乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

文字の大きさ
50 / 240
第五章 庭師『クラレンス』

敵キャラで、チートだなんて、羨ましい……

しおりを挟む
 アレン殿下がそっと私に耳打ちしてきた。

「いいかい。三人がカース殿の気を引いているうちにあの壁に書かれてる魔法陣を消すんだ。あの魔法陣はこの屋敷に結界を張っている。それと同時に魔力を吸収する力もある」

 それってつまり。

「『無』の属性で魔法陣を書き換えるってことでいいんですよね」
「うん、そうだよ。……出来そう?」

 なんだろう。言い方が試されてる感じに聞こえる。
『お願いしてもいい?』とか『やってくれるね?』とか言ってきてもいいはず。

 なぜ『出来そう?』って聞くのだろう。
 まるで逃げ道を用意しているような言い方。

 なんか、モヤッとする。

 殿下が何を考えてるか知らないけど、私の答えは決まってる。

「私……やります。私にやらせてください」

 それを聞いた殿下は驚いたように目を丸くしたがすぐに元の表情に戻り、頷いた。

「俺とイアン殿でキミを援護する。チャンスは一回。みんな、作戦通りによろしく頼む」

 作戦??

 そっか、この屋敷に来る前に作戦を立てたのか。

 でも予測にしては……、いや考えるのは後だ。今は魔法陣の傍に行くことだけを考えないと。

 キースさんとオリヴァーさんは短剣を取り出す。キースさんの短剣は水が宿り、オリヴァーさんの短剣は雷が宿った。

 二人の背後に水と雷のドラゴンが見えたような……、

 きっと気のせいだ。

 うん、そういうことにしとこう。


 殿下の話によると、オリヴァーさんとキースさん、それにノア先生がカースさんを引き付ける。

 それでもカースさんは隙を見せないだろう。
 彼には死角がないのだから。

 敵キャラでチートなんて……、羨ましい。私もチート設定だったら良かったのに。

 死角が無いならどうするのか。

 ……なんて私がわかるはずがない。

「おりゃぁぁぁっ!!」

 キースさんは水が宿った短剣をカースさんに振り下ろすが、カースさんは防御魔法を使う。キースさんの魔力が防御魔法により弾かれ、強い風が吹き荒れる。

 油断してると飛ばされそう。

 カースさんがキースさんの攻撃を弾いている隙にオリヴァーさんは短剣で出した雷の塊をカースさん目掛けて飛ばす。

 が、カースさんは雷の塊に気付き、黒い魔法でキースさんを捕える。
 雷の塊に向かってキースさんを飛ばした。

 これって……、闇魔法?
 黒いモヤみたいなのがキースさんの体を包んだかと思ったら軽々とキースさんを投げた。

 キースさんは短剣を水から土魔法を宿らせる。
 雷の塊を短剣で斬り、着地した。

「オリヴァー、どうですかぁ?」
「……ああ、間違いない」

 キースさんはオリヴァーさんに聞いたかと思ったら、オリヴァーさんは納得したように頷いた。

 もしかして、さっきのは様子見……?

 オリヴァーさんは雷から火の魔力を短剣に宿した。
 キースさんは風の魔力を短剣に宿らす。

 二人は構える。

 一体、どうする気なのだろう。

 二人は地を力強く蹴り、一瞬にしてカースさんのすぐ横に。

 瞬間移動? いや、違う。

 二人は火と風の魔法を融合して火の威力を上げた。それと同時に火の中級魔法「エクスプロージョン」を足元に発動して、一瞬にしてカースさんに近付いたんだ。

 二人の息がピッタリ合わないとそんな荒業は成功しない。

 でも、カースさんは微動だにしない。予測出来てるんだろう。

 カースさんが攻撃魔法を唱えようとしたらオリヴァーさんがクスリと笑った。

 ーーその瞬間。

 カースさんを風の刃が襲う。
 キースさんとオリヴァーさんは魔法を発動した素振りを見せなかった。

「今です!」

 その声の主はノア先生。

 風の魔法を発動したのはノア先生だ。

 キースさんとオリヴァーさんが囮になって、油断したところをノア先生が軽く攻める。

 そんな子供騙しなことでも、動きを封じればいいのだから単純な行動に出たんだろう。

「ソフィア嬢!!」

 三人の戦いぶりに感心していたら殿下の声に我に返り、自分がやらないといけないことを思い出した。

 そうだった、急がなくちゃ。

「~~っ!?」

 ……あれ、おかしいな。

「ソフィア嬢?」

 足が竦んで、動けない。

 やるって決めたのに。

 どうしよう。……どうしよう!?

 ここまで来て『怖い』という感情が一気に押し寄せてしまった。

「どうしたんですか!? 早くしないと」

 ノア先生は声を張り上げた。
 焦るのも無理はない。

 死角がないチート設定のカースさんの動きを封じ込めるのは最低五秒が限界。

 その間を狙い、私は一気に駆けぬける。
 魔法陣に近付いたらすぐに魔法陣をかけ直す。

 そういう筋書きだったに違いない。

 誤算があるのだとすれば、私だ。

 重要な時に限って、行動出来ないなんて……。

 内心焦っていると両側から手を握られた。
 左には殿下。右にはイアン様。

 ……まるで、主人公ヒロインの立ち位置にいるみたい。
 そんなこと、ありえないのに。

「やるんだろう?」
「俺が守るから、心配すんな」
「……言葉を間違えてないか? 俺たちだろう。イアン殿」
「間違えてませんよ。俺が守るんですから」

 二人って仲が良かったのね。
 パチパチと火花のようなのが飛び散ってるけど、きっと私の妄想がそうしてるだけなんだろう。

 前世では、よくこの二人の同人誌を読んでは妄想を繰り返してたもの。

 ……イケメン二人が目の前でイチャついていて、とても萌える。ものすごく尊い。
 眼福です。

 アレン殿下とイアン様のBL妄想を膨らまして気を紛らわそうとしていたけど、まだ震えが止まらない。

 死ぬかもしれないこんな状況だと無理があったか。

 本当にどうしよう。このままじゃ……。

「~~っ、がはっ」

 この自分の感情にどう向き合えばいいのかわからずにいたら、カースさんはキースさんとオリヴァーさんを風の魔法で吹き飛ばした。

 二人は床に体を強打した。骨が何本か折れたような音も聞こえたけど、二人は痛みに耐えながら立ち上がろうとしていた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

乙女ゲームで婚約破棄をリアルに体験するのはごめんだ

いつき
恋愛
身近に最上の推しがいたら、例え結ばれなくても人参をぶら下げた馬にでもなると言うものですよね? 両親を喪い平民から貴族になると同時に、前世で見た乙女ゲーム系アニメの最推しが義兄になったレンファラン 貴族の子女として家の為に婚姻? 前世の記憶で領の発展に貢献? 推しの役に立ちたいし、アニメ通りの婚約破棄だけは避けたいところだけれど…

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

処理中です...