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第二章 『魔力』が無いと勝手に思い込んでいました
義姉との出会い【ノエル視点】
しおりを挟むはぁ……。
これで何回目のため息でしょうか。
みんな一様に顔に影がさしている。
とても空気が重い。その理由は、帝国騎士団長の息子であるイアン・クリスタ様が一晩にして姿を消したから。
ソファにはイアン様の双子の妹であるイリア様と彼女の母親であるカミラ様が座っている。
イリア様は泣きたいのを我慢しているのか、目が潤んでいます。その横でカミラ様がそっと背中をさすりながら唇を噛みしめています。
きっと、娘の目の前で母親が泣くわけにもいかないと思いぐっと耐えているんでしょう。
それはイリア様が泣きたいのを我慢しているのに気付いているから。
父親であり、帝国騎士団の団長でもあるアーティ様は騎士団部員の指導をしに訓練所に行っています。
こんな時に!?
と、一瞬思いましたがこんな時だからこそなのでしょう。
いざという時に動けなかったら何の為の騎士団なのだろうと思ってしまう。
毎日訓練してはいるが、今日はいつもよりも厳しく指導するらしい。
もちろん、皇帝陛下にはイアン様が行方不明なことを伝えてあります。
ですが、この事件は僕にも関係がありそうでミットライト王国からの使者がお見えになるそうなんです。
多分、僕の義姉であるソフィア姉上に関係があるような気がして今日の朝からそわそわしています。
僕の姉上は大魔術士が両親なのですが、事情があってデメトリアス家の養女となりました。
僕は兄弟が居なかったので、血の繋がりはなくても姉が出来たことがとても嬉しく思っていました。
養女として迎えた時には姉上が高熱をだしていて、挨拶どころでは無くなってしまったのですが、姉が出来ることを楽しみにしていた僕はどんな人が僕の姉上になったのだろうと、好奇心には勝てなくて看病していた侍女の目を盗んでこっそりと会いに行きました。
僕は高熱になったことがありません。ですから辛さもわからなかったのですが、見に行った時に自分の考えが甘かったのを自覚しました。
「どうせ風邪を引いただけだろう」「挨拶もなしに寝込むなんておかしい」とか、そんなことを思っていたんです。
あの時の姉上は誰が見ても喋れる状態じゃなく、顔は血の気が引いていて、呼吸も荒く、今にも死んでしまうんじゃないのかと不安になり、その場で大泣きしてしまいました。その後すぐに侍女が来て宥めてもらいましたが。
それからでしょうか。僕は姉上が出来たことがとても嬉しく思いましたが、それと同じ以上に失いたくないとも思ったんです。
姉上の体調が良くなってからクリスタ家に弟子入りしました。今まで剣や魔法に興味が無かった僕に両親は不思議そうにしていましたが、クリスタ家に弟子入りしたいと告げたら嬉しそうにしていました。
剣の練習は三歳から始めるのが普通なのですが、僕は全く興味が無かった為サボっていました。
両親はそんな僕を心配していたのでしょう。
出て行く時に母上は嬉しそうに涙ぐんでいて、父上は満面の笑みをしていた。
弟子入りしなくても自分の屋敷で練習すればいいのでしょうが、僕は早く剣の腕を上げたかったんです。
姉上を守る為に。
ずっと憧れていた姉弟がやっと出来たんです。失いたくなんてない。
離れていてもたまに通信用の魔導具で話をしたりもしています。
誰が聞いてるかわからないこともあったので念の為に、小さめな結界を周りに張って声が漏れないようにしています。
この間、珍しく父上から連絡があり、どうしたんだろうと思っていると姉上が『やらかした』らしい。
結界を張る為に、お見えになった国王陛下と王太子殿下の目の前。しかもその場所も最悪で数人が居る場所でいきなり「婚約破棄したい」と言ってきたとか。
それを聞いた僕は父上がおかしくなったのではないかと疑ったが、どうやら違うらしいんです。
おかしくなったのは父上ではなく、姉上の方。
屋敷に居る時はあまり話は出来なかったのですが。
姉上はとても心配性で、優しい人。そして、どこかズレている。ちょっと天然が混じってるような人。
そんな姉上の脳内がお花畑状態なのかと心配して話して見れば、やっぱりという感じです。
お花畑状態なのは正直ショックでしたが、姉上らしいような。そうじゃないような……。
どうしてそういう思い込みになったのかはわかりません。ただ、婚約もしていない相手。しかも王太子殿下に婚約破棄を数人が居る目の前で言うのは無礼に繋がる。
国外追放、最悪の場合は処刑されてもおかしくない。
そのことを心配していたのですが、何事も無かったようでひとまず安心しました。
ですが、何もお咎めなかった事が気になるところ。
王太子殿下(あの方)は一体何をお考えなのか。
確かめようがありませんが、また姉上が無礼を働かないか心配していた矢先に行方不明事件が起こってしまったということです。
この重たい空気の理由です。
早く使者様来てくださいと、何回も心の中で祈っていたら侍女が使者様を連れて来てくれました。
やっとです。
安堵の息を吐いて使者様を見た瞬間、驚きました。
その使者様というのが姉上の魔法の先生であるノア・マーティン様だったのですから。
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