愛が始まるとは、この頃の翠は微塵も考えてはいなかった。
※作者の個人的な解釈が含まれています。
※Rシーンがある回はタイトルに☆が付きます。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
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